第16話 最悪

思い切って書かれた住所に行った後、電車に揺られ、小さな希望が芽生えるのを感じていた。


何度か乗り換えをしていると、辺りはどんどん暗くなり、電車の中は混雑してくる。


あと数駅で自宅最寄り駅に着きそうになった時、電車のドアが開き、男2人と女が電車に乗り込んできた。


『姉ちゃん…』


手摺に捕まったまま、思わず固まってしまうと、姉ちゃんは一人が視線を逸らした瞬間、横の男と唇を重ねる。


『彼氏?』


そう思っていると、今度はさっき唇を重ねた男がそっぽを向いた隙に、もう一人の男と唇を重ねる。


まるで、ゲームを楽しむかのように、楽しそうに代わる代わる男と唇を重ねる元姉を見ると、どんどん嫌悪感が増し、吐き気すら覚えてくる。



自宅最寄り駅に着いた際、電車を降りる直前に、元姉にわざと体当たりをしたんだけど、男二人は見て見ぬふり。


元姉は俺の顔を見て固まり、言葉をかけてくることもなく、黙ったまま電車を降りていた。



『最悪。 ってか、見て見ぬ振りをしたってことは、彼氏じゃない? 普通なら、食って掛かるよな?』


そんな風に思いながら自宅に向かっていたんだけど、元姉の行動を思い出すたびに嫌悪感が膨らんでいた。



翌日。


朝から部活があり、卓球部のいる体育館へ行くと、1つ上の『畠山省吾』が話しかけてきた。


「菊沢ってなんで卓球部にしたの?」


「動きがボクシングに似てるから」


「ジム通ってたりする?」


「ううん。 高校になったら広瀬ジムに通うよ」


「広瀬かぁ… 俺、須藤ジムに通ってるんだけど、紹介しようか?」


「いいよ。 高校になったら、広瀬に行くって決めてるから」


はっきりとそう言い切り、普段テレビで見ているボクシングの動きを意識しながら、同級生の薫を相手に、卓球をし続けていた。



中2になり、畠山君が部長になると同時に、数人の後輩が入ったんだけど、数か月たつと、『星野京香』と言う女が入部していた。



何も気にせず、薫相手に卓球をし続けていたんだけど、とある日の部活後。


着替えた後に更衣室を出ると、星野が歩み寄り、俺の前に立ちはだかり、切り出してきた。


「菊沢君、私と付き合って!」


「は? なんで?」


「好きだから」


「無理」


そう言い切った後、星野の横を通り過ぎようとしたんだけど、星野は俺の腕をつかみ「無理な理由を言いなさいよ!」と、上から目線で切り出してきた。


「興味ない」


はっきりとそう言い切った後、腕を振り払ったんだけど、星野はしつこいくらいに言い寄ってくる。


「無理だっつってんの!」


はっきりとそう言い切った後に走り出し、玄関に向かっていた。


帰り道が同じ方向の4人で自宅に向かっていると、1年卓球部の『原田』が切り出してきた。


「星野、マジやばくて、誰かのものをすぐに欲しがって、本当にパクったりしてるんだよ。 この前も、同じクラスの奴がボールペン盗まれてて、本人は『たまたま同じものが家にあった』って言ってたんだけど、絶対に嘘なんだよね。 隣のクラスの奴が、小学校の時から好きだったって聞いて、そいつに告ったって話もあるし」


「たまたま同じやつを好きになったってじゃなくて?」


「それが違うんだって。 小学校の時から、女の泣き顔を見て、喜んでたらしいよ。 超いじめっ子だったって話」


「うわ… 最低だな…」


完全に呆れかえりながら、原田と薫、畠山君の4人で歩いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る