夜を飛び越えることができたら。

ゆいはる。

プロローグ

「夏真っ盛りの外に飛び出して、太陽の光を浴びて背伸びする。気持ち良くなって、そしたら意味もなく笑いが込み上げてくる。そんな経験を、恭介にしてほしい」


紗季子はそう言って、笑った。

どういうことだよ、と俺も笑う。


「そのままの意味だよ。当たり前のことを体験して、当たり前の感情を抱く。それからそんなじぶんをじぶんで可笑しく思う。そしてこれはしあわせなんだ、ということにあなたは気がつくの」



そしたらもう少し、恭介はこの世界が好きになると思う。


夜だって怖くないよ。夜の前にだって、後にだって、



朝があるはずなのだから。

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