第117話 寂しさ
親父とアパートに戻り、親父に『一緒に来ないか?』と言われたけど、すぐさま拒否したせいか、親父はそれ以上話そうとはしない。
テレビから流れる音だけを聞きながら、千歳にラインをしていた。
【いろいろサンキュ】
メッセージを送った後、大きくため息をつく。
『こんなメッセージじゃ、もう会えないみたいじゃん… つーか、あいつなんでキスしたんだよ…』
再度ため息をつき、気持ちを振り払うように外に出て、駆け足飛びを始めていた。
翌朝、目が覚め、時計を見ると朝の6時。
『やべぇ! 置いてかれた!!』
慌てて飛び起きたんだけど、隣で親父が寝ているだけ。
部屋の中も千歳の殺風景な部屋とは違い、現実に引き戻された気がしていた。
『そっか… 帰ってきたんだっけ…』
寂しさを抱えながら一人でストレッチをし、一人でロードワークに出る。
土手沿いに出ることなく走り終え、アパートの中に入ると、親父が朝食を作っていた。
狭い家の中で筋トレをし、呼吸を整えると親父が切り出してくる。
「すぐに食うか?」
「…いや、まだストレッチ残ってるから」
親父は何も言わずにキッチンに行き、朝食を食べ始めた横でストレッチをしていた。
昼過ぎにジムへ行き、トレーニングをしていたんだけど、千歳の姿はない。
「今日って、千歳、来ました?」
吉野さんに切り出すと、吉野さんは笑顔で答えてくれた。
「来たよ。 朝からトレーニングして、午後からバイトだって。 働き者だよねぇ」
吉野さんの答えにがっかりと肩を落とし、寂しさを振り払うようにトレーニングを続けていた。
新学期が始まっても、朝4時に起きることができず。
トレーニングを終えた後、普段よりも遅い時間に登校してしまうせいか、千歳の姿を見ることができないまま、学校についていた。
教室に入り、自分の席に着くなり、同じクラスでボクシング部の佐藤が切り出してくる。
「部活再開できるって、谷垣さんが言ってたらしいよ。 放課後、予定のない奴は掃除するようにって言ってたらしい」
返事をした放課後、部員のみんなとボクシング場の掃除をしていたんだけど、話題の中心が千歳のことばかり。
部員の一部はカズさんと千歳のスパーを見ていたから、話題に上がるのも納得いくんだけど…
千歳の話を聞くたびに、嬉しいような、寂しいような、ムカつくような…
複雑な気持ちになっていた。
複雑な気持ちを振り払うように、薫に切り出す。
「今日の掃除って、千歳に声かけた?」
「かけてないよ。 なんで?」
「…来てないからさ」
「声かけなかっただけなんだから、千歳ちゃんに怒っちゃだめだよ? 千歳ちゃんは何も知らないんだからね!」
『会いたいだけなんだけどなぁ…』
薫から念を押すように言われ、諦めに近い心境のまま掃除を終え、家路についていた。
学校を終えた後、にぎやかで活気あふれるジムに行ったんだけど、千歳の姿はなく、凌とミット打ちをしていた。
英雄さんの怒鳴り声を聞きながらミット打ちをし終えると、英雄さんが切り出してきた。
「動きにキレがないけど疲れか?」
「いえ、大丈夫です」
「奏介もトレーニングの日を減らした方がいいな… ちーみたいに週4にするか?」
「週4になったんですか?」
「ああ。 あいつも学校が始まったら、朝だけで16キロだろ? 休憩挟んでるけど、オーバーワーク気味だし、試合前に怪我したら元も子もないだろ」
「そっか… あ、俺は大丈夫です。 中田ジム好きなんで、毎日来たいんですよ」
「そうか? 無理するなよ?」
英雄さんは嬉しそうに笑いながらそう言い、智也君のもとへ駆け出していた。
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