25話 都立天ノ宮教育学校 1

暗闇にパチリと僕は目を覚ます。昨日早く寝たおかげで起きるのは1番早かった。リビングに行き外を見てみると、太陽が地平線から出てきている途中で綺麗な朝焼けが見えた。

他のみんなを起こさないように静かに朝ごはんを作り、食べる。1人で食べる朝ごはんはけっこう寂しかった。繭も昨日同じことを思ったのだろうか。

食事を終え、仕事の準備をする。それも終えると、まだ誰もいないリビングに

「行ってきます」

と言い残し家を出た。外で吹く風は冷たく僕の体を冷やしていったので、負けないよう僕は走って仕事場へと向かった。


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朝起きると既に雷は仕事のために家を出た後だった。昨日私の見送りをしてくれたのに、私は雷の見送りが出来なかった事に少し後悔する。

他の2人はまだ気持ち良さそうにぐっすり眠っているので、起こさないようにする。

リビングに行き、朝ごはんを用意し、できた朝ごはんを食べた。ちなみに今日のバイトは昨日ほど早い時間じゃないからゆっくりできる。

私がご飯を食べ終わるとほぼ同時に茶眩が起きてきた。

「おはようございます。お兄さんはもう仕事ですか?」

「おはよう。そうみたい、私が起きた時にはいなかった。」

僕も急いで準備して行かなきゃ、と茶眩は私の用意した朝ごはんを食べ始めた。それをすぐ食べ終わり、仕事の準備をし始めたので、私も自分の準備を始める。


準備を終わらせ、家を出る。今の時間は9時くらいなのでお昼前にはバイト先に着ける。そう考えながらゆっくり歩き始めた。


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仕事場に着き、僕はすぐに仕事を始める。もうすぐ冬が来て雪が降ってしまう可能性があるので、それまでに作った作物を収穫するのが今後暫くの仕事となる。

勿論機械なんて無いから全て手作業になるが、多分茶眩や音羽さんも手伝ってくれると思うので、雪が降る前には全て終わらせることが出来るだろう。

…………と思っている自分がいました。予想以上に手作業は辛く、途中から茶眩と音羽さんが合流してくれたものの、今日やろうと思っていた範囲の半分も終わらせることが出来なかった。

「どうする?雷くん。」

「とりあえず出来るだけやるしかないですね。」

と会話を交し、それからは黙々と仕事を続けた。


#

「こんにちは。今日もよろしくお願いします。」

私はバイト先の店に入り、そう声を上げる。

「こんにちは、繭ちゃん。」

「繭さん、こんにちは。」

店長の天使さんと、私に仕事を教えてくれている雫さんにそう返され、私は笑顔で返す。

「繭さん、今日も仕事頑張ろうね。」

と雫に言われ。大きく顔を縦に振り頷く。そのまま2人でキッチンへと向かった。


2時間程度仕事をしたあと、雫さんと一緒に休憩時間となった。目の前のテーブルには、店長が淹れてくれた珈琲が2つ湯気を出して置いてある。私はそれを1口ゴクリと飲む。口の中に広がる苦味は程よいもので、どんな好みの人の口にも合いそうだった。私はブラックで飲んだが、雫さんはミルクとシュガーを1つずつ入れて飲んでいた。それでもたまに苦そうに顔を歪めていたけれど。

休憩時間も終わり、キッチンへ戻る。そしてまた雫さんに仕事を教えてもらう。雫さんは教えるのがとても上手くて私も集中して聞いて、真似ていた。そんな状況は突然終わる。キッチンの扉がバンッと勢いよく開き、

「またきたっす!」

と元気の良さそうな1人の少女(声的に)の声が響いた。

仕事に集中していた私はその出来事に、

「ひっ…」

と肩を跳ねさせるが、他の人は慣れてるかのように何の反応もない。

私は隣にいる雫さんに、その少女が誰か聞くことにした。

「えっと…、あの子は誰?」

「すぐにわかると思うよ。」

意味深に笑いながらそう答える雫さん。その言葉の意図がわからず1度その少女を見てみる、と偶然(?)少女と目が合った。同時にその少女は私に向かって小走りでやってくる、そして手を掴み、

「キミ、新人さんっすよね?お名前は?私は姫月ひめづき まいっす。よろしくっす!」

「えっ…と、私は冬夜とうや まゆ、よろしくね」

高すぎるテンションに押されつつも私は名前を答える。するとまた舞さんからの質問が飛んでくる。

「繭ちゃんって言うんすか。繭ちゃんも都立天ノ宮教育学校の生徒さんっすか?」

フレンドリーな人だなと思いながら、違うよ、と答えようとしたが、その前に引っかかることがあった。その言葉は自然と口から零れてしまった。

「……都立天ノ宮教育学校?」


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