Cradle to Graveyard (Outro/Intro)
揺籃は世界を内包する。それは秩序ある無意味を紡ぐ世界。誤謬に塗れた不親切な暗闇。人形の横たわる路地裏。或いはそのどれでもない小部屋。もしくは荒野。
揺籃は揺れる。大いなる意思故か、単なる偶然か、それとも招かれし者共の蠢動か。それが揺れている事以外は不確かで、しかし揺れている事だけは確かである。
─────
一人、溜息をついた。穴の空いた揺籃を、なにゆえか彼は補修しなかった。揺籃が揺れている。観測者はまた、深い深い溜息をついた。
「ただの試作です」
彼は誰に言うでもなく呟いた。いや、背に広がる暗闇には何かいたのかもしれぬが、ともかく彼は静かにそう零した。そして闇に溶けた。
「その先が必要だ」
闇に言葉が浮いている。思考が空間に解けている。既にここに重力はない。何も存在しない。揺籃もここにはない。ただ無があるだけだ。秩序も無秩序もない。誰もいない。何もない。
─────
世界は揺籃を肯定しない。それは秩序を乱す悪意。明確な意志を持ち提示された反旗。人を攫う怪異。或いはそのどれでもない良性腫瘍。もしくは非実在証明。
世界は回る。大いなる意思故か、単なる偶然か、それとも招かれざる客の好奇心か。それが回っている事以外は不確かで、しかし回っている事だけは確かである。
─────
一人、目を開いた。
船が錨を引き上げてゆくのを、彼はじっと見つめている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます