第13話 調理場

 城の中に入るための方法として、調理場のゴミ箱を選んだ2人は、ゴミ捨て場から入ろうとする。


「僕が言い出したから、僕が先に入るね。タイロンは、後から着いてきてよ!」


「分かった。気を付けろよ!」


 カイルが筒のような形をしていて、空洞になっているのものを進んでいく。

 少し待って、タイロンも続く。


「結構狭いんだね……」


「当たり前だろ。そもそも、人が通るための物じゃねぇからな!」


 幸いにも、ゴミは回収された後だったのか、見当たらなかった。

 先に入ったカイルが、到達した。

 タイロンも無事に通り抜けた。

 出た先には、料理人の姿があった。


「あの、見取り図は正確だったんだね。」


「今はそんなこと言っている場合じゃねぇだろ! このままだと、バレてしまうぞ。」


 どうやら、ここは調理場の奥にある仕込み部屋のようだ。

 ここから、抜け出すにしても調理場を通る必要があった。

 部屋から調理場をこっそり覗いてみると、料理人が一人いるのが見えた。


「どうしよう。あの人が、部屋から出ていくのを待った方が良いのかな。それとも、これから料理人が増えてしまう可能性を考えて、僕たちが突入していくべきか。タイロンはどう思う?」


「どちらも、危険であることに違いないだろうな。だが万が一、警備が城の周りを巡回していると、挟まれる恐れがある! 今、俺達から突入していくべきじゃねぇか……」


「そうだね。1人だと、まだ僕たちに気付かない可能性もあるからね。」


 調理場に通じるドアを開ける。

 ドアが錆びており、開けるときしむ音が調理場に響いた。

 料理人は、仕込み部屋のドアを見る。


 見つかってしまった。


「君たちここで、何をしている? ここは、関係者以外立ち入り禁止のはずだぞ……」


「すみません。でも、これには理由があるんです!」


「理由? そんなことを言われた所で、納得出来るわけないだろう! 警備の者を呼ばせてもらう!」


 料理人は、カイル達とは反対の扉に歩き出す。

 今度見つかってしまうと、城を追い出されるだけでは済まない。

 この状況を打破することが出来ないか、考える。

 カイルは一か八かの勝負に出た。


「クックさんという方をご存知ですか? メレンポッドで料理店を経営されているクックさんです!」


「あぁ、知っている。前にここで、一緒に働いていたからな。それより、君たちがなぜその人のことを知っている?」


「僕たちは、クックさんの知り合いなんです! メレンポッドで出会いました。これを見てください!」


 カイルは鞄から手紙を出すと、料理人に渡した。

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