4-6

3人はギルドの前にある水江駅にやってきた。ジュンが住んでいた異界では、多くの人々が中心街への交通手段として利用していた駅だが、この異界改変の後は完全に廃れ、今では利用者の姿は皆無だった。




駅の中は暗闇に包まれ、明かりなしでは足元さえ見えないほどだ。ホームに降りるとさらに暗さが増し、奥へと続く道は闇に飲み込まれ、不気味な雰囲気を漂わせている。




「ふむ、ここから先は完全に未調査のエリアだ。この奥に何があるか、正直なところ俺にも見当がつかない」


クルールが慎重に周囲を観察しながら言う。




「だね。今のところは線路に沿って進むしかなさそうだ」


ジュンは線路を指差しながら提案した。




「よし、それなら進んでみよう」




3人はワッフルに乗り、線路沿いに進み始めた。今のところは一本道で、迷う心配はなさそうだ。ただし、どこまでも似たような風景が続き、進んでいる感覚が薄れていく。




クルールは一定の距離を進むごとに目印を置いていた。同じ場所を回っていないか確認するためだが、今のところ目印に戻ることはなく、道は一本道で間違いないようだった。




「ルイーザ、今どれくらい走った?」


ジュンが問いかける。




「さぁ、分からないわ。半日くらいは経ってる気がするけど」




時計もなく、外の光も見えない地下での移動は、時間の感覚を完全に狂わせる。暗闇の中をただ進むだけの状況は、精神をじわじわと蝕んでいく。




「一旦、休もうか。これだけ暗くて何も分からない状態で走り続けてると、頭がおかしくなりそうだ」


ジュンが提案すると、ルイーザも頷いた。




「賛成。休んで状況を整理したいわね」




ワッフルを止め、ルイーザは荷物から薪を取り出して火をつける。温かな光が闇を少しだけ追い払い、3人はその周りに座った。




「いや、本当に長いな。この道、どこまで続いてるんだろう」


ジュンは火を見つめながらつぶやく。




「元の異界なら、とっくに終着駅どころか都市を超えてるくらいの距離だろうね。まさか隣の駅に向かうだけで、こんなに時間がかかるとは思わなかったよ」




「それにしても、本当に舟堀に向かってるのか?」


クルールが不安そうに呟く。




「そんなこと言っても、今は進むしかないでしょ。少しでも休んで、このネガティブな気持ちを追い払わないと」


ルイーザは軽く笑いながら言った。




「……お前たちのその前向きさ、正直羨ましいよ」


クルールは半ば呆れながらも、感心した様子で応じる。




「さて、十分休んだわね。行きましょう、ワッフル!」


ルイーザが立ち上がり、明るい声を上げる。




「ちょっと待て!」


クルールが急に手を挙げて制止した。




「どうしたの?」


ルイーザが振り返ると、クルールは周囲に目を凝らしていた。




「何か音がする。俺たち以外にも何かいるぞ」


緊張した声でそう言うと、クルールは明かりを掲げて暗闇を照らし始めた。




光が奥を捉えた瞬間、3人は息を呑んだ。




「うわっ……」


目の前には巨大な蛇のようなモンスターが、道を塞ぐようにとぐろを巻いていた。その体は異様なほどに大きく、鋭い目がこちらをじっと見据えている。




「どうやら、歓迎の用意はされてたみたいね……」


ルイーザが剣を構えながら、ニヤリと笑った。

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