お嬢様の　ふっくらとした柔らかい胸が

鋼（はがね）のように硬直した瞬間にございます

どれ程　打ち拉がれたことでしょう

一体　何れのどの方が想像し得たでしょうか

赤く飛び散る血飛沫に

その断末魔は　お屋敷の方々の心まで撃ったのです

お嬢様は　暫く　お食事もお取りになれぬほどに

こと奥様は　哀しみと　寂しさと　恐怖とで

遂には　失神するまでの癇癪（かんしゃく）をお持ちになられたのです

ああ　それなのに嘆かわしい

当のあのお方だけは　饒舌（じょうぜつ）に嘘を幾つも並び立て

立派な弁護士をお付けになって　罪を逃れてしまわれた

よからぬ者が忍び込み　潜んでいたのだと

旦那様も　また　そう勘違いなされて

退治してやろうと　互いに思って

旦那様は草刈の鎌を　あのお方は銃で

いいえ　旦那様は鎌を振り上げるなどそんな余裕さえなく

振り返りざまに撃たれたのでございます

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