第63話 お菓子と紅茶を添えて

「みんな、片付けはどう?」

「なんとか、今月中には終わりそうですが」

「四人分の荷物があるから、意外と片付かなくて……」

 サクラの作ったお菓子と、紅茶を囲んで楽しい会話が進む

「ゴメンね、みんな。手伝えなくて……」

「ううん、大丈夫。サクラはちゃんと休んでて」

 家にしばらく帰っておらず、片付けをしていないサクラがしょんぼりと話すと、慌ててユリがサクラをぎゅっと抱きしめた


「それより、アルノさん」

 とナツメがニコニコと笑ってサクラとユリを見ていたアルノに声をかけた

「ビックリしました。アルノさんも昔、サクラとミツバと同じ事をしようとしていたんですね」

「まあ、若気の至りね」

 昔を思い出してクスッと微笑み紅茶を一口飲んだアルノのそばに、おかわりを持ってきた家政婦も、昔を思い出してクスリと微笑んだ

「アルノ様も大失敗されて、お父様に怒られていましたね」

「あら、私だけ怒られたみたいじゃない。一緒に怒られたでしょ?」

「そうでしたね。あの時はどうなることかと思いましたよ」

 不機嫌そうに答えるアルノに、またクスッと笑って返事する家政婦。もう一人の家政婦も二人の会話を聞いてクスクスと笑っている。三人の会話をサクラ達が不思議そうに見ていると、ピンポンと家の呼び鈴がリビングに鳴り響いた


「あら、来たかしら?」

 と、嬉しそうにアルノが言うと、サクラが慌てて玄関に向かっていく。ガチャと勢いよく玄関の扉を開けると、緊張した様子で笑うミツバがいた

「おはよう、サクラ。遅れてゴメンね」

「ううん。ちょうど今、お菓子が出来たところだから大丈夫だよ」

 と、ミツバが言うと嬉しさで笑顔がこぼれるサクラ。ミツバを家の中に招き入れて、ナツメ達が待つ食堂へと話をしながら歩いていく

「ホノカにサクラのお菓子貰ってきてって騒がれて大変だったよ」

「そうなんだ、じゃあ後で、ホノカちゃん用に作らなきゃね」

 二人見つめ合いニコッと微笑むと、手を繋ぎパタパタと足音をたてながら食堂に着くと、ナツメ達がミツバの姿を見て

少しぎこちなく笑う

「いらっしゃい、ミツバちゃん」

 同じくアルノのもミツバを見て嬉しそうに笑う。声をかけられたミツバ。慌ててアルノに勢いつけてお辞儀をした

「お邪魔します。アルノさん」

 と、言うと顔を上げると側にいるナツメ達にぎこちなく微笑む


「ゴメンね。みんな来るの遅れちゃって」

「来るの遅いよ。せっかくの出来立てお菓子だったのに……」

 少し冷めてきたたくさんのお菓子に、ツバキがちょっとだけ、しょんぼりとしている

「ゴメンね。早く食べようっか」

 と、家政婦にサクラの隣に空いている椅子へと案内されて座ると、たくさんのお菓子が目の前に盛り付けられて戸惑いつつも一口食べると、とても美味しいそのお菓子に笑顔がほころぶ。そんなミツバを見て、またお菓子を食べはじめたツバキとユリ。またお菓子と紅茶を囲んで楽しい会話が進んでいく。だいぶ会話とお菓子でお腹一杯になってきた頃、アルノが家政婦達を呼んだ。何やら三人でヒソヒソと話している姿に、サクラ達が不思議そうに見ていると、視線を感じたアルノが、クスッと笑うと椅子から立ち上がり、サクラ達みんなに声をかけた

「さて、そろそろかしらね。みんな、私の部屋に来るように」

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