第3話
ーーー帰宅後ーーー
なーんでさっき私はあんなことを言ってしまったんだろう?恋に協力するなんて!私らしくないなー。
(プルルプルル)
家の電話が鳴った。
「林檎ー?出てくれない?ママ、今忙しいの!」
「ええ?無理ー」
「じゃあ拓真ー?出てー?お姉ちゃんがミストのドーナツ買ってあげるから!」
「わかったよ!出ればいいんだろ?はい、もしもし・・・」
「おい、ねーちゃん!なんかおじいさんみたいな人が姉ちゃんに用があるって!」
「ええ?おじいさん?」
「はい、かわりました、林檎ですが・・・」
「ああ、これはこれは、いきなり失礼しました。わたくし、蔵田家本家の執事長をしております、井上と申します。」
蔵田家?
「蔵田さんが一体わたしに何の用でしょうか?」
「ええ、じつはまだ賢士お坊ちゃんには言うなと言われているので、申しあげられません。なので、それも含めてご説明いたします。ですから、明日、放課後に蔵田家にお越しください。車を向かわせますのでご心配はいりません。では明日、お待ちしております。」
「ええ、ちょっと、!」
そう言って、一方的に電話を切られてしまった。蔵田家って、蔵田先輩の家だよね?私に何の用だろう?
ーーーー翌日ーーーーー
今日の放課後に蔵田先輩の家に行くんだよね?怖いし、緊張して吐きそうなんですけど!
「おい、おはよう」
「あ、おはよう!絵美ちゃん。」
「朝から何だよ、顔色悪いぞ?」
「ああ、うん!大丈夫、、、」
あれからというもの、絵美ちゃんは私に話しかけてくれるようになって、少しだけ前よりか学校が楽しい。
それからあっという間に放課後になり、その時がきてしまった。
校門の外を出ると、なにやらみんなが騒いでいる。
「ねね、あの車すごくない?ランボルギーニだよ?」
「それな!まじやばいwwww」
「だれの車だろうね?」
まさかとは思った。悪い予感が的中してしまった。
「あ、武井林檎さんですね?昨日電話を差し上げた井上から話は聞いておいります。どうぞお乗りください。」
「武井林檎って誰?」
「あいつじゃね?」
「ええ、なにあの地味な子!」
うわうわ、もうやめてえええええ!みんなからこんなに見られたら大変だよ!
「ささ、林檎さん、はやくお乗りください」
「え、ええ。失礼します。」
うをををを!ランボルギーニってこんなかんじなのか!すげー。
そしていつの間にか寝てしまった様だ。
「林檎さん!起きてください!林檎さん!」
「え、え、はい!失礼しました」
そう言って車を降りると、って、えええええええええええ!これが蔵田家!予想はしてたけどこんなにも大きい家とは!
「林檎様、驚かれる気持ちも分かりますが、これからこの家に頻繁に来られるでしょうから、いちいち驚かれないでくださいね。」
「あ、あ、はい。え?頻繁にとh」
ようこそお待ちしておりました
そう言って、門をくぐろうとすると、たくさんのメイドさん、執事であろう人たちがこちらに向かってお辞儀をしてきた。
ほんとにこんなことあるのか、、。こういうのは漫画の世界だけだと思った。
「林檎様、お待ちしておりました。昨日お電話を差し上げた、井上でございます。」
そう言って、白髪頭の優しそうなおじいさんが現れた。
「中で、賢士お坊ちゃんがお待ちしております。」
中に案内されたが、そこはとてつもなく大きく、すべてが大きい。みんなも招待したいぐらいだ。
私は応接間に案内された。そこには蔵田先輩がいた。オーラが半端ない。さすが生徒会長とも言える。
「君が武井林檎さんかな?」
「は、はい!武井と申します!」
ふーー、めっちゃイケボやないかい!思わず突っ込んでしまいそうだ。
「まあまあ、そんなにかしこまらないでくれよ。さあ、そこに座って。」
「はい、失礼します!」
そう思って座ろうとしたのだが、、、
(ズルッ)
え?
