第14話 墓地ダンジョンに挑みます

 それから2人は時間の進まないこの空間で話し合いを続け、方針を決めると瑞希の部屋のベッドで眠りについた。



「それじゃあ、昨夜決めた通りこのダンジョンをどうにかしようか」



「うん!」



 昨夜話し合った結果、少なくとも魔石だけであればダンジョンを攻略すれば何とかなるかもしれないという目途がついたのだ。魔石(小)はどうやら今までのダンジョンで手に入れたモンスターから手に入れた魔石がそうだったようで、唯一違うのはレッサーオーガから取れた魔石だけが魔石(中)だった。



 そのため、今いるこの墓地ダンジョンのモンスターたちを倒し続けていれば自然と集まるのではないかという結論が出たのだ。また、土についてももしかしたら何とかなるかもしれないし、ならないかもしれないと瑞希は思い、凛華に可能性はあるが確かではないから試してみてどうだったか伝えるということになった。



「あ、そういえば時間について何も設定変えてなかった」


「あ~、そういえばそうだったね」



 凛華は同意するとともにスマホで時間を確かめると、まだ時刻は深夜の0時を少し過ぎた頃だった。どのくらいの時間寝ていたのか2人はわからないが、疲れが飛ぶまで眠っていたことは確かなので長時間休んでいても外では全く時間が経過していなかったことが分かった。



 そのため、これでは内部に留まりすぎると外との時間のずれを感じることになると思い、次中に入ったときには時間を進める設定を忘れないようにしようということになった。



「それじゃあ、魔石を集めるためにも探索の続きをしようか」


「うん、でも、とりあえず今のステータスも確認しておこうか。もしかしたら何かスキルを新しく覚えているかもしれないし」



――――――――――

名前:黛 瑞希

性別:女

年齢:15歳

状態:良好


Lv.10 


Runk.1


体力  75/75

魔力  65/69

気力  40/40

物理攻撃力  36

魔法攻撃力  52

物理防御力  38

魔法防御力  46

器用さ 38

素早さ 39

幸運  78


ギフト:『思い出』 


スキル

〈武術〉Lv.3 〈逃げ足〉Lv.1 〈根性〉Lv.1 〈剣術〉Lv.3 〈予測〉Lv.2 〈地図作成〉Lv.3 〈鑑定〉Lv.5 〈魔力操作〉Lv.2 〈魔力譲渡〉Lv.2 〈魔力支配〉Lv.1 〈気力操作〉Lv.1 〈気力譲渡〉Lv.1 〈気力支配〉Lv.1 〈無属性魔法〉Lv.2 〈偽装〉Lv.1 〈料理〉Lv.1 〈農業〉Lv.1


ユニークスキル

〈個人空間〉

称号


――――――――――


――――――――――

名前:武藤 凛華

年齢:15歳

性別:女

状態:良好


Lv.10 


Runk.1


体力  77/77

魔力  41/41

気力  60/60

物理攻撃力 53

魔法攻撃力 30

物理防御力 44

魔法防御力 40

器用さ 32

素早さ 44

幸運 92


ギフト『侍』


スキル

〈刀〉Lv.4 〈歩法〉Lv.3 〈集中〉Lv.3 〈気配察知〉Lv.1 〈見切り〉Lv.1 〈光魔法〉Lv.3 〈隠密〉Lv.2 〈魔力操作〉Lv.1 〈気力操作〉Lv.2


称号


――――――――――



「あれ、ユニークスキルになってる…」


「本当だ。多分スキルレベルがない瑞希だけのスキルになったからじゃないかな? ギフト以外にも特別なスキルがあるって噂もあるから多分それだと思う」


「へえ~、そうなんだ…」



 瑞希は今まで得たスキルよりも稀少なものを手に入れたということから驚いていたが、このままスキルを手に入れて行けばまた稀少なものをどんどんと手に入れていくことになるのだろうと感じていた。



「でも、目新しい新しいスキルはないかな?」


「うん、そうだね。あ、でも、新しい魔法は使えるようになっているみたいだよ」



〈無属性魔法〉…無属性魔法を使用できる Lv.1…マナボール

  …マナシールド

Lv.2…マナアロー

  …シールド


〈光魔法〉…光属性魔法を使用できる Lv.1…ライトボール

…ヒール

   Lv.2…ライトアロー

  …キュア

Lv.3…ライトナイフ

  …リカバー



シールドはマナシールドの物理攻撃版でスキルレベルに応じた割合の威力を軽減する効果のある壁を生成するものである。キュアは毒状態を回復する魔法で、リカバーは麻痺状態を回復する魔法である。これらの状態異常回復魔法は、上位の猛毒や強麻痺状態は解除することはできない。



