第74話 山賊討伐へ出発!
健康診断が終って家に戻ると丁度香織も番組が終って帰って来て、シャッターの前で車から降りてスマホを取り出してた。
「そういやまだシャッターの鍵渡して無かったな」
と思ってリモコンでシャッターを開けてやると、後ろを振り向いて手を振った後で992を倉庫に入れてた。
俺も続いて倉庫に車を入れると「もう完成してたんだね」と言って来た。
「ああ、鍵渡しとくな。態々車から出なくていいから楽だぞ」
「あ、そう言えばさ、さっき会社の事務所寄って来たんだけど今度の土曜日の夜に、そこのレンタルオフィスで同じ税理士事務所にお世話になってるとこの人が集まって親睦会するらしいけど土曜の夜ってもう戻って来てるかな?」
「きっと大丈夫だと思うぞ、何かと付き合いもあるだろうし参加してた方が良いだろうな」
「そうだよね、でもみんな私より若いくらいの社長さんばっかりなんだよ。凄いよね」
「へぇ二十代で独立するとか頑張ってるんだな。でもさ香織だって扱う金額と利益率ならNO1だろ?」
「どうだろうね? 利益率は文句なしかも知れないけど、本業収入っていうかラジオ局からの収入は五万円しか無いからね」
「マジかそれ? でも新番組始まったら結構増えるんだろ? いつからだっけ?」
「九月の第一水曜からの予定だよ。今日の放送でもう番組が変わる事の告知したからね」
「なんだか、いよいよって感じだな」
「初回ゲスト俊樹兄ちゃんと晃子さんだから頼むよ!」
「ああ、でも、もしかしてさ?」
「ん?」
「生放送?」
「そうだよ、基本は今までの局でやるんだけど、今回は晃子さんが東京だから、東京の局からの放送になるよ。全国ネットになったし、そのご挨拶もかねてだね」
「生かぁ」
俺は生放送に若干の不安を感じてしまったぜ。
その後でパソコンに向かって投稿サイトを開くと、冴羽を名乗る人からの返信メールが届いていた。
『興味を持ってもらえたようですね、サイト内でのやり取りは問題があるので今後の連絡はこちらにお願いします 〇〇〇saeba@〇〇〇.com』
プライベートアドレスが送られてきていた。
すぐに返事をするべきかどうか考えているうちに香織が声を掛けて来た。
「今日の晩御飯はどうする?」
「ああ、そうだな焼肉の気分だけど、香織と飛鳥もそれでいいか?」
二人とも焼肉でOKという事だったので、少しお酒を飲みたいのもあって、タクシーで出かける事にした。
「明日は朝早くから出かける事になるけど大丈夫か?」
「うん、ワクワクしてるよ」
「山賊の討伐だから人が死ぬ場面にも遭遇するし、辛かったりするなら無理に参加しなくてもいいんだからな?」
「うん……パパの言う事も理解出来るけど、あの世界で行動するうえでは避けて通れないと思うし頑張るよ」
「俊樹兄ちゃん? 今更そんな事言うと飛鳥ちゃんも困っちゃうと思うよ? 私が全力でマリアちゃんも飛鳥ちゃんも守るし大丈夫だよ」
「そうか、香織よろしくな。飛鳥も行く以上は頑張ろうな」
「そう言えばさ、私って向こうの世界で何食べたらいいのかな? 前にパパの小説で玉ねぎ中毒になった話あったじゃない? 鳩もそんなのあるのかな? って言うかいくら鳩の姿でも、虫とか乾燥したトウモロコシとかは食べたくないんだけど……」
「あー、どうだろ? 俺も流石に鳩の食べ物って解んないな?」
「飛鳥ちゃん。私ね少し調べてみたの鳩の食事」
「どうだったの? 香織お姉ちゃん」
「基本的には綺麗な水と種子類が一番健康には良いらしいんだけど……歯が無いじゃない?」
「うん確かにそうだね」
「だから、小石や砂を一緒に飲み込んで胃ですり潰してから、消化するんだって」
「えぇ、それはちょっと無理かも」
「だよね、だから普通に塩分控えめな人間用の食べ物を、用意するのが良いと思うの、パンとかはそのまま千切って飲み込めば良いだろうし、お肉やお野菜は一口大に切れば大丈夫だと思うから」
「そっかぁ、食べ物一つとっても動物の姿だと大変なんだねぇ」
「その辺りは俺がマリアに頼んでおくから心配しなくても大丈夫さ。それぞれが自分に出来る事を頑張ればいいと思うぞ」
「うん、解った」
食事を終えた後は家に戻り小説を四話分ほど書き貯めて置いた。
そろそろストックは厳しくなってきたし、書籍用の推敲もあるから一日一話更新に切り替えなきゃな。
表紙用のイラストデータを杉下さんあてに送っていた返事が届いていた。
「テネブル先生、表紙用のデータ確認させて頂きました。最高です! 一巻分の推敲が終わり次第ですぐに出版へ向けて動き始めます。十月の頭には発売予定でスケジュールを組みましたので、ご確認ください。問題が無いようでしたら発売へ向けての各種販促活動もスタートさせます」
メールに添付して有ったスケジュールを確認して問題はなさそうなので『よろしくお願いします』と返事をしておいた。
今となっては、お金を稼ぐための出版という訳では無くなったけど、自分の作品が本屋さんの店頭に並ぶ状況を想像しただけで顔がにやけて来るぜ。
翌朝になり三人で朝ご飯を食べてから地下室へと向かった。
「爺ちゃんおはよう、今日から山賊討伐だから土曜日までは戻ってこないと思うけど、次は仙桃とかも持って来るな」
「そうか、俊樹に頼みなんじゃが、ヒヒイロカネとアダマンタインと言う金属を手に入れて来てほしいぞ、後は飛鳥用の身代わりのお守りと、転移門を用意して置いた。身代わりのお守りは今度俊樹が仙桃を持ってくれば、俊樹と香織のも作って置くでの」
「ありがとう爺ちゃん。じゃぁ行って来るな」
「総司爺ちゃん、ありがとうね大事に使うよ」
「飛鳥も無理をするでないぞ」
そして俺達は三人で青い扉をくぐった。
『マリアおはよう。戻ったぞ。今どこだ?』
『おはようテネブル。もう冒険者ギルドへ来てるよ』
『解った、三人でそっちに向かうな』
『うん、待ってるね』
冒険者ギルドに付くと、マリアは『ラビットホーン』の人達と一緒に話していた。
「お、テネブル久しぶり、今回もよろしく頼むな。マリアちゃんのBランク冒険者としてのデビュー戦だから派手に行こうぜ」
「よろしくな」って返事したけど、当然その場に聞こえる音は「ニャーン」だったぜ。
初対面の飛鳥も「よろしくお願いします」って挨拶してたけど「クルックー」としか聞こえて無かった。
香織も「アォン」って言ってた。
「チェダーさん達も、Aランク冒険者としてのデビュー戦ですね。今回の作戦も冒険者のまとめ役なんでしょ?」
「そうだな。頑張るぞ」
ギルドマスターは、出来るだけ冒険者に貢献ポイントを稼がせる為に、山賊のボスとの対戦の時以外は、基本的に見守るだけなんだって。
いよいよ山賊討伐の始まりだ!
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