あっ、そう思ったときにはもう遅い。私は椅子から転げ落ちた。
「イッタ!」
ひいいいいいいいいいい!恥ずかしすぎて、顔から火が出そうだ。
「大丈夫?」
蔵田先輩が手を差し伸べてくれた。ん? なんか手、震えてね?
もしかして、笑ってる?
「ふふふ、笑ってはいけないとは思ったんだけど、ついね。ごめんごめん。」
蔵田先輩って、笑うとこんな顔になるんだ。結構かわいいかも。
って、言っている場合か!
「私達、初対面ですよね?」
「あ、うん。君にとっては初対面だね。」
「初対面で笑うとか結構失礼ですよね。」
「だから、ごめんって!そんなに怒らないでくれよ~。怒ったら、可愛い顔が台無しだないよ?」
「あ、あ、はい・・・」
蔵田先輩は私を椅子に座らせてくれた。なんでこんなにスマートなんだろう?しかも、私に
まで可愛いなんて言ってくれて、女馴れしてんだろうな~なんて私には関係ないけど、、、、。
「あの、先輩、それで、なんで私をこんなところに招待してくださったんですか?」
「うん、まあ、それはね、。君のクラスに原隼人という生徒がいるだろう。 君と結構仲がいいよね?」
「うーん、仲が良いといういうか、原くんの方から私に話しかけてくれてるだけなんですけどね。」
「いやー、でもね、隼人だって、君のことが嫌いだったら、話しかけないとおもうよ。隼人は背の小さい人が好みだと思っていたんだけどなー、違ったみたいだ」
「あ、いや、原くんはそういう目で私を見ていませんよ!」
「ふふ、僕は、隼人は背の小さい人が好みっていうのを言っただけなんだけどな~」
「え?あ、いやー、、、。」
「ふふふ、もしかして君、隼人のこと好きなんじゃないの?」
「いやいや、私は原くんの恋に協力しようとしているだけですよ!」
「うん、それは知ってる。隼人はあんな見た目だ。だから最初はみんな隼人に近づかなかったんだよ。でも、隼人は変わった。自分からみんなに好かれようとして、過ごしたんだ。だから、彼は人1倍、人の心が分かる奴だ。その分、繊細で、傷つきやすい。そんな彼が君に好んで話しかけるということは、君を信頼しているということだろう。そんな君はきっと、優しくて、魅力がつまった人なんだろう。彼と仲良くしてくれて、本当にありがとう。」
「え、いやいや、私はべつになにもしてません。クラスに馴染めていない私に話しかけてくれたのは彼です。それに、優しい人みたいだし、これからも仲良くしたいです。こちらこそお礼を言うべきだと思います。」
「やっぱり、君はやさしいね。そうだ、もう遅いから夕飯はうちで食べていきなよ。井上!林檎ちゃんの分もごはんを用意してくれ。あと、武井さんの家にも電話しとおいてくれ」
「え、そんな!いいですよ!」
「まあまあ、遠慮しないで」
「あ、あと、林檎ちゃんって、、、」
「ああ、ごめんごめん。林檎ちゃんってやっぱりかわいいし、これからも仲良くしたいからさ!」
「さ、ご飯を食べよう!うちは腕のいい料理人がたくさんいるからね!」
「じゃあ、またね。」
「今日はありがとうございました。夕飯までご馳走になっちゃって。」
「そんなのはいいよ~!またいつでも食べにおいでよ。」
「じゃあ、失礼します。」
「あ、待って!その、本当にありがとう。これからさ、学校とかでも会うと思うし、よろしくね。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。おやすみなさい。」
そう言って、この日は蔵田家の運転手さんに家まで送ってもらった。先輩があんなに優しいとは思わなかった。もっと偉そうぶる人かと思ったけどそんなこと無かった。でも、やっぱり、かっこよくて、思わず見とれてしまうかと思った。先輩はオーラが本当にすごいと思う。でも時々、人をよせつけないというか、異様な雰囲気を出す。あれは何なんだろう。踏み込んではいけない気がした。でも知りたくなる。私には関係のないことだけど。もっと関わってみたい、そう思ったのは間違いなかった。改めて、蔵田先輩はすごい人なんだと思った。
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