鸚鵡

第1話「鳥になった日」

私は、鳥だ

自由な鳥

何にも縛られない

私は、鳥だ、なんでも出来る

自由だから


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僕は鳥だ

空を飛べる

飛ぶための翼がある

いや、あった

あったはずだ、たぶん

足音が聞こえる

話し声も

でも、だんだん聞こえなくなってきた

世界が暗くなっていく、頭の中は真っ白

空を見上げる、青い

翼は…

あった

ボロボロだ、それに真っ赤

また足音と話し声

何を言っているのか分からないけど、きっと僕のことだ、僕は鳥、自由に飛べる、自由になれる、誰にだってそんな権利はあるんだから、きっと僕も次こそは

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俺は人間

空は飛べない

ルールに縛られて、何も出来ない

俺は、空を飛びたい

自由に飛んで、景色を楽しんで

だから、鳥になりたい

空を飛べるようになりたいな

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私は今飛んでいる

空をだ

景色を見たくて飛んでいるけど

どうやらここは山らしい

景色があまり変わらない

だけど、飛んでいるだけでも楽しい

鳥になる前の私は随分空というものに憧れていたようだ、でなければ、こんなにも嬉しく思えないはずだ。

だが何故だろう

私は以前同じような体験をしたような…

まぁそんなことはどうでもいい

今はただ、楽しもう

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やばい

やらかした

仕事の大切な資料を無くしてしまった

マヂでやばい

どうしよう

この仕事、続けれなくなるかも…

俺は、どうすれば

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僕は鳥だ

鳥なのに

僕は今

木の板の上にいる

近くで火をつけた音がした

嫌だ

なんで僕がこんな

分かってる、今僕を調理しようとしてるのは人間だ

人間に殺されて、人間に食べられて

そんなの嫌だ、僕が人間だったら

こんな思いしなくてもいいのかな

ああ

人間になりたい

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ははは

そんな乾いた笑い声を出して、下を見る

今、俺は俺の住んでいるマンションの屋上にいる

寒い、今は冬だ

手が震える

これから自分が死ぬという恐怖からなのか、寒さからなのか、分からない

けど

怖いけど、もう辞める気はない

遺言でも残すべきだろうか

…やっぱりいいや

最期に

来世は鳥になりたいです

そうやって心の中で唱えて

僕は夜空に飛び込んだ

最初で最後の浮遊感だった

______________________________

「僕」は、鳥だ

空を飛べる


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鸚鵡 @soramame3

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