【第2話 そうだ!“斎藤”居ないのか?】再会と異邦の少女

 そうだ、“斎藤”居ないのか?だが、伏せた状態より頭をあげる勇気が出ない。


 日が暮れるまで待つしかなさそうだ。。。


 〈ふー、プクプク〉顔半分湖面に浸した状態で溜め息一つ。


 〈タポーン、タポーン〉近くに岩か何かあるのだろう打ち付ける湖面の波音が耳に障る。


 突然〈ふー〉、「やれるもんなら、やりやがれ!」と男はいきなり仰向けにでーんと引っ繰り返る。


 仰向けになった顔の目線の先には、空をバックに岩場の突端にぴょこんと座る少女の眼差しがあった。


 その姿は肩口がぽわんと膨らむ西洋貴婦人のドレスにストライプ柄のチューリップスカートに白いハーフタイツ。


 腰にはちょっとアンマッチな紅い大きな袋をぶら下げ、襷掛けに革の鞄。


 シルクの長い手袋に肩口に乗せた小さな日傘を〈クルクル〉と回している。


 そうまるでメリーポピンズ!


「悪魔め今度はメリーポピンズの姿か、ほんと飽きさせない奴らだぜ」


 だんだんと、あの惨劇の記憶が蘇ってきた!


 〈くっくっく〉と引き笑いの声。


「シキシマさん、さっきからずっと一人で何遊んでるの?」


「なー何故俺の名前を知っている」仰向けから飛び起き、片足曲げて身構える。


 身のこなしは流石、特殊部隊の隊長だ。


 〈くっくっく〉とまた引き笑いの声。


「だって腕にSHIKISIMAって書いてあるんだけど」

「は〜コリャ参ったな〜おじさん〜とでも言うか!」騙されないぞこの悪魔め!

「ね〜敷島さん、向こうにもう一人、おじさんと同じ様に這いつくばって遊んでいるSAITOUっていうおっさん居るんだけど。。。どうする?」


「な〜!そりゃ何処だ!うーんとこの岩の反対側」

「な、なななな〜早く言えはやく」


 “敷島隊長”は身構えて曲げていた足をバネのように伸ばして岩の反対側に跳躍する。

「“斎藤”〜」っと掛け声を引きずったまま、“敷島隊長”は更に空中を飛んでいく。

 見事な反射神経“斎藤隊員”の巴投げが決まった!

 〈ボチャーン!〉暫くして水面に落ちる音がする。


「あいたたた〜この〜”斎藤”お前な〜」と満面の笑みを浮かべて“敷島隊長”が駆け戻ってくる。

 “斎藤隊員”も「隊長〜」と涙声で応える。

「いきなり現れるので投げちゃいましたよ」

「ここは靖国ですか、他の連中は?」


 ふと、“悪魔小娘”が気になり背丈と同じ位の高さの岩を仰ぎ見る。

 その突端で“悪魔小娘”が立って遠くを遠望している。


「おい!“悪魔小娘”お前の狙いは何だ⁈」と、“敷島隊長”が声を荒げる。

「も〜気をつけてコソコソしてたのに大きな音立てるからenemiesが気がついてこちらに向かって来始めたよ!もー嫌になっちゃうわ」

「ハ〜、enemies!はお前だろうが、ならお前は何だ“悪魔小娘”!」

「も〜今は説明は後、えーと味方だから、ね、味方!」

「で〜ちょっと急がないと死んじゃう事になるので、ちょっと協力してよ」


 そうこう話している内に“悪魔小娘”が遠望している方向から殺意ある気を放つ集団が近づいて来ている気配を感じる。


 ここは、自衛隊員!優先すべき危機意識は高い。


「分かった、何をすれば良い?」

「うーんとね、僕は、 エミリア=アルケミーオ。

 色んな造形物を錬金出来る錬金術師さ。

 おっさんたちさ、アレと戦う為に必要な物資を思い浮かべてよ」


「早く!!」


「おっさん達、欲しい武器を思い浮かべなさい」


 エミリアが呟き、蒼光が紅袋を覆う。


 次の瞬間、湖畔に現れたのは――

 ミスリル製の新89式カービン銃。

 反動ゼロ、重量半減、消炎処理は幻想の域。


 さらに斎藤が思念したのは――

 GAU-8/A アヴェンジャー 30mmガトリング砲。

 航空機用殺戮機関砲が異世界に顕現する。

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