梅雨の後の残り雨
梅雨の後の残り雨
三崎伸太郎 07172025
七月の青空が雲に覆われた
憂鬱な七月の光がくるくる回って渚に降りた
うたたねをしていた白い貝殻が目覚めて、白い砂浜に頬づりをする
残り雨が降ってきて
波が重くなってきて
私の頬に一粒の雨
雨のつぶやき
七月の海が空になり
地上のカモメが逆立ちをする
白い貝殻に帆をあげて
カモメの船出
恐る恐る海面から顔を出した私(人間)は、七月の空を見た
暗い海の底から見上げた、憧れの銀色の水面(みずも)
海に哲学はなかった。無限の可能性もなかった。暗くて深く、息苦しい海水が肺を圧迫して、行動や考えを束縛していた
私は、波間から見上げた七月の空に,心臓の音を聞いている
力強く私が私として生きるにふさわしい
自然があり、私に必要な空気が音を立てて体内に入り込んでくる
意を決して波間から這い出て見た
生きられる
暗い海の底から離れて生きられる
七月の空が梅雨の残りの雨を持ち
私に問いかけた
妊婦の羊水に清められる赤子の
肌の温もりに七月の海
私は原始の砂浜にいる
砂浜を這いずりまわった
顔や体は砂まみれだ
緑の木々が揺れている
心も揺れた
カモメは逆立ちをして青い空に浮かんでいる
海の波は転寝(うたたね)をしている
風が吹いて七月の残り雨が頬を打った
砂浜はどこまでも続いていた
立ち上がって砂浜を歩くと、不思議な夢を見た
人間という社会があって
家があって
家族があって
人々は、幸福とは何だと話していた
誰もカモメの船出には気づかず
七月の空ばかりを眺めている
カモメが逆立ちをしているのに、誰も気づかない
私はため息をついて、海に引き返す
嵐よ来い
私、人間は無限の時間に船出する
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