第30話 昔のように、いつまでも

「本を書くにはどうすれば?書いたらどうなるのですか?」

 キッチンから戻ってきてすぐ、ソファーに座りながらミツバが問いかけると、どう説明すれば言いか分からず、ユリとツバキが顔を見合わせている

「本を書くのは簡単なんだけど……」

「一応、本を全部書いたあとは、アルノさんに渡すだけだよ」

「本を書いて渡すだけ?」

「そう。その後の事は、よく知らない」

「まあ、サクラなら知ってるかもだけどね」

 と、キッチンから戻ってきたナツメが三人の会話に入りながらミツバの隣に座って、

「ミツバも知ってたみたいだけど」

 と、ナツメに言われて、また首をかしげて思いだしはじめていると、カチャとリビングの扉の音が聞こえて、ミツバとナツメ達が振り返ると、寝起きなのか少しボーッとした様子のサクラがリビングに入ってきた



「ミツバちゃん、まだいたの?」

 ナツメ達と一緒に、たくさんのお菓子を囲んで座っているミツバを見つけて、少しフラフラとした足取りでミツバの隣に座った

「サクラ、なにか飲む?」

「……うん」

 ユリがサクラの分のお茶を取りにキッチンに向かっていくと、後を追うようにツバキもキッチンに歩いていく。二人の歩く姿を見ていたミツバ。すると、サクラがミツバを見てクスッと笑う

「ミツバちゃん、今日は泊まる?みんなもいるし……」

 と、サクラに聞かれて窓から外を見た。まだお昼過ぎと思っていたら、外は夕暮れになりそうな色をしていた

「あっ……もう帰るよ。ごめんね長居して」

 と言いながら慌てて鞄を探し帰ろうとサクラの隣でバタバタと動き出しすミツバ。その姿を見て、サクラがまた少しうつ向いた

「ううん。いつも、遅くまで一緒にいたから……」

 サクラの言葉に、食べたお菓子の片付けをしていたミツバの手が止まる。見られているのに気づいて微笑むサクラ。すると、ミツバの手がまた慌ただしく帰る準備をはじめださた



「じゃあ、サクラさん、また明日ね」

「うん、また明日……」

 玄関でミツバを見送るサクラ。その後ろ、リビングから少し顔を出して、ナツメ達も二人の様子を伺って見ている。手を振りながら、ゆっくり玄関の扉が閉めていくミツバ。パタンと扉が閉まると、足取り重くゆっくりとリビングに戻ってくると、ナツメの隣、ミツバがいた所に座ると、ふぅ。とため息ついた

「サクラ、大丈夫?アルノさんと何かあったの?」

「ううん、そうじゃないけど……。少しだけ、やっぱり寂しいなって……」

 ユリに少ししょんぼりと答えるサクラを見て、ナツメとツバキが目を合わせてお互い頷くと、突然立ち上がり、窓の方へと歩き出した。ユリとサクラが不思議そうに二人の行動を見ていると、ツバキは窓を開けベランダに出て、ナツメは大きく背伸びをすると振り返りサクラとユリに声をかけた

「さてと、お腹も一杯になったし、サクラも気分転換がてらに本でも書きに行こうか」

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