第20話 龍神

 ◇ ◇ ◇


『越国のヤマタノオロチ』


『三輪山の大物主』


『諏訪のミシャグジさま』


『何そのメンツ』


『圧倒的ラスボス感』


 ◇ ◇ ◇


「ヤマタノオロチって、なんか聞いたこと有るわぁ。コレ、何なの?」


 ◇ ◇ ◇


『ワダツミ族が関係する地の代表的な龍蛇神様なのー』


『つまりこのクラスの神様を相手にするわけね……オワタ』


『これは詰んだwww』


『どれも特級の神様ですな』


『ぎゃあああああああああああ』


『これアカン奴やん』


『ですよねwww龍神様ですもんねwww』


『何?ヤバみ?』


『200%祟られる』


『宝は諦めよう。確実に呪殺される』


『はい解散』


 ◇ ◇ ◇


「大丈夫よ。私は選ばれし十六歳の美少女よ。主人公補正かかるから、ヘーキヘーキ」


 ◇ ◇ ◇


『違う!本当の主人公は俺だ。大蛇に巻かれたジュエリンを早速と助け出す』


『それはオレの仕事だろ任せておけ』


『アンタ達はすっこんでな!オロチ退治はアタイの専売特許だよ』


『フッ、ドラゴンファイトか、百年振りだな』


『竜殺童子…かつての俺の通り名だ』


『我が赫焉魔眼の封印を、解き放つ日が来るとは……』


『おい!俺さっき地球に帰って来たとこだぞ。もう戦えってか?』


『おまえら誰だよwww』


『勇者多すぎw』


『この変な人達をジュネキの盾にすればいいよ♡』


『おい』


 ◇ ◇ ◇


「竜を倒すアイテムって何?やっぱり鏡?」


 ◇ ◇ ◇


「倒すとかバチ当たるぞ」


『これはゲームじゃ無いのー!本当に危険なのー』


『龍神様はマジヤバイって、婆ちゃんが言ってた』


『逆鱗に触れてはいけない』


『でも縄文時代からの宝が埋もれてるんだぜ』


『当然リスクは有るよな』


『霊能者や祈祷師とかは同伴?』


 ◇ ◇ ◇


『サルマーロが連れて来るらしいわぁ。あと――あっ!!ダメ、コレはナイショだったわぁ』


 ◇ ◇ ◇


『サルマーロが連れて来るの秘密なの?』


 ◇ ◇ ◇


『そ、そうね。あ、あと赤城山に龍神伝説は他に有る?あの二人が何者なのか手掛かりが欲しいの。まさか入れ墨少女がヤマタノオロチの化身じゃ無いわよね』


 ◇ ◇ ◇


『わかんないぞ』


『頭は一つだった?』


『俺のマタのオロチは鬼頭が一つだが』


『おまいの股のは、愚(おろ)チン』


『有名なのは赤城三姫伝説かな』


 ◇ ◇ ◇


「赤城三姫伝説?」




 赤城三姫伝説。


 その昔、上野国に高野辺大将家成という公家がおりました。

 家成には四人の子供がおり、内訳は若君が一人、姫君が三人だったそうです。

 姫君の名は、長女が淵名姫、次女が赤城姫、三女が伊香保姫と言います。

 若君は成人すると家族から離れ、都へと上りました。


 その後、姫達がまだ幼いうちに、四人の母親が亡くなります。

 そこで家成は、信濃国から後妻を迎えたましたが、この継母は三人の姫を疎ましく思い、殺害を計画します。

 継母は自分の弟である更科次郎をそそのかし、次郎は人を集めて殺害を決行します。


 次郎は、まず淵名姫を利根川の淵に沈めて殺してしまいます。

 次に赤城姫を殺しに行くのですが、赤城姫を預かっていた大室太郎の妻の機転により、赤城姫は赤城山に逃げ込みます。

 しかし、頼りにしていた大室の妻が亡くなり、赤城姫は山中で途方に暮れてしまいます。

 そこに美しい女性が現れました。

 その美しい女性は赤城の沼の龍神でした。

