第61話 積載

 うーん、今日もあまり天気が良くないがいちいち不満を言っていても進歩はしない焦らずに、だが進まねば成らぬときもある。


 ネコさんには古い文献と魔導書とかをあたって、月周辺宙域で役に立ちそうな魔人をリストアップする作業をやってもらっている。その後は、面倒だが下僕一号と交渉して力を分けて貰うか盗むかするのが俺の役割分担だ。


「そうね、岩石魔人のキュルソンとかは月の岩場で重宝しそうね。あとは地獄の門番のナベリウスは番犬として役に立つはずだわ。ああ、そうねサガンは錬金術の助手に欲しい所ね。それから、えーとパイモンがいれば飲み水とかの心配はいらなくなるはずよ。それに忘れちゃダメなのがいたわね、アガレスよ。こいつは是非とも手に入れないと話にならないわね。それから・・・」

「うん、ネコさんとりあえずでいいから。何も全部一遍に連れていく訳にもいかないし。大凡役にたつ魔人はリストアップ出来たみたいだし。これ以上増やすともうどうし様も無い状態になりそうだからさ。

 この辺で、下僕一号に交渉してくるよ。ふう」


 俺は、小一時間ほど下僕一号と交渉という名の試闘を繰り広げなんとかネコさんのリストアップした使い魔である魔人たちの力を借りることに成功した。

 一気に何体もの魔人を打倒したものだから、彼女の心の機微を現したのか青いドレスの表面が本物の嵐のように逆巻く渦を映していたのは本当に初めて見る光景だった。


「ああ、疲れた。戻ったぞ」

「ご主人、いま、絶好調にゃ」


 俺の手下で下僕ペットのネコは、どういう訳かこの間倒した魔人アスタロトに気に入られ今も背中に磁器製人形ビスクドールを乗せている始末だ。

 最初は俺たちの隙を狙って人質に取るとか憑依や呪いの類を仕掛けるつもりかと疑っていたが、どうもそういうつもりでは無いようで単純に気に入ったみたいだった。


「ふむ、なかなか毛ざわりも良いな。我の乗り物として呼吸することを許そうではないか、ははは」


 妙なテンションで、ネコを乗り回す金髪碧眼の人形とか、うちのチームも奇想天外なメンバー構成になってきたものだ。



---

 くっ、女が闇の中を追われているかのように何度も振り返りながら走り抜けていく。


「こんな所で捕まって堪るもんですか。このくらいのピンチはいつだって掻い潜って来た私なんだから!」


 あっ!しまった。

 サーチライトの眩しい光が赤い服を着た女の姿を照らし出す。


「そこまでだ、スカーレット。お前を国家反逆罪で逮捕する。抵抗すれば容赦なく射殺する、罪状などはお前が一番知ってるはずだからいちいち読み上げないがな」


 男の言葉が終わると同時に後ろから現れた男が、スカーレットを武装解除してあっという間に拘束してしまった。


「ああ、竜!」


---

 そうだな、例のものはアガレスの力で上手く貯蔵出来そうだし。よし、順次物資の搬入だ。早速働いて貰うとするか。


「乱導竜の名において命ずる、アガレス、キュルソン我が前に現れよ!」

「はは、ご主人様」

「ほう、これがアタイのご主人様かい」


 ワニに跨った老人の姿をした魔人アガレスと岩石が寄り集まったような魔人キュルソンが俺の前に膝をつく。


「よし、アガレス。こいつを停止させろ。そうしたらキュルソンお前が宇宙船に運び込め」

「わかりました、ご主人様」

「わかったよ、ご主人様よ」


 こうして、宇宙船の出発準備が間もなく整うとしていた。

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