本作の主人公の特技───
それはメスやシリコンを使わず化粧道具やウィッグを用いて、男性の見た目を完全に女性化できるというもの。
とある風俗経営組織に見初められた主人公は夜の世界において、その才能を遺憾なく発揮する。彼の手にかかれば男性は女性性をまとい、夜の雌雄同花として愛でられる存在へと“変身”する。“変身”コーディネーターである彼の手元には金が転がりこむ。すべては順風満帆のように思えた。
しかし人間の欲に限りはなく、彼の手がける“変身”にさらなる欲望(ニーズ)が集まり出す。欲はさらなる欲を生み、法を超えてなお膨張する。罪を犯した償いは罰ではなく、この資本主義社会では“金”という免罪符で解決する。
膨らみ続ける欲望の果てに、いつしか彼の手がける“変身”は夜の世界を超え、裏の世界へと足を踏み入れる。
そこで彼を待っていたのは金いらずの、罪も罰もない花の咲き誇る“楽園”だった───
人の欲望に限りはなく、そしてこの世界はそれを是認して回っています。作中に出てくる“とある場所”は、世界を震撼させたあの島を想起させます。ソリッドな文体と、右肩上がりに増していく物語の緊張感に読む手が止まりません。
物語の結末、彼の特技であった“変身”は何を変えてしまい、何を変えられなかったのか?
フィクションでありながら、現実に越境してきて重い問いを読者に残す作品です。
あなたは“変身”してみたいですか?
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主人公には変わった才能があった。素質のある男を「女」へ変身させることができたののだ。
ある日男性向き風俗店から派遣された男娼を「女性化」させたことにより、彼の運命が狂いだしていく。
少年愛や、性的搾取や裏社会など容赦ない場面を淡々とした文章で書くことによって妙な美しさや儚さがあり、ニーチェの深淵を覗くものは〜と同じように、我々読者も計り知れない闇と穢されていく美しい少年たちの末路を叩き込まれていきます。
そして倒錯した世界を踏み込んだ主人公の結末は……。
なかなかWEB小説では見かけないこの傑作、どうかお楽しみいただきたい作品です。
男性を女性へと「変身」させる特殊な才能を持つ主人公。風俗店で出会った少年を見事に女性へと変貌させたことをきっかけに暴力団関係者に見出され、彼は風俗業界で「コーディネーター」として働くことになります。
主人公の「変身」に対する美学と現実のおぞましさが交錯する様が、倫理的な曖昧さを見事に描き出します。社会の闇と狂った権力が織りなす世界観は、読者の心に不穏な余韻を残します。
純粋な「変身」の喜びを追い求めていた主人公が罪の意識に苛まれていく様子は、ノワールサスペンスの重要な要素である「堕落」のテーマを体現しています。
淡々とした語りの中に垣間見える主人公の内面の葛藤が、読者を物語の奥深くへと引き込みます。徐々に闇の世界へと引きずり込まれていく過程が冷徹かつ詩的に描かれ、「変身」という行為に対する主人公の美意識が商品として消費される、現実との乖離が生み出す緊張感は秀逸です。
アイデンティティや変容、社会の闇といったテーマを掘り下げた本作。読者は主人公とともに、美意識や善悪の境界線が曖昧になっていく世界を旅することになります。この旅の終着点で待ち受けるものが何なのか、読者自身が想像せざるを得ない余白が、この物語の最大の魅力かも知れません。
手術ではなく、化粧などの表面的な施術をすることで男性を女性にすることに最高の美しさを感じる、という特殊性癖を持った男が主人公なのですが、このワードで「おっ」となった方には是非読んでいただきたいです。1話あたりの量が程良いので手軽に読めると思います。
特殊性癖と性犯罪がテーマであり、内容もなかなか黒かったりするのですが、直接的な濡れ場のシーンは殆どないため、R18ちょっと抵抗ある私でも普通に読めました。
メインの登場人物は少ないながら、主人公やその相棒の葛藤や、段々と逃れられなくなりながら罪を重ねていく感情の描写が非常に秀逸な作品です。