「この世は命はかなく夢・幻のようであります。竜宮城という、長生きの素晴らしい処へと姫君を案内します」そう言うと、赤城姫を竜宮城にお連れになりました。

 龍神に助けられた赤城姫は、その後を継いで赤城大明神となります。

 末の伊香保姫は、伊香保太夫の城に護られ無事でした。


 留守をしていて事件を後で聞きつけた家成は、慌てて戻り、淵名姫の無くなった場所で神となった淵名姫と再会し、後を追って淵に身を投げて亡くなります。


 都に居た若君は、事件を知ると軍勢を率いて上野国に戻り、更科次郎を成敗した後に継母を捕らえると、信濃国へ追放しました。

 信濃へ戻った継母は、甥を頼るが捨てられ、亡くなります。


 若君は淵名姫と家成が亡くっなった場所に淵名明神を祀り、次に赤城山に向かいます。

 その赤城山の大沼の畔で、鴨の翼に乗った淵名姫と赤城姫に再会します。

 二人は神に成った事を若君に告げると、天に上がって行かれました。

 二人の乗っていた鴨は大沼に留まり、小鳥ケ島に成ったそうです。


 以上が赤城三姫伝説の大まかな内容です。


(神道集より)





「その赤城姫も十六歳だったのかしら?」


 ◇ ◇ ◇


『先に殺された淵名姫がその時十六歳で、赤城姫は2つ下だから十四歳です』


『淵名姫が利根川の淵に捨てられた時、結界が発生した?』


『淵名姫が超能力者だったのか』


『結界は十六歳の超能力者なら、どの水場でも発生するのかね?』


『赤城山付近限定だろうよ』


『赤城姫はその結界に救われたか』


『神に成ったって事は死んだんじゃね?』


 ◇ ◇ ◇


「そうね……分かんないけど、とりあえず赤城姫は龍神に会えて、竜宮城に行ったみたいね。因みにその伝説は何時代の話?」


 ◇ ◇ ◇


『5世紀初頭だとされています』


 ◇ ◇ ◇


「その頃の毛野国はもう分断されてたわね……三姉妹が入れ墨少女では無さそう……」


 ◇ ◇ ◇


『赤城姫を竜宮城に誘った美しい女性が、入れ墨少女かも』


『時代的に入れ墨少女の可能性あるね』


 ◇ ◇ ◇


「その赤城姫を誘った美人龍神には、名前が有るの?」


 ◇ ◇ ◇

 

『唵佐羅魔女』


 ◇ ◇ ◇


「なんたら魔女まじょ?」


 ◇ ◇ ◇


『ごめんなさい。【オンサラマニョ】って読むらしいです』


 ◇ ◇ ◇


「オンサラマニョか……でも魔女まじょって漢字はいわね。あの入れ墨少女にピッタリだわぁ。まさに和風魔女って感じ」


 ◇ ◇ ◇


『いや、怖いよー』


『何か名前も強そう』


『龍神様だよ。宝は諦めた方が…』


『おじリスはチキりだな』


 ◇ ◇ ◇


「現代の清楚系美少女エスパーと、龍神と言われた古代の魔女の戦いよ。アナタ達は絶対好きでしょ?こういうの」


 ◇ ◇ ◇


『ワクテカ』


『ハイ。好きです』


『頑張れジュネキ♡』


『だからアニメじゃないのー』


『アブアブ』


『戦うとかじゃ無くて、お願いしよう』


『もうムカデ現場監督を倒したから宝貰えるんじゃないのかな』


『竜宮城に入れても、帰れるの?』


『湖に引きずり込まれそうに成ったんでしょ?龍神様は侵入者をこ○す気では?』


『祟りを起こさないように考えて』


 ◇ ◇ ◇


「まあ、戦うって言っても相手はこの世にはもう居ないだろうし……いや、あの水蛇が魔女の化身なのかな?。刺激せずに竜宮城に連れて行ってもらう方が得策だけど……あっ、そうだ!あとって何か知ってる人いる?」


