第18話 相談
「カズ兄、ちょっちいい?」
学校を終え、帰宅した途端、千歳が切り出してきた。
不思議に思いながらリビングに行くと、親父と母親、そして千歳の3人は床に座り、真剣な様子で顔を合わせている。
千歳の隣に座ると、千歳がいきなり切り出してきた。
「今日、学校で進路相談があったんだけど、カズ兄はなんで大学行った後に専門行ったの?」
「甘いものが好きだから」
「高校ってヨシ兄と同じとこだよね? ボクシング部だった?」
「いや、ボクシング部自体なかったよ。 俺が卒業した翌年に出来たらしい」
「ぶっちゃけ、高校なんてどこでもいいと思わない?」
「だめだ! スポーツ推薦で私立に行け」
千歳の言葉に、親父が割って入る。
『そういう事?』
軽く呆れながら親父の説教を聞き流していた。
けど、親父は断固として「スポーツ推薦で私立に行け」と言い張り、千歳は「家から近いところがいい」と言い張る。
『本人の好きにさせてやれよ…』
そう思いながら軽く呆れていると、母さんが切り出してきた。
「家から近いところって、おじいちゃん家? それともここ?」
「そこも問題なんだよね… おじいちゃんの家からだと、カズ兄とヨシ兄の出身校になるし、ここだと土手の先にある私立の進学校になるし…」
「どっちに行きたいの?」
「進学校」
「ダメだ!」
親父の一言で千歳はため息をつき、うんざりした表情を浮かべている。
完全に呆れていると、親父と千歳は口論を始める始末。
「高校くらい好きにさせてよ!!」
千歳の怒鳴り声が響いた途端、親父は顔を赤くしながらこめかみをピクピクさせ、千歳に怒鳴りつけた。
「スポーツに力を入れてる学校じゃないとだめだ!」
「じゃあこうすればよくね? 私立落ちたら、俺と同じ学校にしろよ。 あの進学校、かなりレベル高いし、ちょっとやそっとじゃ受かんないだろ? 落ちたら諦めて、俺らと同じ学校にするのはどうだ?」
千歳は小さくため息をついた後「わかった」と言い、2階にある自室に駆け上がる。
親父は納得がいかない様子で腕を組んでいた。
「まず受かんないから後輩になるよ」とだけ言い、自室に向かうと、部屋の前には大きな段ボールが3箱も置かれていた。
『まさか?』
段ボールを少しだけ開けると、中には有名店のチョコや手紙、明らかに手作りのチョコが大量に詰められている。
『今日ってバレンタインだったんだ… どう考えても処理しきれねぇだろ…』
かなりうんざりしながら部屋に入り、カバンから携帯を取り出すと、メールを受信していた。
メールを開くと、そこには大学卒業と同時に付き合い始めた『めぐみ』からのメッセージが。
【バレンタインに会わないってどういう事? ちゃんと説明してくれる?】
『うぜぇ…』
大きくため息をつき、テーブルの上に置いてあったウィスキーボトルに手を伸ばした。
めぐみとはもう1年近くになるんだけど、とにかく話が合わない。
ボクシングの話も興味が無くて聞こうとしないし、スウィーツの話だって「ダイエット中だから」って拒絶。
海外ドラマも見ようとはしなければ、洋楽だって聞こうともしない。
某アイドルの追っかけに全財産だけではなく、すべての精力をつぎ込んでいるようで、俺と付き合ったもの『好きなアイドルになんとなく似てるから』。
唯一、一緒に見に行ったのが映画だったんだけど、そのアイドルが出ている映画だけ。
しかも、見終わった後に「これからは一人で見るわ。 やっぱ本物の後に偽物見ると萎える」と言い切り、一人で苛立ったように歩き始める始末。
アクセサリー感覚で付き合い始めたのに、『似てるから』という理由で手放そうとはせず、会うと「つまんない。 暇。 退屈」とネガティブな事ばかり。
そんな事を言われてまで、側に居ようとは思わないから、何度も別れ話をしてるんだけど、それを受け入れることはなく、メールで説教を続け、誰にも相談できないままでいた。
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