第36話『タングリスとタングニョースト』


かの世界この世界:36     


『タングリスとタングニョースト』  







 その声はタングリス!?



 ブリの目が輝いた。


 ブリの声に励まされるようにして穴から飛び降りてきたのは戦闘服に身を包んだ二人の美少女だ。


「タングリス! タングニョースト!」


 100ワットの電球が点いたような明るさで立ち上がったブリに二人の美少女が駆け寄り、ハッシと抱き合った。


「やっとお出ましになる決心をなさったのですね!」


「うん、神のお導きで、この二人に出会えて。紹介する、こっちの大きい方が剣士テル。小さい方が弓士ケイト。たった今、シリンダー連結体を駆逐して、わたしの結界で一息ついているところ」


「姫がお世話になりました。わたしたちは主神オーディーンの片腕にして無辺方面軍司令官であるトール元帥の戦車操縦手のタングリス、こちらが……」


「タングニョーストです、お見知りおきを」


 わたしたちは、エルベ川で邂逅した米軍とソ連軍のように握手し合った。


「これがエルベの誓いなら、勝利は目前ね」


「「神のご加護のあらんことを」」


 二人の美少女は単純にYESとは言わずに神のご加護を期待する慣用句に声を揃えた。前途は多難なのだろう。


 それを察知したのか、ブリは言葉を変えた。


「おまえたちが居るということは、トールが、すぐそばに来ているということだね。この上?」


「いえ、元帥はムヘンブルグの本営におられます。元帥共々出張ってしまっては、疑われてしまいます。わたしたちは、あくまで囚人脱走の報をうけて警戒に出てきたことになっております」


「長く留まっていると、疑われてしまいます。とりあえずは戦車の中へ。自分が先頭に、タングニョーストが末尾に着きます。こちらへ」


 タングリスが咽頭マイクに手を当て「下ろせ」と指示すると、結界の天井の穴からラッタルが下りてきた。




 ラッタルを上ると地上と思いきや、薄暗く、見渡すと、巨大な鉄臭い天井が迫って来る。


 天井を潜るまでの二秒で左右の隙間からわずかに光が漏れているのが分かったが、判然とはしなかった。


 ガシャリ


 天井と思いきや、上がってみると白く塗られた機械室のようで、閉められたのは、足もとのハッチであることが分かった。


 小学校の時に乗った連絡船のエンジンルームのようなところだ。


 いや、エンジンそのもの……巨大なV12エンジンがアイドリングに身震いしていたのだった。




 ブルブルブルブルブルブルブルブル……




☆ ステータス


 HP:300 MP:100 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト


 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル


 装備:剣士の装備レベル2 弓兵の装備レベル2


 


☆ 主な登場人物


 テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘


 二宮冴子  二年生  不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生  セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生  ポニテの『かの世部』副部長 


 





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