第21話 私ならきっと

「無理矢理、本を返してもらったけれど……」

 はぁ。と大きめのため息つきながら、一人トボトボと家路につくミツバ。返してもらった本を見つめて、また一つため息をついた

「でも、これどうしたらいいの?」

 と、立ち止まり本をパラパラとページをめくる。サクラの言う通り、白紙のままの本を見て、どうしようかと少し首をかしげた

「本を書くかぁ……夢で見たことと、関係しているのかな?」

 と独り言を言うとパタンと本を閉じて、また家路へと歩きはじめた





「どうして、返しちゃったの!」

 ミツバが帰った後のサクラの家では、ただ一人本を返したことに納得がいかないサクラが叫び続けていた

「いいじゃん。どうせ、サクラが持ってても、あの本書けないでしょ?」

 すぐ隣で騒がしいサクラに気にせず、お菓子を食べ続ける

三人。その様子を見て、サクラのイライラが更に募っていく

「そんなことない!私は……!」

「アルノさんの娘なら、私達の本のことも、どうにかしてくれるの?」

 サクラの叫びに淡々と答えるナツメ。その言葉を聞いて、何かを言おうとしていたサクラが言葉を詰まった

「それは……出来ないけど……」

 少しずつ小さくなっていく声。しょんぼりとうつむいてしまったサクラを見て、ナツメが大きくため息をついた。ペタンと座ったサクラの頭を撫でるユリ。ただ一人騒がしい中、お菓子を食べ続けていたツバキがポツリと呟いた


「そういえば、何の夢見たのか、聞くの忘れちゃったね」

「あっ……そういえば……」

 ツバキの言葉で思い出したのか、少し困ったような表情で考え込みだしたナツメ。まだしょんぼりとして、ユリに頭を撫でられているサクラに問いかけた

「本は何にも書いてなかったんでしょ?」

「う、うん。まだ……。やっぱり、返すんじゃ……」

「書き方が分からないなら、大丈夫じゃないの?それより……」

 そうサクラに返事をしながら、うーんと背伸びをして、立ち上がった。不思議そうに見ている三人の方に振り返ると、

サクラの腕をつかんで、グイっと思いっきり引っ張った

「話疲れてお腹すいたや。夕御飯、作って食べよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る