「う~ん、ナイフとアローならアローの方が使いやすいかな」



 凛華は試し打ちということで両方を生成して発動させてみたのだが、アローは一直線上に飛んでいく射程の長い攻撃スキルで、ナイフはボールとアローの中間程度の射程である。また、ナイフは一度であれば軌道を変えられるようになっているので、今までよりもテクニカルな攻撃が繰り出すことができるようになったのだ。



「そっか。でも、軌道を変えられるだけでもやれることは違うと思うよ?」


「うんまぁ、確かにそうだけど…」



 凛華は確かに事前に情報を集めて、戦略を練って効率的に戦うということも少しはするが、基本的には感情の赴くままに真っ向勝負を挑む方が好きなのだ。負けたくないから事前に情報を集めているだけであって、そこまで戦いながら頭を使うことをしたくはないのだ。



「ゾンビとかスケルトン相手に軌道を変えられても意味がないからね」



 今までこのダンジョンで戦っていたモンスターのほとんど、加えて言うならレベルがもっと高いモンスターでなければそもそもそこまで知能の高いモンスターというのは報告されていないので、凛華としてはテクニカルな攻撃をするよりも高火力で一気に殲滅ができた方がいいと思っているのだ。



「凛ちゃんは魔法よりも近接主体だからそれでいいかもしれないね」



 瑞希も凛華にそう言った技術や工夫を求める必要はないと思い、そのようなことを口にした。


それから2人はモンスターを探しながら1階層の地図を完成させて、ダンジョンを攻略させるためのなぞ解きを始めるのだった。



「と、まぁ意気込んだけど、やっぱり怪しいのはここだね」


「うん、そうだね」




 2人が向かった先は中央付近の湖のほとりにある石碑だった。そこには読むことができない文字で何かが書かれており、周囲にその文字を解読するヒントがあるかもしれないと思い、探索を続けたが特にヒントはなかった。



「え~、これなんて書いてあるの?」


「わからないよ…。見たこともない文字だし、読むのに何かスキルが必要なのかな?」


「さぁ…、でも特定のスキルを持った人じゃないと攻略できないダンジョンなんてないと思うんだよね」


「そうだよね…」




 2人はそれが何かわからないまま時間だけが過ぎていくと、湖の対岸からモンスターがやってくるのが見えた。



「瑞希、敵影確認!」



 凛華の指摘によって石碑の周りに何かないか探していた瑞希も慌てて顔を上げて、対岸の確認をした。


――――――――――


狼男


Lv.15


体力  70

魔力  55

気力  55

物理攻撃力 61

魔法攻撃力 40

物理防御力 59

魔法防御力 35

器用さ 60

素早さ 60

幸運 20



スキル


〈爪〉Lv.3 〈噛みつき〉Lv.3 〈威嚇〉Lv.1 〈闇魔法〉Lv.1


――――――――――



「モンスターの正体は狼男で私たちより格上だよ!」


「了解、それなら瑞希は後ろから援護よろしく!」


「わかった、とりあえず打ち合うなら爪に気をつけてね。その後で噛みつきも来るかもしれないし、動きに注目してね」



 瑞希の指摘を受けて凛華は頷いて此方へと走り寄ってくる狼男を凛華は迎え撃った。



「ウオオォォォォォン!」



 狼男は遠吠えと共に一気に距離を詰め、凛華にその長く鋭い爪で斬りかかってきた。



 キンッ



 凛華は刀でその爪を受け止めると、刀と爪は激しく甲高い音をあたりに響かせた。



「マナボール!」


 瑞希は凛華の背後から半透明な魔力の塊を放ち、狼男目掛けて放ったが、マナボールの速さでは狼男の敏捷さには敵わず、あっさりと回避されてしまった。



「早いっ!」


「瑞希、落ち着いて!」



 凛華の叱責を受けて瑞希は冷静に狼男の動きを観察して爪と刀で撃ち合っているときの回避の癖や規則性がないかを探した。




「ここだ! マナアロー!」



 瑞希はボールよりも速度のでるアローを選択して狼男に向けて放った。



「キャウンッ!?」


 狼男は凛華と打ち合っていたところ、凛華の動きに合わせて狼男が斜め後ろに下がって勢いよく振りかぶろうとしたところを狙われて、片目を貫かれてしまったのだ。


「瑞希ナイス!」



 凛華はそんな狼男の隙を逃すことなく、怯んで仰け反ったところで首を刎ねた。



「よく狼男の動きがわかったね」


「うん、最初は何とかして魔法を当てようとしたけど動きが速くてアローでもギリギリかなって思ったの。だから〈予測〉の力も借りて観察していたら、最大でも5回までしか打ち合いをしていないなって気がついたの。だからそのタイミングを探して、仕切り直すときは必ず後方に下がる癖があるってわかったから、そこを突いたの」


