第65話 着陸

 赤道上に、巨大なクレーターが見える。まあ一番大きなものではないが比較的大きな方だろう。もちろん、地球上ではありえないサイズの代物だ。月には大気の防護壁バリアが無いので地球なら燃え尽きてしまうような隕石でも激突するためだと言われている。 まあ、実際に試したことは無いので知らんけど。

 

「よし、ネコ船長ゆっくり降下してくれ。探査船はデリケートだからな、優しく羽毛で撫でるように静かに降りろよ」

「わかってるにゃ、気が散るから邪魔をしないでにゃ」

「ふっ、ネコ様に賢し気な指図をするな、人間風情が」


 おいおい、磁器製ビスクドールに怒られちゃったよ。それにしてもふざけて演技してるにしては本気度が伝わって来るし、まあ男と女の仲は傍から見ていても判らんよな。


「探査船着地にゃ、これでA級ライセンスは頂きにゃ」

「まあ、この世界で宇宙船の操縦が出来るのはネコと俺しかいないからなあ。しかし、本当にもしかしたら超級猫スーペリアルキャットかも知れないなあ、お前は?」

「そんな当たり前のこと言っても褒めた内に入らないにゃ」

「そのとおりうちのネコ様が凄いのは当たり前です、何せわらわが認めた者なのだから。ああ、何を言わせるのですか!」


 自分で勝手に言っておきながら、魔人でも恋愛脳の奴はああなんだろうか、教えて魔人の精神科医さん。

 冗談はさておき、探検と行くか。アポロ計画の最初に月に降り立ったチームも本当は着陸後何時間か仮眠をとってから探検開始の予定だったが、逸る心を抑えきれずにそのまま探検を始めたらしい。俺たちも時間を浪費するつもりはない、なんせタイムイズマネーを地でいってるからなあ。ここでの滞在に魔力を消費しているため、俺の口座からは刻一刻と霊子レイスが魔力として消費されていく。

 時間差多段階レバレッジとかを駆使しているため、最終的に口座が空になって月で遭難とかになることは無いだろうが、地球の相場の乱高下が文字通りハードランディング激突になることは必至だろう。


- ドバイ取引所 -


 モニターに異常な取引を示す警告が幾つも表示される。

「なんだ、この買いは?あーん?今度は売りか!何処の狂ったAI人工知能取引だよ、どこかで戦争でも始まるのよ。とりあえず様子を見て、売りショートと時間を置いて少しだけ買いロングだ!」

「これは、逃げだせ。ヤバイ!」

「落ち着き給え、どうせどっかでGOX盗難騒ぎか、テザー砲が撃たれたんだろう?しばらく注視は必要だが、慌てる必要はない!」


「ご主人様、前方二百メートルに魔力反応があります。お気を付けください」

「おう、アンドロマリウス。わかった、しかし正体とかはわかる訳ないよな?」

「はい、しかし。ゲートがありますので、何らかの守護者かと思われます」


 たしかに、少し先に建物というか、石で出来た門のようなものだけが見えている。


「迷ったら、行くだけ。脳筋のようにも聞こえるが、最近はやったもん勝ちとか、やるだけやってみるが案外正解の様に思えるからな。どの道、引き返すくらいならここに俺は立っていない。用心して行くぞ!」

「ふう、退路を用意しておくのは知恵者のと言うか、指導者の務めなのに困ったご主人にゃ」

「・・・・・・」


 俺たちが門にあと三メートルまで近づいたとき、門が眩しい程輝き出して思わず目を瞑った。目を開けると門の前に一人の女が立っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る