 ◇ ◇ ◇


『グク?』


『韓国スープかな』


 ◇ ◇ ◇


「韓国スープの事なの?4世紀に韓流ブームとか有った?」


 ◇ ◇ ◇


『有る意味韓流ブームw』


『朝鮮半島とは交流も交戦も有ったとされてます』


『高句麗とか百済とかに別れていた時代だよね』


『ワダツミ族なら貿易で行き来してたと思うのー』


 ◇ ◇ ◇


「うーーん。スープか……宝物がスープなのかな?」


 ◇ ◇ ◇


『グクがどうしたの?』


 ◇ ◇ ◇


「ううん、何でもないわぁ。オッケッ!みんな、ありがとね!おかげでが見えだしたわぁ」


 ◇ ◇ ◇


『良かった。カツ丼が見え出して』


『カツ丼が見えない人生なんて最悪だからな』


『活路ね』


『ジュネキが元気に成って良かった♡』


 ◇ ◇ ◇


「明日楽しみにしといて、ひょっとしたらサプライズが有るかもよ」


 ◇ ◇ ◇


『よし全裸待機だ』


『ワイ氏、明日風邪で会社休む』


『紳士どもは変な期待するなよ』


『何か手伝う事有る?』


『事故が有ったらアカンし、赤城山行こうかな』


『ニートはいいな』


『俺も行くわ』


『ヒント夏休み』


『行きます♡ノ』


 ◇ ◇ ◇


「大丈夫!皆は来ないようにして。ちゃんと報告するから。サルマーロからギャラリーは断わるように言われてるの。それに人だかりが有ると、警察に止められるわぁ」


 ◇ ◇ ◇


『分かった』


『仕方ないね』


『そう言いながら行くやつ居るとミタ』


『こら』


『遠いからどっちにしても無理だった♡』


 ◇ ◇ ◇


「ごめん!明日早いから今日はここまで!必ず明日、皆に良い知らせを届けるわぁ!期待して待ってて!」


 ◇ ◇ ◇


『絶対無理しないで下さいね』

『グッドラック』

『おつ』

『自宅で応援してるわ』

『ホンマに無茶したらアカンでー』

『神様にお祈りしとく』

『栄光は君の手に』

『イコニコ史上最大のニュースになるぽ』

『竜宮城は必ず有る!』

『では明日よろしくなのぉー』

『ファイトだジュネキ♡』

『明日必ずね』

『おつです』

『フレーフレー』

『ほな、頑張りんシャイ』

『期待してるよん』

『お宝ゲットしてこい』

『明日俺達は真の伝説を目の当たりにする』

『おやすみ』

『無茶するなよ』

『オンサラマニョによろしく』

『おつ』


 ◇ ◇ ◇


 ジュエリは手を振り、放送を止めた。


「ホント、イイ奴らばっかりだわぁ……」


 ジュエリの顔には自然と笑みがこぼれていた。

 お気に入りのラップソングを口ずさみながら、飛び込むようにベッドに横たわる。

 暫く嬉しそうにしていたが、急に我に返るように顔の笑みを打ち消した。


「違う!騙されちゃいけないわぁ。所詮人間なんてクズよ。特にネットの奴らなんて底辺だわぁ。アイツらは只の私のファン。お金の元よ。利用するだけ利用させてもらうわぁ」


 複雑な表情を浮かべながら、天井に向かって独り言を放つ。

 それはまるで、自分に無理矢理言い聞かせているように見えた。


「そうよ!大金を手に入れて、セレブに成って、チヤホヤされながらも、安全を保って生きていくの!本物の女王様のような上上級国民生活が待ってるんだわぁ。友達なんてイラナイ!」


 ジュエリは寝返りを打ち、長い髪を弄りながら、寂しげな目をした。

 そして明日の為にもう一度推理を整理しようと考えた時、一つの疑問がジュエリの脳裏をよぎった。


「オンサラマニョは、なんで宝を隠したんだろ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る