もうひとつの結末:第50話 4人のあらたな幸せ

 当初予定していたエンディングです。少し悲し気な話なので、小説はやっぱりハッピーエンドで終わって欲しいという気持ちから差し替えました。

 こちらの方が良いという方はこちらをENDだと思ってもらって良いです。ただ、第51話目『彩衣と彩依 ……子供にだけ見えるちっちゃなお友達』が前提になります。


 50話の途中から話が分岐します。

=====



 彩衣の夢を叶えるため大銀杏に願った未来を探る力。

 彩依への暴力を少しでも自分に向けようと大銀杏に願った心を読む力。


 お互いのことを考えた姉妹の物語。僕の一言が彩衣と夏美(あえ)の……和奏の運命を変えた。みんなにとってこの結末が良かったのかは分からない。でも、ぼくにとって最高の結末となった。



「じゃあ、いくわよ」


 彩衣と彩依、ふたり手を繋いで大銀杏に手をついて念じるように目を瞑る。


「「ありがとう」」


 ふたりの声と共に地面から竜巻のようにイチョウの葉が舞い上がり辺りを包む。長い長い刹那の時間。僕と和奏は後ろからふたりに抱き着いた。


 竜巻が天に昇って行く。風と共に消える彩衣と夏美(あえ)。


 * * *


『『おかえり。君たちは幸せな未来を掴んだんだね』』


 私たちはこのふたりに見覚えがあった。姿を見て突然湧きだしてくる記憶。


「ギコイ!」 / 「ドラン!」 ふたりの声がハモった。


 彩衣と彩依に力を与えた大銀杏に宿るふたりの友達。


『君たちには選択肢があるんだ。外で待つふたりの元に戻って4人の幸せを掴むか、不幸な子供時代からやり直して4人の幸せを掴むか』


 真っ暗な闇に包まれているが明るい場所。私たちに力を与えここまで辿り着かせてくれたギコイとドラン、彩依は2つの選択肢が描く未来が想像できなかった。


「彩依、わたしは和奏と椎弥のふたりに幸せになってもらいたいわ」


 軽く握った拳を胸の前において俯く彩衣。悲しそうな表情に彩依が抱き着いた。


「そうね、わたしはお姉ちゃんと一緒ならそれでもいいわ」


 更に力強く彩衣を抱きしめる彩依。


『ふふふ、君たちは本当に良い子だね。絶対に4人が幸せになるように約束をするよ』



 * * *


 大銀杏の前で彩衣と彩依の帰りをじっと待つ椎弥と和奏。大銀杏が強い風に揺られ多くの葉を雨のように降らせている。


 一瞬の不安が心をよぎった。和奏も感じたのか顔を見合わせて手を握る。徐々に力が強くなる和奏の手。心を返すように僕の握る手も強くなる。


 舞い散る葉が雨のように落下する。涙……まるで大銀杏が涙を流しているように感じた。


 確かに聞こえた。


『私たちはあなたたちと一緒に幸せになりたい。きっとふたりの元に向かうから待っててね』


 彩衣と彩依が帰ってくることはなかった。






(数年後)



 彩衣と彩依、ふたりが消えてから1日たりとも忘れたことはなかった。和奏と共に歩み愛情を深め、彩衣と彩依の4人がいつも一緒にいるような毎日を過ごした。


 そんなある日の出来事。


「和奏、頑張ってね。僕はずっと応援してるからね」

「あなた、任せてちょうだい。あなたと共に歩めてよかった。これからも4人で歩みましょう」



 そして



「「オギャーー、オギャーー」」


 双子が生まれた。 ……耳穴にホクロのある双子の女の子。


 僕と和奏がずっと待ち望んでいた言葉……


「「おかえり、彩衣、彩依」」



=====

(あとがき)

 想いの彩(おもいのいろ)、全てのストーリーを公開しました。IFストーリーは差別化のため描写を極力減らしています。話中に双子が同時に産まれていますが、その辺りは上手く脳内変換してください。


 もしかしたら、本編に出てきた謙介と茜、美陽や若葉たちの『その後』も紡ぎたいとは思っていますが、みなさんの想像にお任せしたいとも思っています。


 この小説に出てきた全ての登場人物は、自分たちなりの幸せを掴んだということは書き添えさせていただきます。

 

 これまで本当にありがとうございました。


 彩羽 心(いろは こころ)

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想いの彩(おもいのいろ) ひより那 @irohas1116

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