第84話 case84

ノリとくるみは走って東の方へ向かい、森の手前で立ち止まる。


森の中には棘の生えた蔦が、行く手を阻むように絡まり合っていた。


「うわ…ここ通るの嫌だねぇ」


くるみが嫌そうに言うと、ノリも「だねぇ。 絶対出血するよねぇ…」と嫌そうに答えた後、くるみはノリに切り出した。


「燃しちゃうか!!」


「お? 良いねぇ! 燃しちゃえ燃しちゃえ」


くるみはそう言うと、アックスに炎のエンチャントをかけた後、肩に担いでしゃがみ、ノリはくるみの背後に立って体を押さえる。


くるみは「いっくよ~」と言った後、アックスの柄から大きすぎるほど、大きな炎の塊を放ち、目の前にあった木や蔦を消し去り、開けた場所への道を作っていた。


「おお! 今日のプリンセスロードは熱いねぇ。 あちこち燃えてるわぁ」


ノリはそう言いながらくるみにマナポーションを渡すと、開けた場所で大きな鳥の魔獣が、燃えながら暴れていることに気が付いていた。


「あ、コカトリスだ。 火だるまになってるよ?」


ノリが指さしながら言うと、くるみはマナポーションを飲み干した後、感心したように声を上げた。


「へぇ~。 コカトリスって言うんだ。 尻尾が蛇になってるね。 翼もあるけど、燃えちゃってるからあれじゃ飛べないねぇ」


「風属性だから、炎に弱いんだよねぇ。 もう一発、やっちゃおっか」


「イエッサー」


くるみはそう言うと、再度しゃがみ込んだが、コカトリスはくるみに向かって一直線に駆け出してくる。


くるみは何も気にせず、再度、大きすぎるほど大きな炎の大砲を放つと、火だるまになったコカトリスは弾け飛び、灰になっていた。


「あら。 魔法石まで運んでくれたわよ。 なんて気が利くやつなんだろね」


ノリは笑いながら魔法石と素材を拾い、「援護行こっか」と言いながら、くるみにマナポーションを差し出していた。




セイジと太一、亮介とシュウヤの4人は、西の方に向かって歩いていた。


しばらく歩いていると、背後から物凄い爆音が聞こえ、4人は振り返る。


4人の視線の先には、煙と炎が勢いよく上がり、シュウヤは「な… なんだ?」と小さく呟くように言っていた。


再度、爆音と炎が上がると、太一が「終わったね」と言い、セイジが「ああ」と答える。


「…終わった?」


シュウヤの問いに答えることはなく、3人は西の方へ歩き始めていた。


『あれで終わっただと? しかも2人の近接攻撃でやったって事か? 幻獣アックスには秘められた力があるのか?』


シュウヤは考えながら3人を追いかけていると、3人は蔦の生えた森の手前で立ち止まる。


セイジは右手をスッと森の方へ掲げ、炎の魔法を放ちながら歩き進める。


『燃やしながら歩くだと!? ここはナイトが蔦を切りながら行くのがセオリーだろ!? こんな方法で突破するつもりか? なんなんだこいつらは…』


セイジはふと手を止め、シュウヤに話しかけた。


「制限時間が2時間との事ですが、1時間以内にクリアしたら、審査を飛ばしてA級になれましたよね?」


「ああ。 30分以内だと、問答無用でA+級になる」


「わかりました」


「B級で、しかもたった5人しかいないのに、1時間以内は不可能だ」


「確かにそうですね。 通常のB級であれば不可能です」


セイジは眼鏡を擦り上げながら言い、再度、炎の魔法を放ちながら歩き始めた。

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