9.5

深夜、小さな画面の仄暗い光が私の顔を青白く照らしだす。今の私はひどい顔をしているに違いない。

「っ……」

 画面を注視するたびに心が締め付けられて、思わず唇を噛んだ。加速していく鼓動と連鎖して感情が昂る。気を紛らわせるために夜空に浮かぶ月を眺めたのに、それとは裏腹に視界が徐々に滲み始めた。

「どうしてなのかな……」

 思わず言葉に出てしまう。これまでもいつもそうだった。仲良くなっても相手が何考えてるか分からなくて、少しずつ互いにぎこちなくなって離れたり、転勤で別れたり。私には一生友達なんかできないと思っていた。

 でも春に彼と、そして彼女と会えたから。笑っちゃうくらい顔に本心が出ちゃう人達に会えて、この人たちなら信用してもいいかなって思えたから。ほんの短い期間だけど、二人と友達になろうかなって、友達になりたいなって思えたんだ。

 私は再び画面に浮かぶ文字列に目線を注ぐ。穴が開くほど見つめていてもそれは変わることなく存在し続けていて、やっぱりどうしようもなく泣きたくなってくる。なんでこんなことになっちゃったのかな。もしももっと早く二人と知り合えていたら助けを求めていたかな、それとも今でも二人は気づいたら助けてくれるのかもしれない。

…ううん、この仮定に意味はないからやめよう。それに私は二人に迷惑をかけたくない。だから私ができることはきっと一つだけに違いない。せっかく仲良くなれたのに。せっかく近づいてくれたのに。諦めと後悔と執着が、私の頭の中をぐるぐるかき乱すけど、どうしょうもないと自分を納得させる。気力を振り絞ってキーパッドを打ってメッセージのやり取りにひと段落つけてから、ベッドに倒れ込んでそっと呟いた。

「二人とも今までありがとう。………ごめんね」

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