第32話

「お姉さまはもういないのですから…」



「では何か?アナスタシアとして国民を騙し、父上をも騙し、ユノさえも騙していた嘘つきだということになるが?」



「だったらどうだというのですか?別に私がアナスタシアを演じていたからと言って国王陛下の言っていた婚約が覆ることはないのですよ?」



「だったら俺を選べティナ。俺がお前と婚約し国王の座に就く」




「お断りですわ。国王陛下はこうも言ってませんでしたか?私が幸せにならなければいけないと、貴方と婚約したところで幸せなどありはしない」




「貴女に拒否権はないと言ったはずだが?」


上から睨みつけるが私はそれをあざ笑う

「…ふふふっ…そうですね。拒否権はない。」





そういうと私はどこからともなく剣を出した



「なっ!?俺に刃を向けるのか!?」

レイスが狼狽え距離を取るも私はいたって冷静に自分に向けた


「いいえ?貴方のものになるくらいなら…死を選びます。元々この婚約で死ぬつもりでしたので」




「…は?死ぬつもりだったってあれは冗談だったんじゃねえのか」



「シュトリーゼ様の言葉が冗談に聞こえましたか?ふふっ全て事実よ。私はこの世界の贄として消えゆく命だったのですから」


そう言って私は一息で剣を刺そうとする


「ティナ!無事か!?」


僅か一ミリで聞こえてきたのはユノの声だった



「ユ…ノ」



その声に安心したのかティナは手に持っていた剣を落とし気を失った




「兄上、これは一体どういうことなのでしょうか?」




「どう…とは?見たまんまだ。お前はもうわかっているんだろう?ユノ」




「…兄上がそこまで堕ちるとは信じたくなかったな」


「どうだ?ユノ王位継承権を譲れそうすればこの女は解放する」


向こうにティナがいる以上こちらからは手が出せない




「――わかっ」



返事をするよりも前に意識のなかったはずのティナが目を覚ました




「全く、簡単に返事をするものではありませんよ。ユノ王子」


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