第28話 木星コロニー群

 木星コロニー群

 木星の静止衛星軌道上に置かれたコロニーの集団である。

 全部で12のコロニーで形成される。

 住居コロニーは5個。総住人数は3万5千人。

 それ以外は工業コロニーが2個、農業コロニーが4個である。

 そして、軍事コロニー。

 コロニー群の防衛はこの軍事コロニーが全てを受け持っている。

 軍事港も備え、全艦隊の補給と整備も担っている。

 宇宙艦隊の司令部も置かれ、ここが重要拠点であるのは間違いがない。

 「宇宙戦艦並に武装と装甲が施されたコロニーか。それに他のコロニーにも近い。下手に攻撃を仕掛ければ、一般市民への被害が大きいか・・・」

 厄介な代物であった。ある意味で自国民を盾にしているとも言える布陣である。

 この時代においても国際法は存在する。

ただし、 地球側が独立を認めてないため、彼らは批准してない。

 だが、それでも、暗黙の了解で一般市民への大きな損害が発生するような攻撃は認められない。

 すなわち、軍事コロニーを破壊する為に他の一般コロニーを巻き添えするような大規模破壊兵器の使用は出来ないわけだ。

 五十六は敵の艦隊以上にこの軍事コロニーの存在を嫌った。

 「軍事コロニーを制圧する事が出来れば、この宙域での目的は達成が可能なわけだ」

 五十六の言葉に艦隊幹部からは疑問が出る。

 「我々はあくまで陽動であり、この宙域の制圧ではないと考えますが」

 「その通りだ。だが、陽動とは相手が乗ってくれないと意味が無い。我々が本気でこの宙域で作戦を開始すると敵の全体に思わせる事が出来れば、本隊の作戦は飛躍的に達成されるであろう」

 五十六の言葉に全員が頷く。だが、それでも難しい作戦である。

 「どうやって、軍事コロニーを制圧するつもりですか?敵艦隊は確実にコロニーを盾にして、布陣するでしょうし・・・」

 「今回は敵の艦隊の釣り上げるところから始める」

 「釣り上げる?」

 「そうだ。一本釣りだ」

 「ちょっと意味が・・・」

 困惑する艦隊幹部達を前に五十六は釣りのジェスチャーをしていた。

 「簡単だよ。奴らは我々が攻撃を躊躇する民間コロニーを盾にしている。だから、そこから釣り上げて、戦いやすくするんだ」

 「そんな事が可能ですかね?自ら有利を放棄するなんて」

 「出ざる得ない状況を作る。餌を撒いてやるんだ。そうすれば、おのずと出ざるおえない状況となるってもんだ」

 「はぁ・・・それで策は?」

 「ふむ。この計画書を見てくれ」

 五十六は彼らに計画書を送る。

 「なるほど・・・コロニー前面に艦隊を揃え、侵攻を示唆するわけですね」

 「そうだ。相手の攻撃が無効化できるギリギリに展開する。それで奴らを威嚇するわけだ。そして、奴らが充分に困惑するまで嫌がらせを行う」

 「嫌がらせ・・・敵も無効化が出来る攻撃を仕掛け続けると?」

 「あぁ、無駄弾を撃ちまくるんだ」

 「それで奴らが動くと?」

 「あぁ、動くだろ。艦隊には無傷だとしても・・・彼らが守るコロニーまでは完全に無傷とは言えないだろ?」

 「しかし、コロニーへの攻撃は・・・」

 「コロニーに攻撃をしたわけじゃないよ。我々はあくまでもそこに居る敵に攻撃を仕掛けたんだ。不幸にも流れ弾がコロニーに着弾するのは不可抗力。むしろ、そんな民間人の近くに位置する敵に問題があるわけじゃないかね?」

 「なるほど・・・妙案ですね」

 「そういう事だ。早速、準備を初めてくれ」

 幹部達が自分の仕事の為に散って行ったのを見送った五十六はため息をつく。

 「あとはあの軍事コロニーだけか・・・」 

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