第120話 イライラ
ボクシング場に入った後、新しく部長になった畠山君が自己紹介をし始める。
畠山君が説明をしながら、駆け足飛びの手本を見せ、新入部員たちに交代で駆け足飛びをやらせていた。
陸人と学は飛びなれているせいか、問題なく飛ぶことができていたんだけど、大半がボクシング初心者ばかりで、通常よりも太く、重い縄跳びに、かなり手こずっているようだった。
陸人と学以外にも、ボクシング経験者の『杉崎』がいたんだけど、『俺は経験者で、部活は仕方なく入ってます』と言わんばかりに、ダラダラするだけ。
その片隅で、星野は暇そうにスマホを弄るばかり。
薫は一人で走り回り、マネージャーの仕事を熟していたんだけど、二人の態度にイライラしていると、畠山君が小声で切り出してきた。
「放っておけ」
「でもさ…」
「かまってほしくてああやってるだけだろ? 変に話しかけたら、また同じことを繰り返すぞ」
仕方なく、二人を見て見ぬふりをし続けていると、千歳がボクシング場に入り、薫のもとに直行していた。
千歳は薫に何かを言った後、薫に言い返され、軽く不貞腐れたようにベンチに座り、シューズを履き始める。
『ボクシング? 珍しい…』
そう思っていると、陸人と学が千歳に駆け寄り、ピンと背筋を張った後、学が大声で千歳に切り出しながら、二人は直角にお辞儀をしていた。
「部活でもお世話になります!」
「世話なんかしないよ」
千歳はそう言いながら、頭を下げる二人の背中に手を乗せた後、陸人から縄跳びを奪い、ボクシング場の片隅で縄跳びをし始める。
二人は目を輝かせながら俺の前に来て、興奮したように小声で切り出した。
「背中触られちゃいました!! やべぇ!! マジ感動っす!!」
3人で縄跳びをしている千歳を眺めていたんだけど、千歳は手を止めた後に大きく息を吐き、まっすぐに杉崎のもとへ。
「飛びな」
千歳は縄跳びを差し出しながら言ったんだけど、杉崎は全く聞き入れることもなく、ダラダラするばかりで、星野は知らん顔をしながら、逃げ出すようにボクシング場を後にしていた。
「経験者なんでしょ? できないの?」
「俺は東条ジムに通ってんの! 部活なんて真似事だろ? 付き合ってられるかっつーの」
「あんたみたいなやつがいるなんて、東条も落ちたね」
余裕綽々だった杉崎の表情は、一気に怒りに満ち溢れ、慌てて千歳に駆け寄った。
「千歳、ミット受けてくんね?」
「なんで?」
「なんでって… トレーニングしたいから?」
「畠山君に頼めばいいじゃん」
「そりゃそうなんだけど… 千歳に受けてほしいんだよね」
「やっぱ帰る」
千歳はそう言い切った後、イライラした様子でボクシング場を後にしてしまい、陸人と学は直立不動のまま、千歳を見送っていた。
『すげーイライラしてる。 公式戦直前だし、仕方ないのかな…』
諦めに近い心境のまま、畠山君にミットを受けてもらっていたんだけど、しばらくすると星野がボクシング場に戻り、ひたすらスマホを弄っていた。
『どいつもこいつも… って、去年の部活はこんな感じだったか』
壁に飾られている賞状を眺めながら、小さくため息をつき、畠山君の構えるミットを殴り続けていた。
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