「なるほどね。いや~、目で追えても体がギリギリでしか追い付かないしどうしようかなって思ってたんだよね」



 凛華は刀で狼男の爪を弾き返したり、鍔迫り合いをしていたりしていたが、必ず後手に回っていたのだ。速度に反応するのが精いっぱいで、こちらから攻撃を仕掛けられていなかったのだ。唯一の救いは目の前にいる凛華だけを狙ってくれたことで、これが瑞希を狙う素振りを見せられていたら庇いきれたかわからないというところだった。



「そういえば、ドロップ品にこんなのがあったんだけど何だと思う?」



 凛華は先程回収していたドロップ品を瑞希に見せた。



「ちょっと待ってね」



 瑞希は手渡された魔石とは異なる赤い石に鑑定をかけた。



———————————


『狼男の捧げ石』


第1階層における攻略の証


———————————



「これだよ! これをあの石碑に持っていけば次の階層に行けるかもしれないよ!」



 瑞希は1階層における攻略方法が分からなかったところで、ようやく見つけた手掛かりに興奮してそう叫んだ。


「え、本当!? じゃあ、早速行ってみよう!」



 凛華は瑞希の勢いに驚いたが、それが今まで手掛かりが全くなかった攻略の手がかりだったということで、彼女も興奮を隠しきれなかった。



 2人は急いで石碑のところへ行くと、赤い石が光り出し石碑に吸い込まれていった。そして、石碑が、ゴゴゴッという音を立てて下がっていくと下へと続く階段が現れた。



「やったね」


「うん!」


「それじゃあ、2回層へと行っちゃいますか!」



 結局石碑に何と書かれていたかはわからないままではあったが、無事に1階層を攻略して2階層へと瑞希と凛華は進出して行った。





 その頃、ダンジョンへ向かったと知らないダンジョン委員会久喜支部では、支部長を務める久喜が瑞希と凛華の監視員に怒りの声を上げていた。



「どういうことだ!? 何故小娘2人を見失った!」


「先程から説明をしているように、高校を見張っていた仲間からの報告では表から出たという報告はなく、しばらく監視を続けていたところ裏から他の教師に連れられて出て来る女子生徒が2人いたという証言が後から得られ、追ってみたところ対象の武藤凛華の家に2人が帰宅をしたことまでは報告があります。以降は、2名が外出することはなく母親が買い物に出かけたことが報告されていますが、以降は一度も門が開いた形跡がありません」



「それなら何故家にいないと言っているのだ!」



 久喜は地元の地方新聞社や影響力のある新聞社に突発型ダンジョンを攻略した女子高生が2人いて、彼女たちは委員会に所属することも協力をすることもなく活動を続けるつもりだとリークしていた。



 それだけで世間からは注目を浴び、賛否両論ある多くの言葉に驚され、精神的に疲労するだろうと思っていた。そこで委員会から再び接触を計れば懐柔はしやすいと思っていたのだが、その対象を見失ってはどうすることもできないのだ。



 武藤凛華の家に両名がいるとわかるや否や記者に情報をリークして無理な取材を記者にやらせ、サクラとして子飼いの探索者も記者のふりをするように仕向けたが一向に出て来る様子はなく、近隣から警察へ通報をされて騒動となり、家の中にいる本人たちにも話をするように仕向けたのだが、彼女たちは置手紙を残して失踪していたのだ。



 置手紙には、


『悪意のある者たちによって、平穏な生活を乱されているので落ち着くまで身を隠します。探さないでください。』


 と、書かれており、本物の記者や警察もいたことでこのことを隠蔽することもできず、悪意のある者たちとは誰か、女子高生2人をここまで追い込んだのは誰だ、とさらなる注目を集めてしまっていた。



「私たちは貴方に言われたように見張っていただけです。そのせいでこんなことに巻き込まれているんです」



「俺が悪いっていうのか!」



「………」



「ちっ、もういい。お前らは降格だ。さっさと帰れ」



「なっ!」


「俺に口答えする気か? 仕事ができなかったんだからペナルティがあるのは当然だろう? それともお前らも委員会を抜けてモグリでやっていくか? 俺たちはお前たちの武器の携帯もダンジョンの探索も認めねえぞ?」


「くっ……」


「わかったら出ていけ」



 久喜はそう言うとこの騒動をどう収束させるか、自分に最も損害が出ないかを考え始めた。久喜に命令を受けていた探索者たちは、逆らうことはできず、また脱退をしたところで他の支部にも圧力をかけてくるだろう久喜に怒りを覚えながらも部屋をあとにした。



「こうなったらこっちが世間より早く見つけ出して無理矢理同意させちまった方が早いか。どうせ小娘2人なら手練れを4,5人差し向ければ捕まえることもできるだろう。それらならまずは、索敵能力の高い奴らを使うか。あいつらみたいな2流の斥候じゃ役に立たねぇし、あいつらに連絡をするか」



 久喜はそう呟くと、どこかに電話をかけて自分の利益のために人を利用しようとまた悪だくみを続けているのだった。

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