第16話 墓地ダンジョンに佇む館
2人はモンスターを倒しながら移動をして、館の裏の北西側の墓を調べてみたが、これと言って手掛かりはなかった。
「何もなさそうだよ?」
凛華は適当に触ったり押したりして調べたが、何も起こらないので早々に何もないと決めつけて瑞希が調べているのを見守っていた。
(う~ん、きっと何かあるはず…。このお墓は他のところにあったお墓に比べて大きいし、何か嫌な感じがするし…)
瑞希は何かあるという直感を頼りに隅々まで確認をしていると、お墓の下の土のところに違和感を覚えた。なんとなくだが、他のところに比べて土の色が明るく、まるで掘り返したかのような柔らかさがあるのだ。
瑞希は気になって掘り返してみると、そこには壺があった。瑞希は骨壺かもしれないと思い、掘り返したらダメだったかもしれないと思ったが、中身は空っぽだったので鑑定をかけてみると、
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『夫人の骨壺』
婦人の遺骨が入っていた壺。魔石を入れると鍵の片割れが出て来る。
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このような鑑定結果が出てきた。瑞希は凛華にそれを伝える前に壺へと魔石を入れた。凛華も瑞希が何かを始めたと思い、その動向を見つめていると壺に魔石を入れ始めたので何が始まるのかと近づくと、ちょうど瑞希が魔石を計300個ほど移したところで壺が光りを放ち、割れた。
「わっ!」
「大丈夫!? 壺に魔石を入れ始めたから何しているのかと思ったけど…、手、怪我してない?」
「う、うん、大丈夫。それよりも見て、これ」
瑞希は割れた壺でけがをしていないことを伝えると、手に握っていた半分となった鍵の先端を見せた。
「それは?」
「さっきの壺は『夫人の骨壺』っていうアイテムで、中に魔石を入れたらこの半分の鍵が出てきたの。魔石を入れたらとしか書いていなかったけど、300個も要求されるとは思わなかった」
瑞希がそう告げると凛華は腕を組んで考えると、
「でもさ、この階層に来るまでにモンスターを相当量倒すことが求められているじゃない? だから、この量だっていうのは頷けない?」
「なるほど…、そう考えると納得いくかもしれない…」
瑞希は凛華の説が当たっているような気がしてその意見に同意した。それから2人は同じようにもう一方のお墓を調べると、『主人の骨壺』というアイテムが掘り出され、そちらには500個の魔石が要求されたが、先程と同じように今まで討伐してきたモンスターの数が相当量いたので、問題なくもう半分の鍵を手に入れることができた。
「これで揃ったね」
「うん」
瑞希はそう答えると鍵を両方取り出すと、不思議なことに引き寄せられるように鍵の半分同士が引きあい、1つの鍵が出来上がった。
「おおぉ…」
瑞希が感嘆の声を漏らすと、凛華も面白いものを見たという表情をしたが、これで館の中に入れると思い、一度休んでから館の門を開けようと提案した。
2人は個人空間でしっかりと休むと、門を開けて中へと入ろうとした。
「お邪魔しま~す…」
瑞希が鍵を開けて門から敷地の中へと入ると、凛華は何者かの気配を察知して慌てて声を上げた。
「…!? 瑞希!」
咄嗟のことで班の出来なかった瑞希だが、凛華によって突き飛ばされたおかげで跳んできたナイフが彼女に刺さることはなかった。
「何者!?」
凛華が瑞希の前に立って館の上からナイフを飛ばしてきた者に声をかけると、意外なことに返事が返ってきた。
「…コノ館ノ…、執事ヲ…、務メテオリマス、カーボン、ト申シマス…」
現れたのは今まで見たスケルトンとは異なる真っ黒なスケルトンだった。凛華は起き上がると彼の正体を鑑定してみると、かなりのやり手だということが分かった。
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種族:ブラッドスケルトン
個体名:カーボン
状態:隷属
Lv.20
Rank.1
体力 143
魔力 140
気力 138
物理攻撃力 139
物理防御力 145
魔法攻撃力 141
魔法防御力 151
器用さ 143
素早さ 146
運 50
〈スキル〉
〈ブラッドウェポン〉Lv.1 〈剣〉Lv.4 〈拳術〉Lv.3 〈血液操作〉Lv.5 〈土魔法〉Lv.3 〈闇魔法〉Lv.3 〈鑑定〉Lv.2 〈消音〉Lv.3 〈投擲〉Lv.3 〈掃除〉Lv.4 〈料理〉Lv.4 〈礼儀作法〉Lv.4 〈教導〉Lv.4
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「かなり強い…っ! 気を付けて…! それに状態が隷属ってあるから何者かが彼の裏にいるかもしれない!」
瑞希は凛華に鑑定の結果を素早く伝えたが、その間にカーボンが攻撃を仕掛けてくることはなかった。凛華は瑞希の情報を基にどう攻略をすべきかと作戦を練るが、今の彼女たちと同レベルにもかかわらず、ステータスにはかなりの開きがあるので力押しでは攻略ができないということしかわからなかった。
