第10話 ハッピーエンド
ボス前の回復スポットの上に乗ったロフさんの隣にそっと寄り添ってみた。
「ロフさん」
「なんだよ。結局あんたは顔が良ければ誰でもいいんだろ。せっかく俺はずっと一緒にいてくれる奴が見つかったと思ったのに」
「私が魔王を倒さなければそうなると思ってくれたんですよね。でも私は限りある命で全力で貴方を愛します。だから・・・」
「だったら、永遠の命で俺が死ぬまで愛してくれたらいい。魔王討伐はそれからでいいだろ」
「その前に世界が終わっちゃいますよ・・・」
「他の奴が幸せな世界で一瞬幸せになった所で何の意味がある」
「一瞬幸せになれますよ!」
「嫌だ・・・死ぬまで若く美しい姿で俺を愛してくれなきゃ嫌だ!」
「それって何年くらい?」
「3、4000年ちょっと」
「長ぇなぁ・・・」
「おやおや・・・そんなに悠長に話し込んでいていいんですか?」
艶のある低い声がして、魔王謁見の間の大きな扉が開かれた。
「うるさい!黙っていろ!」
が、ロフさんが杖をかざすとバン!と閉められてしまった。
「あんたに魔王は倒させない!」
扉の前に立ったロフさんを中心に茨が城を覆う。
「そんな、ここまで来て・・・」
「1人くらい死ぬと思ったんだよ!本当に人間はしぶとくて嫌になる!」
「アーサー、どうにかして勇者の不老不死を保ったまま魔王を倒す方法はないのかい?」
「あれ?私差し出される前提でお話されてます?セリアさん?」
「しょうがないだろ。エルフなんかたぶらかすからこうなるんだ。責任取りなよ」
「責任・・・」
「無理だな。だいたい、魔王と聖剣は元は同じものだ。魔王が生まれるから聖剣が生まれる。それも嫌で私は聖剣を抜かなかったのだが」
「じゃあロフさんが新しい魔王になれば私と聖剣でずっと繋がれてハッピーってことでさっさと魔王倒しましょうよロフさん」
「それは無理だよ勇者。なぜなら次の魔王は君だから」
「えっ?」
「魔王は永遠の命を終わらせてもらうために勇者を聖剣で呼びよせるんだ。つまりロフ、彼女は魔王を倒しても元の普通の人間には戻らない。安心してこの扉の向こうに進もう」
「そんな話聞いたことないぞ」
「勇者候補にしか聞かされない秘密の話だからね」
「・・・」
茨は取り除かれ私達は魔王を前衛3人後衛1人の圧倒的パワーで蹂躙し、私は勇者の剣を魔王に突き立てた時、元の世界で某エルフショタゲーのコントローラーを握っていた。
「戻ってこれた・・・?役割が終わったからか。いや、それとも夢?」
アーサーさんはあの土壇場で私のために嘘をついてくれたらしい。いや、変な妄想に脳を使ったせいで頭が重い。寝よう。
「やっと思い出したか魔王。大丈夫だ、また忘れてしまっても、俺とあんたは運命の剣でずっと繋がっているからな」
そんな語尾にハートつけた甘い声が聞こえた気がするけど、きっと気のせいだ。
喪女OLの私が異世界で勇者の役目を押し付けられた件について あぐり うい @aguri0602
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