第29話 第186遊撃艦隊

 五十六の艦隊は旗艦に小型艦艇母艦『あかぎ』随伴小型艦艇母艦『かが』を主軸に小型艦艇母艦の『しょうかく』『ずいかく』、巡洋艦15隻、駆逐艦56隻、支援艦8隻の構成である。

 木星コロニー群付近には次元潜水艦が3隻が先行している。

 彼らは情報収集が主であり、時折、通信ポットを五十六の元に届けてくれる。

 

 五十六の動きは敵の監視下に置かれている。

 敵は五十六の艦隊が主力だと睨んでいるはずだった。

 「敵の次元潜水艦が監視についているな。常に相手の位置を確認しろ」

 あかぎの司令所では慌ただしく、将校が動き回っている。

 多くの事がコンピューターによって処理されているとは言え、最終確認などを人間の手に委ねている結果、煩雑な作業が多く残っている。


 第186遊撃艦隊の艦隊名にて、彼らは行動をしているが、この情報は敵に対して、意図的にリークされている。

 当然、彼らが敵にマークされる為だ。

 五十六はそれを承知の上で、なるべく多くの敵の目をこちらに向けさせるために派手に行動をせねばならなかった。

 「戦艦クラスが無いから直接戦闘になった時の火力不足が気になるな」

 五十六は艦隊決戦になる危険性を考えていた。

 小型艦艇母艦はあくまでも小型艦艇を多く運ぶだけの貨物船でしかない。防御力は高めているが、艦艇としての攻撃力はまったくない。大きいだけで防御力もあまり無い為、艦隊決戦となれば、良い標的であった。

 かつての航空母艦の運用から考えて、小型艦艇母艦は常に敵艦隊から遠ざける必要がある。尚且つ、常に敵の長距離攻撃や小型艦艇による襲撃には備える必要があった。

 航空母艦の運用では直衛の戦闘機を防空に飛ばすアイデアもあるが、小型艦艇をそれに充てるのは難しい。

 これは航空母艦の運用と小型艦艇母艦の運用は似て非なると言える部分であった。

 基本的には艦隊防衛は艦艇個別の防御力が物を言う。

 艦隊防御的には旗艦の周囲に艦艇を配置して、敵の攻撃に対して盾になる。この考え方は艦隊と言うより航空機の編隊に近い感じだろう。

 その為、防御力の一切、無いとも言える小型艦艇の出る幕じゃないわけだ。

 

 五十六は今回、情報収集艦『うつみ』を用意していた。

 情報収集艦は支援艦の一種である。主に電波、素粒子などの観測を行い、敵の位置情報や通信などを取得する艦船である。

 現状において、通信を電波等に頼る事は制限されているので、通信を傍受する事はあまり無いが、次元の断層に潜む潜水艦などを発見するのに役立っている。

 だが、五十六はそれだけのために用意したわけじゃなかった。

 うつみに観測を命じたのは敵拠点の熱量であった。

 うつみには通常艦とはまったく違う観測機器が多く搭載されている。

 その中の一つが超長距離の熱量を観測することだ。

 敵拠点の熱量を測る事で、敵拠点内の動きが手に取るように解ると五十六は考えた。

 今回、敵は拠点防衛が主な任務になっている。

 そうなれば、拠点を中心に軍は行動を行うのが必須である。

 防衛艦隊は拠点周辺をパトロールしているが、定期的に拠点に戻る。

 絶やさずにパトロール艦隊を出すのであれば、拠点内に出撃準備をする新たな艦隊があるはずだ。そのタイミングを計るためであった。

 五十六はうつみからのデータを確認しつつ、新たな企みを練っていた。

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太平洋戦争から宇宙戦争に転生しちゃった提督 三八式物書機 @Mpochi

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