ちなみに今の彼女たちのステータスは以下のとおりである
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名前:黛 瑞希
性別:女
年齢:15歳
状態:良好
Lv.20
Runk.1
体力 116/116
魔力 111/113
気力 77/77
物理攻撃力 63
魔法攻撃力 89
物理防御力 63
魔法防御力 82
器用さ 62
素早さ 69
幸運 78
ギフト:『思い出』
スキル
〈武術〉Lv.4 〈逃げ足〉Lv.1 〈根性〉Lv.1 〈剣術〉Lv.3 〈予測〉Lv.3 〈地図作成〉Lv.6 〈鑑定〉Lv.6 〈魔力操作〉Lv.4 〈魔力譲渡〉Lv.2 〈魔力支配〉Lv.1 〈気力操作〉Lv.2 〈気力譲渡〉Lv.1 〈気力支配〉Lv.1 〈無属性魔法〉Lv.6 〈偽装〉Lv.2 〈料理〉Lv.1 〈農業〉Lv.1
ユニークスキル
〈個人空間〉
称号
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名前:武藤 凛華
年齢:15歳
性別:女
状態:良好
Lv.20
Runk.1
体力 122/122
魔力 69/69
気力 103/103
物理攻撃力 99
魔法攻撃力 56
物理防御力 77
魔法防御力 70
器用さ 66
素早さ 85
幸運 92
ギフト『侍』
スキル
〈刀〉Lv.4 〈歩法〉Lv.3 〈集中〉Lv.3 〈気配察知〉Lv.5 〈見切り〉Lv.1 〈光魔法〉Lv.6 〈隠密〉Lv.2 〈魔力操作〉Lv.3 〈気力操作〉Lv.2
称号
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あれから探索を進めていたのでまたレベルが上がっているが、それでもカーボンのステータスと比較すると、見劣りするところがあった。
「…作戦は瑞希が考えて」
「………え?」
「私じゃいい考えは思い浮かばない。瑞希の方が頭も良いし、戦況をよく見られると思うの」
「で、でも、私じゃ…」
「大丈夫、瑞希ならできる」
「………」
「ふふ、それじゃあ、私があいつの動きを引き出してくるから頼んだぞ、親友」
凛華はウィンクをしながらそう言い残すと刀を構えて、カーボンと対峙した。
「あ…」
瑞希は今までは凛華が作戦を考えてくれて、瑞希がそれを読み取って動きを合わせていたが、今回は自分が主体となって作戦を練って凛華と共に攻略をするということなので少々勝手も異なるということで緊張し委縮してしまった。
(で、でも、私がやらなきゃ私も…、それに凛ちゃんも…)
瑞希は恐怖心が心の奥底から這い出てこようとしてくるのを必死に抑えて、親友から任された自身の役割を果たそうと必死に彼らの動きを追った。
「オヤ、モウ作戦会議ハ終ワッタノデ?」
カーボンはゆったりとそう尋ねてきた。
「ええ。あなたのおかげでね」
「ソレハ、結構。執事タル者、幼気ナ少女を嬲ルノハ少々外聞ガヨロシクナイノデ、一思イニ楽二シテ差シ上ゲマス」
カーボンはそう言うと、ナイフを取り出すと凛華に数本投げてきた。凛華はそれを構えていた刀で撃ち落とすが、その間にカーボンお姿を見失ったかと思うと、背後から心臓目掛けて一突きされた。
「!? くっ…!」
凛華は寸でのところで気が付き、刀でナイフを打ち払おうとしたが、カーボンの力が凛華の想定よりも強く弾き返しきることができずにその突きを肩に喰らってしまった。
「オヤ、コノ速度二ツイテコラレルノデスネ」
カーボンは感嘆したように言うが、その様子にまるで隙は無かった。
「……ヒール」
凛華はカーボンに何も言い返すことはせずに、相手の動きを読み切ろうと集中した。
「フフッ」
カーボンはそう笑いかけると、再び姿を消し、凛華に向かって高速の突きを繰り出し続けた。凛華も接近をされれば気が付くことができ、レベルは低いが見切りスキルの補助があるので、攻撃の出どころが分かり、後手に回ってしまうもののその突きを防御し続けることができた。
(私は長く持たないかも…! 瑞希、早くこいつの弱点を暴いて…!)
凛華はそう願いながら攻撃を防ぎ続けて、瑞希に希望を託していた。
(速すぎる…!)
瑞希の感想はそれが最初だった。瑞希の目には2人の動きがギリギリ追えているという状況でしかなかった。これは素早さの問題というよりも動体視力の問題だった。常日頃からスポーツに慣れ親しんでいた凛華と違って瑞希は、凛華の家で剣道や柔道、空手などの動きは教わっては来たものの、運動神経がそこまで良いわけでもなければ、積極的にそう言ったことに取り組んできたわけではなかったからだ。
何とか2人の動きについて行って弱点を暴こうとしているが、今行われている戦闘が単純な行動でしかなく、そこから弱点を見出すのは困難だった。
(でも、それでも…、きっと、どこかに攻略の糸口があるはず…!)
