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急いで宿屋に戻った2人。ジュンはテーブルの上に1枚の地図を広げた。その地図にはいくつもの線が描かれている。


「ジュン、この地図は何?」


「これは鉄道マップ。僕がいた世界で電車っていう乗り物の路線案内図だよ。」


ジュンは高校生時代から道に迷わないようにと財布に入れて持ち歩いていたこの地図が、まさか異世界で役立つとは思ってもみなかった。


「なかなか複雑そうな地図だね。」


「まあ、それだけ多くの人が住んでいた都市だからね。でも、そこは置いといて、ここを見てほしい。」


ジュンは緑色の線の上に書かれた「水江」という文字を指さす。


「ここが僕たちが探検隊を結成した街だね。そして、2つ先にあるのが・・・」


「あっ、『舟堀』って書いてある!」


「そう。この地図によれば、水江の駅と舟堀の駅は地下で繋がっているはずなんだ。」


「ってことは、水江の駅にあったあの暗い場所から舟堀の駅に行ける可能性があるってこと?」


「そう。ただ、これは推測に過ぎない。世界の改変が起きた後、地下がどうなったか詳しい情報はまだ分かってないからね。」


それでも、街の中に入ることさえできればこっちのものだ。舟堀の街はジュンにとって馴染み深い場所。地形も頭に入っているため、迷うことはないだろう。


「なるほどね。でも、確かめてみる価値はありそうね。」


「うん、それが一番の近道だと思う。」


そのためには一度、水江の街に戻る必要がある。ただ、ジュンにはどうしても気になることがあった。


「でもさ、水江に戻っている間に、あの占拠してる奴らが何か仕掛けてくる可能性もあるよね。それに、どうしてリフィリア王国のギルドが動かないんだろう。」


それが一番の謎だった。あの占拠者が厄介な実力者だとしても、リフィリア王国のギルドはもっと強力な戦力を持っているはずだ。狭い街を支配している程度の相手なら、数で押し切ることもできそうなものだが、動きが見られないのはなぜか。もしかすると、人質の安全を最優先にしているために自由に動けないのかもしれない。


「その辺り、クルールなら何か情報を持っているかもね。ギルドについて詳しいし。」


確かに、クルールに話を聞けば状況がもう少し見えてくるかもしれない。


「じゃあ、決まりね!早速水江に戻りましょう。ワッフルを全力で走らせれば、明日の朝には着けると思うわ!」


「・・・うん。でも、安全運転でお願いね。」


ワッフルに乗れば間違いなく早く到着するだろう。しかし、あのスピードにまだ慣れないジュンにとっては少々気が進まない選択肢だった。

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