第66話 蓋

 遂に月面に探査機が到達した。最初に探査に出たメンバーは投資家にして冒険家?の乱導竜こと俺と、俺の手下ペットで優秀な宇宙パイロットのネコと、そのネコに何故だか惚れ込んだ謎の人形である魔神アスタロトの三名だった。

 赤道付近の巨大クレータに着陸して、探査を始めた俺たちは石造りの門の前に今到着した。門の前三メートルの位置に俺たちを迎える若しくは追い払うためか女が一人立っていた。綺麗な女性だった、戦支度を整え鈍く輝く鎧に身を包むややきつめの眼をした女性が立っていた。


 何だ?月に美しい女人が、物語のかぐや姫か何かか。


「貴女は、何者だ?」

「問おう、汝が我のご主人マスターか?」

「はあ?、何を言っている。俺たちはあそこに見える青い星、地球から来た探検者だ。特に貴女あんたに関わるつもりはない。だが、俺の探す物を知っているなら話は別だが・・・・・・」


 美しい女性は、首をかしげると。つまらなそうに呟いた。


「そう、まだ現れないのね。こうしていても時間の無駄、ナベリウス! 出て来てこの者たちをやっておしまい!」

「ウッ、ウォーン!」


 女性の前の地面に、鋼と血潮のこびり付いた蓋が現れるとゆっくりと蓋が持ち上がり妖しく、禍々しい瘴気と共に大きな犬が出現した。

 犬は首が三つありそれぞれが凶暴な唸りと敵意の視線を俺たちに投げかけていた。しばしば神話の中に現れる地獄の番犬のようだな。


「どうせ、話し合いにもなるまい。こんな時はどうする、ネコ?」

「ふにゃ、とんでもないタイミングで話を振らないで欲しいにゃ。ここは、日本人らしく平和的な解決を祈って話し合いの糸口を探るのが当たり前の日本人じゃないかにゃ。間違っても先制攻撃とかしちゃいけないにゃ!

 それに、軽々しくペットに闘いを強要するのも動物虐待にゃ。ご主人を犯罪者にはしたくにゃいから考えを改めるにゃ! 」

「ふっ、解ってるようじゃないか、ネコ!三千万霊子レイス戦闘形体バトルスタイル! さあ、殺られる前にやれよ、時間と資源と金は有限だからな。無駄にするなよ時間と自分の命を、さっさとやれ!」


 黒き猫は、金色の金貨に包まれ見る間に巨大化していく。その目は諦めたのか、野生を取り戻したのか赤き輝きとともに地獄の番犬ナベリウスをものともせずに睨みつける。

 金色の鎧を纏った、巨大な猫が瞬間音も立てずに跳躍して、炎をまき散らすナベリウスに迫る。

 灼熱の炎が金色の鎧を焦がす、溶かす、灰にする光景が脳裏に浮かぶ。


 しかし、いつの間にか地獄の番犬の首が三つとも音も無く月面に転がる。番犬の首を失った胴体がどす黒い血をまき散らしながら横倒しに倒れ、そして動かなくなった。


「さて、番犬は役に立たなかったようだな。次からは犬なんか止めて、猫を飼った方がいいんじゃないか? なんなら、いい猫を紹介しようか?」

「そう、そうなの? 信じられないけど、あなたがそうなの・・・・・・ あなたには進むべき道があるようね。いらっしゃい」


 鎧を纏った綺麗な女性は、俺たちを振り返りもせず門へ歩き始めた。

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