第20話 二人の思い出の味
落ち着きを取り戻すため、お茶とお菓子を食べるミツバとサクラ達。特に会話もなく、少し緊張感が溢れるリビング。たくさんお菓子が入ったお皿から、一つ取ってミツバに渡した
「ミツバちゃん、このお菓子食べてみて」
たくさんの種類があるお菓子の中から渡された一口サイズのチョコレートを少し不思議に思いつつも、頬張ったミツバ。その様子をサクラだけでなくナツメ達もじーっと見ている
「うん。美味しいよ……」
その言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろすサクラ。ナツメもミツバの言葉を聞いて、同じチョコレートを食べはじめた
「このチョコ、よくサクラと食べてたもんね」
「……そうなの?」
ナツメの言葉に驚き、まだお皿にたくさんあるチョコレートを見ながら味と食べたことあるかと思い出す
「はじめて食べると思うけど……」
と、申し訳なさそうに話すミツバに、サクラも少ししょんぼりとしていると、二人の様子を見ていたツバキが、ミツバの服の袖をクイッと引っ張った
「本当に、私たちだけじゃなくサクラのことも忘れているの?」
「本はいつから持ってたの?」
「夢で何を見たなの?」
「本当は覚えているんでしょ?」
ツバキの質問を皮切りに、ナツメとユリもミツバの顔を見てあれこれと質問をし始めた
「あの……その……」
急にはじまった三人の質問に答えられず、あたふたと困りはじめたミツバ。すると、三人の質問を聞いて突然サクラが立ち上がった
「思い出さなくてもいいの!ミツバちゃんは、何も知らなくても……」
そう叫ぶサクラを見て、ナツメがはぁ。とため息をついた
「でも、サクラが本を持ってても、またミツバに新しい本が来たらどうするの?」
「その時は、その本も私がどうにかするよ」
「それ、アルノさんが許してくれる?」
「それは……」
ナツメの質問に答えられず、うつ向いたサクラ。再び静かになってしまったリビング。ふと、ミツバがテーブルに置かれた本を見て指を指した
「この本は、なに?空を飛んだりするもの、この本があるせい?」
「……うん。そうだよ」
ミツバの問いかけに、サクラが小さく頷いて答える
「私もあの本を使えば空を飛べるの?」
「もちろん。でも……」
本を取り、ミツバを睨むように本をぎゅっと抱きしめたサクラ
「ミツバちゃんには、絶対渡さないから……」
「でも、これは私の本。返して」
サクラに手を向けて、話すミツバ。それに答えるように首を横に振って嫌がるサクラ。二人のやり取りにナツメが呆れながらサクラの方を向いた
「使い方がわからなければ、ただの白紙の本なんだから返せば?」
「でも、分かっちゃったら……」
恐る恐る答えたサクラに、少しムッときたナツメ。立ち上がると、サクラの前に立つと、抱きしめていた本を無理矢理奪い取った
「ナツメちゃん……!」
慌てて取り返そうナツメの服をつかんだサクラ。だが、間に合わず、本はミツバの手に渡った。本を持っているミツバを見て、呆然としているサクラ。その姿を見たナツメが、はぁ。とため息をついた
「サクラはサクラの本があるんだから、ミツバに持たすべきだよ。アルノさんだってそう願っているんだから……」
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