第15話 有名人

 3年生になって最初の登校。クラス発表を見てクラスを確認すると、「一緒だ」「離れちゃった」と騒ぐ生徒を尻目に、さっさと俺は教室へ入った。

 入った途端、去年やその前にもあったのと同じ光景が繰り広げられる。

「霜村と同じクラスか」

「はあ。ついてない」

 そんな会話もあれば、

「極悪人の子のくせに、よく堂々と生きてるよな」

「税金で生きてるんだろ」

「ああ、施設に入ってるんだったよな」

という声も聞こえる。

 施設の運営は確かに税金だが、お前らが払っているわけではないだろうに、と思いながら、俺は出席番号に従って自分の席に着いた。

 窓際で、外を見ていれば視線に困らないところがいい。

 まあ、廊下側から順だと、一番廊下側になるので、見るのは廊下になって、場合によっては廊下を歩く生徒に、「何見てるんだよ」と文句を言われる事がある。理不尽だ。

 ぼうっと外を見ていると、わっと声が上がった。

「音無!今年は一緒か」

「おう、よろしくな!」

 見るからに明るい生徒が、にこにこしながら、クラスメイト達に囲まれていた。


 高校生にもなってバカじゃないか、他にする事がよっぽどないのか。俺を取り囲むやつらを、俺は冷めた思いで見ていた。

「たくさん殺しておいて、よく当たり前みたいな顔をして税金で生きてるよな」

「還元しろよ。カラオケ行くから、出せよ」

 俺は溜め息をついた。

「俺が殺したわけじゃない。それに施設の運営費は消費税じゃないから、お前らに還元はおかしいだろ」

「屁理屈こねやがって」

 カッとして、殴り、蹴って来る。じっと我慢して、終わるのを待つ。急所を外す訓練だと思えばいい。その内こいつらの方が、飽きるか疲れるかして、終わる。

 するとその時は、誰かが来るらしい物音がして、彼らは逃げ出した。「こいつにはやってもいい」とは言うが、それが本当は通じない事くらいは理解しているらしい。

 来たのは音無だった。

 逃げるように走り去ったグループを見送り、次に俺を見てギョッとしたらしい。

「どうしたんだ!?ケンカか!?いじめか!?」

 俺は制服の汚れをはたきながら、

「正当な権利らしいぞ」

と答える。

 音無は納得できないという顔をしていたが、俺は構わず歩き出した。こんな詰まらない事で潰す時間はない。


 棒を構え、架空の敵に向かって、振り下ろし、斬る。何度も何度も。夢中で一通り繰り返し、やっと意識が現実に戻った時、俺は驚いた。

「何でここにいる」

 音無が、じっと俺を見ていた。

「凄ェな!」

「は?」

「剣道じゃねえな。何?」

「……銃剣」

「へえ。俺剣道部なんだけど、部のレギュラー選手と比べても凄いんじゃねえの?」

「さあ。クラブの人は知らないしな。でも、探索者は、もっと強い人ばっかりだ」

「探索者!?霜村、探索者なのか!いいなあ」

 俺は肩を竦めた。

「何であいつらにやり返さないんだよ。お前の方がずっと強いのに」

「長引くんだよ。中学の時に抵抗したら、次は酷くなったし、人数も増えたし、陰湿になっていった。抵抗せずにさせておけば、向こうも飽きるらしい」

「これまでもあったのかよ?」

「無いと思うのか?俺は極悪人の悪魔の子らしいぞ」

 俺は音無にそう言いおいて、歩き出した。

 それから音無は暇なのか、ちょくちょく俺の練習を見に来た。



 

 

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