第14話 きっかけ
夕食は采真と2人で卒業祝いに貰ったご飯で乾杯し、食後にアイスでも買いに行くかと、家を出た。
そして、そいつと合った。
「あ」
「え」
柏木と西村だった。
「何でお前がここに!?」
慌てる西村に、俺は平然と答えた。
「俺の家だからな」
「何でお前の家!?」
「買ったからだ。キャッシュでな」
20万だったのは言わない。
柏木も西村も、驚いた顔をしている。
「買ったのか!?お前が!?遺産か!?」
これは柏木だ。
「そんなものはなかったですよ。全部、探索者をやって自分で稼ぎました」
西村が悔しそうに顔を歪め、
「俺は卒業まで資格停止って言われたのに!」
と言う。
「それは当然だろ?むしろ、殺人未遂で逮捕されなくて良かったじゃねえか」
そう采真が言い、柏木と西村は苦い顔をした。
「まあ、いきなり魔術は悪かったかもしれないけど」
かも知れない?
「お前が魔獣だと思っているのは今もだからな!証拠を見つけたら、俺が討伐してやる!
音無、こんな奴とつるんでたら破滅だぞ!?目を覚ませ!」
西村が俺に指を突き付けてそう宣言し、
「じゃあ、よろしくお願いします!」
と柏木に頭を下げて、走り去って行った。
それを、俺と采真が呆然と、柏木は溜め息をついて見送った。
「懲りてねえな。もういっそ、警察に突き出した方が良かったんじゃねえの?」
采真が頭を掻いて言う。
柏木はこっちに体を向け、嫌そうに軽く頭を下げた。
「うちの新人が申し訳ない。反省するように言ったのに」
「反省は一応しているのでは?人のいる所でやった事を」
それに、柏木は顔をしかめた。
気付くと、ご近所の人が、何事かと顔をのぞかせている。そして、理伊沙さんも。
「一体誰に怒鳴ってるの――あら、お隣さん。西村君と知り合いだったの?」
にっこりと笑う。
「あ、こんばんは」
「どうも、理伊沙ちゃん」
采真はひらひらと手を振った。
「そう言えば卒業式だったんでしょ?おめでとう。
あ、ケーキ貰ったの。一緒に食べようよ!」
柏木はギョッとした顔をしたが、采真はにこにこして、既に歩き出していた。
「マジ?やったー!ごちそうになります!ほら鳴海!遠慮せずに!」
俺は溜め息をついた。
「采真、それはお前のセリフじゃない」
「ん?そうだっけ?」
首を捻る采真に、理伊沙さんは明るく笑い、
「さ、入って」
と入って行く。
柏木は溜め息をついて、嫌々俺に言った。
「お前も入れ。理伊沙がそう言ってるし、近所の目もあるしな」
「はあ。じゃあ、失礼します」
俺は柏木の後について、家へ入った。
「今、西村君が手土産に持って来てくれたの」
柏木がケーキの箱と皿とフォークをテーブルに置き、紅茶を淹れる。その間に、理伊沙さんが、ケーキを皿に1つずつ乗せた。いちごのショートケーキだ。
紅茶を各々に配って柏木がテーブルに着いたところで、皆で食べだした。
「西村君と知り合い?」
「クラスメイトですよ。今日卒業式だったけどね!」
采真がケーキをぱくつきながら答えた。
「私より年下だったの!?西村君と同じ年にしては、西村君は子供っぽいわね」
「ははは。老けてると言ってもいいんですよ」
俺は軽く言っておいた。
「お前ら、探索者になってまだ1年だろ?」
探索者免許を取れるのは18歳からだが、その年度に18になる人間という意味で、誕生日ではない。なので、4月生まれなら18歳で、3月生まれなら17歳で取れる事になる。グループで組むのが基本だし、推奨されているので、こういう「お友達と組める」というやり方を政府は取ったのだろう。
「じゃあ、一緒に組むために一緒に免許を取ったの?」
「いへ、おえ、あう」
「采真、飲み込んでから喋れ。
いえ、俺は4月になってすぐに1人で取って、1人でやってました。采真と組み出したのは夏休みからです」
ここでようやく采真が、飲み込んで口を開いた。
「俺は剣道部で、剣道部の顧問が探索者になるのに反対してたから、引退して、夏休みになってから取ったんだ。
そのうち、鳴海と喋るようになって、それで」
「え。前から仲良かったんじゃないのか?」
柏木が少し驚いたように言う。
「ねえねえ。話し始めたきっかけとか、コンビ組むきっかけとかって、どんなだったの?ケンカとか?」
それに柏木が苦笑して
「マンガじゃあるまいし」
と言うが、俺と采真はちょっと考えた。
「ケンカがきっかけと言えば言えるのか、鳴海?」
「まあ、言えなくもないか」
「そんな古典的なきっかけで!?」
「やっぱり男は殴り合ってわかり合うものなのね!」
柏木兄妹が声を上げ、俺達は、その時のことを思い出した。
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