37、絢爛な王子たち④

今度はラシャールの方からの草原側の参加者の紹介がなされていく。


草原の国々は女も男と同列に紹介されている。

男女の役割が完全に分かれている森と平野の国々とは違う。

女はただ弱く守られる対象ではないのが紹介されるだけでもわかってしまう。

根本から異なる価値観に、軽く衝撃を受けるエール側がある。


パジャンの側が一通り終えると、次はエール側である。

紹介するのはジルコン。

ジルコンは、集まった者たちをその端から順番には紹介しない。

初めはわからなかったロゼリアだが、5人目ぐらいでそれがエール国と諸国との親密度の序列であることに気が付いた。

それは同時に諸国の強さの度合いでもある。

名前を呼ばれる彼らは、それを疑問に思わない。


ロゼリアは自分の名前が出るのを待った。

ラシャールは、ジルコンの横に立つロゼリアに気が付いたようだった。

紹介される相手とは慇懃に挨拶を交わすが、その目がロゼリアを都度見るのである。


ロゼリアも、パジャンのラシャール王子とは、昨日に一緒に食事をしたあのラシャールと同一人物だと知り目を剥いてその顔を見た。

ラシャールの口から末席にでも参加すると聞いていたが、それが、正真正銘のラシャール王子としてであるとは思いもしなかったのである。

飛んだ末席である。

すっかり騙されてしまった。

一方でロゼリアも今は王子である。

騙すのはお互いさまというべきなのか。

驚いているのを知られると、ロゼリアがロズ自身だとラシャールに知らせてしまうことになる。

それはどうしても避けたかった。

ぐっと驚きを飲み込んだ。

平静を装った。


最後にロゼリアは紹介される。

「初めまして。アデールのアンジュです」

昨日よりも心もち低い声を出す。

ロゼリアはまるで初めてであるかのように笑顔を浮かべ、ラシャールと握手をする。

ラシャールはわずかに戸惑いながらも、ロゼリアの目を覗き込んだ。


「初めまして?アデールの、アンジュ殿、、、?」

ラシャールが何を言いたいのかわかっている。

あなたは、昨日のアデールの娘のロズではないのか、と。

ロゼリアはぶしつけな視線に分けもわからず困ったかのように軽く眉をよせて、ラシャールの緑の目を平然と見返した。


「何か僕の顔についていますか?」

「いいえ、見とれてしまいました。大変失礼をいたしました。アンジュ殿はわたしの知り合いに大変良く似ていらっしゃいます。そのためか、どこかでお会いしたことがあったかもという気持になりまして、、、」


非礼を詫びながらもラシャールの視線がロゼリアの顔を眺めまわした。

昨夜の娘との共通点、もしくは異なるところを探している。

ロゼリアはこらえた。

今この瞬間は、パジャンのラシャールの王子とは初の顔合わせなのだ。

ついっとその視線は胸元に降りた。

ロゼリアの胸は晒で扁平にならしている。

外見だけでは女だとわからないはずだった。


ロゼリアとラシャールの無言の探り合いを見てクスリと笑ったのはウォラス。

ジルコンに続き、パジャンの王子まで、この田舎の王子が気になっているのを見て取ったのだった。


「ジルコン、令嬢たちが紹介されるのを待っているよ」

男子が終わると次は、姫たちの番だった。


ラシャールはロゼリアの手をようやく離した。

先ほど見せた戸惑いは完全にその表情から消えている。

女子に集中する様子に、ロゼリアはラシャールがラブレターを自分に寄越していたことを思い出した。

ロゼリアがジルコンと婚約した今となっては、ラシャールは結婚相手を見つける目的もあるのかもしれなかった。


並みいる女子たちの中で一番目に紹介されたのは、ジルコンの妹、黒髪巻き毛のジュリア。

顎をつんとそらして草原の者たちを眺め渡した。

敵国になるかもしれない者たちに欠片も怯えた様子はない。

鈴を鳴らしたような美しい声で挨拶の口上を述べる。

女王様の風格を漂わせながら、優雅にお辞儀をしたのだった。






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