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まるで闇です

お嬢様から零れる頬笑みが失せて

月のない 星一つもない 森のよう


それは漆黒の闇です

真っ赤な頬が 青白くこけ

太陽を失くした 夜のよう


わたくしも また さ迷いました

こともあろうに 歓楽街を

当てもなく さ迷い歩いたのでございます


逃げるように

あのすこやかだったお嬢様との生活から

多分 罪悪感から


ジプシー女に身を変えて

もはや それが当たり前のように

はたして どちらが本当のわたくしなのか


薄暗い路地裏さえ 快い明るさに思え

その薄汚ささえ ものともせずに

本来のわたくしは あちらの世界なのかも知れません

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