第9話
花の都、フィナンシェ西都心部。世界一の花の数を誇るこの都市は、足を踏み入れるだけで甘い花の香りがする。中央に真っ白な城壁と黄色や橙色の屋根が並ぶ家々。高い建物が少ないため大きな大空が広がっている。
私は足を踏み入れた時、雲一つない青空を見上げて空気を体にため込んだ。トーマの呼ぶ声に気づいて慌ててレンガを駆ける。二人は急いでいる、確かに綺麗で見とれてしまうけれど今は急がなければいけないらしい。
華やかな商店街の花や可愛いらしい小さな小物に目を囚われながら速足で歩く。天に上る黄色い布が天井を覆うアーケードを潜り、郊外へ出た。一気に人気が少なくなりさらさらと海の波打つ音がかすかに聞こえる。
ここは観光客の土産や宿が立ち並ぶ小さな町。ここで私たちは働く場所を探すらしい。
「ここに、掲示板があるね」
トーマが指さすその掲示板には町の大まかな地図。その隣にもう一つ小さな札が立てられていた。そこには町の色々な広報の紙が貼りつけてあった。
「・・・・・・あ!求人票があります」
私はその求人票を上から順に見て、一つ気になる求人を見つけた。そこには青い文字でリアージュと見出しがあって運のいいことに宿屋だった。その下により深い群青色で、ベットメイキング等々と書かれている。
トーマとデュークは他がいいらしい。トーマが意見をした。
「これ、気になるの? 他にもいろいろ・・・・・」
なぜだかはわからないけれど私はその一件に根拠のない希望を注いだ。デュークが以外にもそれを尊重してくれた。
「・・・・・そんなに気になるのなら行ってみるか。雇ってもらわなければ他を当たればいいし」
「それも一理あるな・・・・・・」
事はこれに一決して、私たちはそこへ向かった。
宿屋は木の温かみが感じられる建物だった。足を踏み入れると、いらっしゃいませと大きな声が聞こえる。ロビー兼、酒場だった。角の隅に樽が置かれている。丸い木で出来たテーブルに小さな椅子。計四つセットで置かれていた。
カウンターに私たちは歩みより、大きな声であいさつした店員に小声で声をかける。店員はすぐにオーナーを呼んだ。
オーナーは褐色肌をして、右耳にピアスをつけた若い男の人だった。オーナーはハニカミがよく似合う顔の美しく整った人だった。オーナーは私たちをカウンターの奥の控室に入れて、薄水色の三人掛けソファに座らせてくださった。
「働きたいって?歓迎だよ」
そういうとオーナーは私たちの頭の上からつま先までを見て、一言。
「君たちは客を呼ぶキャッチ、君は中で客たちに酒を運んだりベットメイキングだね。よは接待」
トーマとデュークはキャッチ、私は中で主に雑用係だった。ベットメイキングはともかく、酒場で働くことはできるか不安だ。けれどやるしかない。私たちは喜びの中に頷いた。そして驚くことに住み込みも承諾してくれた。やはり私の勘は合っていたのだ。
「いやぁ、ミュリュちゃんいいね。ここに来てよかったよ」
「はい!部屋も嬉しくて大満足です」
トーマの部屋で二人で話していると、オーナーが入ってきた。
「へぇ、二人とも仲いいんだ」
蛇のような冷ややかな瞳で、オーナーは私たちを見た。なんだろうか、変な感じがする。
私と目が合った。
熱いような獲物を狙うような、そんな目をしていた。ふと右を見てみるとトーマはその様子を冷静に見ている。本当にここに来てよかったのかしら、そんなことを考えてしまった。
「ミュリュ、少しおいで」
手招きされてオーナーのところへ行った。
「君の部屋に入ってもいい?」
「・・・・・・ええ」
肩を抱いて、オーナーは私の部屋に入った。私の部屋は一人用のベットとクローゼットがやっとの小さな部屋ではあったが、数日間テント暮らしだった私にはありがたかった。
「ここ、自由にカスタマイズしてかまわないから」
「ほんとうですか?」
「・・・・・・俺はそんな嘘つかない。それより自己紹介するな」
オーナーは私の使うベットに腰掛け、私を見上げた」
「あの二人には言わないけど、君には俺の名前教えとくね。俺の名前はドゥワ・マチナ。ドゥワって呼んでいいから。他のやつはダメだけど」
なぜ私だけなのかはわからなったが、うなずいておいた。
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