第32話 ホープ村の昔と今
ホープ村の村長と会ったカイル達。
村についての話を聞くことになった。
「それでは、お話いたしましょう。このホープ村は、昔から医療が進んだ村として有名だったのです。村という小さな規模ではありますが、優秀な医者が大勢おりました。しかし、ある時からその状況が変わってしまったのです。近くにある王国からお金を要求されるようになったのが原因です。」
「お金ですか? どうしてそのようなことになってしまったのですか?」
「診察をする患者さんの症状によって、治療の方法は当然変わってきます。しかし、王国の関係者を診察した際に、納得して頂けなかったのが原因なのかもしれません。もちろん私どもは、その人に合った方法を提示していましたが……」
「でも、そのような状況になってしまっては皆さんの生活も大変なのではありませんか?」
「えぇ。それが理由なのかは分かりませんが、実際に何人かの医者はここを出ていってしまいました。他の国に専属の医師として、雇われた者もいます。でも、私はその医師達を責めようとは思いません。彼らも生活がありますし、必要とされることは、良いことですしね……」
「今、ホープ村の皆さんの生活は大丈夫ですか?」
「厳しい状態であることは、間違いありません。ただ、その中でもまだホープ村の為に頑張ってくれている医師もいます。」
貧しさを感じながらも、前を向いている。
村の人達が持っている強さを感じた。
「ちなみに、村長さんもお医者さんなのですか?」
「だったという言葉の方が正しいかもしれませんね。昔、とある王国で医師として働いておりました。国王を始め、皆がとても良くしてくださいましてね……それからは、恩返しの気持ちで医者を育成することを目的に、このホープ村をつくったのです。」
ここまでの優秀な医師、医療が進んだ村というホープ村の村長のキーワードから、カイルはあることを思い出した。
「そうでしたか。あの村長さんは、ユイさんという方をご存知ですか?」
「ユイはこの村の者ですが。どうしてその名前を?」
村長は、突然の問いかけに驚いた様子だ。
ミーナもユイに会ったことがない為、不思議そうにカイルとタイロンの方を向いている。
ユイと出会った時の様子を説明する。
「僕達が旅をしている時に、イカチ村の近くまで薬草を探しに来ていたユイさんと出会ったんです。」
「そうでしたか。ユイは村のことを一番に思ってくれる良い子なんですよ。薬草を探しに行ったりするのも、医学の発展と村を良くしたいという気持ちからなんです。ただ、頑張りすぎるので少し心配ですがね……」
「今、ホープ村にユイさんは居ますか?」
「それが、今話に出てきた近くの王国から、少し前に呼び出しがありましてね。今は、居ないんです。」
「呼び出しですか?」
「治療の手伝いをすることがあるのです。王国との関係をこれ以上悪化させたくない為に断ることが出来なくて、村の者が順番に担当することを決めたのです。」
ユイが、近くの王国に居ることを知ったカイル達であった。
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