瑞希は懸命に2人の動きを追ってカーボンの癖や弱点がないか看破しようと試みていた。すると、カーボンの動きに決まった攻撃の規則性と回避の際に違和感があることに気が付いた。
(もしかして…)
瑞希はそれを確かめようと、凛華とカーボンの打ち合いに攻撃を割り込んだ。
「マナアロー!」
瑞希の放った半透明な魔法の矢は真っすぐに、カーボンの片目に突き刺さった。
「グオオォォ…、小娘ェ…ッ、貴様ァ…!」
カーボンは怒りの籠った声を上げて瑞希を睨みつけた。
「瑞希!」
凛華はそれに気が付くと瑞希とカーボンの間に割り込み攻撃を続けた。
「どうして動きが読めたの!?」
凛華は瑞希に問いかけ続けながら光の矢や、球を繰り出してカーボンを牽制していた。
「真っすぐだからだよ」
瑞希はそう答えると、回避を続けているカーボンに再び魔力の矢を放った。
「カーボンの動きは全部直線で構成されているの。だから、加速と急停止で構成された動きが早く見えるけど、その直線の軌道上に攻撃を仕掛ければ回避は間に合わないよ」
「了解!」
瑞希は観察をしていて時々闇魔法を使って姿を隠しているものの、出現のタイミングや攻撃のタイミングを見ていれば、直線状にしかいないことが明白だったのだ。さらに、彼女が目を狙ったのは偶然でもなければ、確実性を狙ったものだった。
「狙うときは目を狙うようにもして! どうしてかはわからないけど、右目の骨のところに罅もあるし、右側からの攻撃にだけは反応が遅いの!」
「…なるほど」
凛華はそう言われてみれば、左側から攻撃を仕掛けたときと右側から攻撃を仕掛けたときでは回避の大きさ、防御の仕方に違いがあることに気が付いた。
(確かに言われてみればそういう違いもあるか…!)
凛華はカーボンの攻撃が怒りによって増してきているものの、搦め手を使ってくることもなく、真っすぐな攻撃しかないという指摘を受け、その軌道に刀を置くことでうまく防御をしていた。
そして、軌道が読めるようになってからは凛華の方からも攻撃を仕掛けたり、カウンターを狙う余裕ができたので速度には追い付けなくても、読み合いで拮抗した状態まで持ち込めた。
さらに、瑞希は今まで戦略を練る方に意識を割いていたので攻撃を仕掛けることなく観察をしていただけだったが、攻勢を仕掛ける今となっては観察をし続ける必要がなくなったので瑞希も積極的に魔法による攻撃をカーボンに仕掛けた。
カーボンは声高に自身の弱点を暴かれたにもかかわらず攻撃の仕方や動きを変えてくるということはなかった。彼の戦闘は熟練というか、上手いのだ。そのため、自身の弱点がバレたからと言ってペースを乱すことなく、できることを堅実にこなしているのだ。
闇魔法で攻撃の瞬間をかく乱する、初動を闇魔法で隠す、緩急をつけて素早い攻撃をより際立たせる、彼は持っている手札の全てを使いこなしているのだ。
「ホホ、マサカ、コレホドヤリマストハ…! カクナル上ハ…」
カーボンはそう呟くと、両手を上げて今まで使ってこなかった魔法を使用してきた。
「コレハ、私ガ生前得意トシテイタ魔法デス。コレヲ突破サレテハ、モウ打テル手ハナイデショウ…! 硬化…ッ!」
彼はそう言うと、土魔法の〈硬化〉を使用してきた。すると、彼の体に地中から黒い砂が吸い寄せられていったかと思うと、彼の黒かった身体が、光沢を帯びて黒光りしてきた。
「コレハ、私が唯一使用シテキタ硬化を独自二改良ヲ加エ、強化シテキタモノデス」
彼はそう言うと凛華に肉薄してナイフではなく、その拳で凛華に殴りかかってきた。
「くっ…重い…っ!」
凛華は今までのナイフと同じように対処をしようとしたが、あまりの重さで弾き飛ばされてしまった。
「凛ちゃん!」
「大丈夫…! それよりも、気を付けて…! あの黒いの、見掛け倒しじゃないよ。相当一撃が重くなってる」
「そうみたいだね…、でも、その分動きも遅くなってさっきよりは回避もしやすいから受け流したりするんじゃなくて、回避を優先しよう」
凛華1人に前衛を任せるのでは厳しくなってきたということで、ここからは瑞希も前衛に出た。
そして、近距離で無属性魔法を繰り出し、隙を見ては凛華と息を合わせて拳や脚で攻撃を繰り出したが、カーボンに効いている様子はなかった。
凛華も光魔法で時折攻撃を仕掛けるが、メインは刀による斬撃だった。凛華の刀の特性を活かして物理防御力無視の攻撃を繰り出すのだが、硬質化したしたところはどうやらその判定に含まれないのかダメージが通っている様子はなかった。
2人はこのままではジリ貧だと思い、何か打てる手はないかと戦闘の中で攻略の糸口を見出そうと懸命に動き続けた。
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