第73話 視力がやばいんですけど……

 飛鳥をZGPの後に乗せ、大型の家電ショップへ向かう。

 元々がカメラ屋さんだけにデジカメも豊富な在庫を誇っていた。


「飛鳥、機種は調べて来たのか?」

「うん、私が身に付けるんだし重さと操作性が大事だと思って、ソニーのRX0-Ⅱって言うアクションカメラが良いと思うんだよね。耐衝撃や耐水性に強いって書いてあったし」


「そうか、じゃぁそれを伝えて、他にもそれに近い様なお薦めの商品を聞いてから決めようか」

「うん。解ったよ」


 結局何種類か出して貰ったけど、飛鳥が最初に指定したモデルが一番気に入ったようで、RX0を購入した。

 このカメラだとパソコンでイラスト変換しなくても、カメラだけでイラスト変換機能とかついてるんだな。

 技術の進歩って凄いぜ。


 でも人物切り抜きとかの加工が発生するし、イラスト化のタッチも微妙に違う感じだから俺の作業は変わらずにパソコン中心かな?


 カメラを購入した後はランチに出かけた。

 北九州では有名なチェーンのうどん屋さんに入ったけど、ここのうどんは出汁がめちゃ美味しいんだよな。


 高校生時代は部活帰りとか良く通ったな。


 麺は冷凍麺だから全国チェーンの讃岐うどんの店と比べたら、ちょっと腰が足らない気もするけど、博多のうどんに比べたら十分に腰はある。

 博多のうどんって本当にふにゃふにゃだからな。


「飛鳥どうだ? ここのうどん。俺のソールフードと言っても過言じゃ無いんだよな」

「へー、そうなんだぁ。うどんもおでんも凄い美味しかったよ!」


「気に入ってくれたなら良かった。そう言えば飛鳥は本当に通信制の高校でいいのか?」

「そうだね、シエルの時間も楽しみたいし、そうしたいよ」


「そっか、じゃぁ転入関係の書類とか申し込みは俺がしようか?」

「うん、パパお願い」


「でも、シエルの時ってどうなんだ? レベルも10まで上がったら結構力強く飛べる感じか?」

「そうだね、最初より全然スピードも出せるようになったし、次は武器の使い方練習しないとね」


「無理はするなよ?」

「でもさぁ、テネブルだってあんなちっちゃいのにバンバン敵倒して凄いよね」


「他に男手が無いしな。やっぱり女性陣に魔物退治とか任せるのは俺的に気が引けちゃうよ」

「明日の朝からは山賊の本拠地の殲滅だから、結構精神的に厳しいけど大丈夫そうか?」


「うん……パパの小説でも最初の頃に書いてあったけど、人間じゃない事で罪悪感的には薄いと思うんだよね」

「そうだったら良いけど無理はしたらだめだぞ」


「解ったよ」

「香織とは、うまくやっていけそうか?」


「うん。全然大好きだよ。家に居る時に香織お姉ちゃんの番組の録音したのを、ずっと流してて、香織お姉ちゃんの考え方とか、スタイルとかを情報収集してるんだよ」

「そっか、俺はまだ香織の番組って聞いた事無かったな」


「素敵な番組だから作業中のBGMとかで流してたらいいと思うよ。音楽中心だし」

「そうだな、俺も香織から録音したCDでも貸して貰って聞いて見るよ」


 家に帰ると飛鳥はカメラの使い方を勉強しとくって言って部屋にこもったので、俺は通信制の高校のHPを開いて問い合わせとかをしていた。

 

 晃子に準備して貰うのは飛鳥の通っていた学校の、成績・単位修得証明書、在籍証明書、生徒の転学についての書類だな。


 ラインで頼むと、すぐに返事があった。


『必要だと思ってたから、もう高校に依頼して準備して貰ってるよ。速達で送るね』

『ありがとう、助かるよ』


 健康診断の診断書とかも居るのか。

 飛鳥の部屋のドアをノックして「健康診断書が必要だから今から行かないか?」と声を掛けた。


 飛鳥もOKだと言ったので、ネットで調べた健康診断書を早めに用意してくれる病院へと出かけた。

 今度はハスラーで出かけた。


「この車って軽なんだよね?」

「ああそうだよ」


「へぇ、それでも結構中とか広いんだね」

「ああ、車高も高いから広く感じるよな」


「パパこの車さ、私が免許取ったら頂戴!」

「別に構わないけど、もっと良いの買ってやるぞ?」


「うーん、それは少し乗りなれて運転が上手になってからでいいよ」

「そうか、じゃぁそれまでは大事に取っておくな」


 俺がお金には困らない状況って言うのを知っても、物を大事に考える飛鳥に少し嬉しくなったぜ。


 病院に着いて飛鳥が検査に行ってしまうと暇だったので、スマホで感想のチェックをしようと思って投稿サイトのマイページを開いた


 すると、新着メールの項目が点滅してた。

 開いて見ると……


『いつも楽しく拝見しています。あの世界での目的は見つかりましたか? シンサクの子孫に会いに行った方が良いですよ? 気になったら連絡下さい』 冴羽

 

 どういう事だ……

 向こうの存在を知っているかのような文だ。


 爺ちゃんの仲間の誰かなのか?

 それとも、他にも知ってるやつがいるのか?

 冴羽さんか、ちょっと連絡してみるかな。


『メール拝見させて頂きました。気になったので連絡を差し上げましたが、どういう事でしょうか?』


 カマを掛けて来てるだけの可能性もあるし、いきなり俺が向こうに行ってるとかの内容を含む返信は避けておいた。


 返信を打ち終わった所で、飛鳥の健康診断も終わったようで戻って来た。


「パパ、あのね……私視力がヤバい事になってるみたい」

「目が悪いのか?」


「えーとね……私、今まで左右共に0.8くらいだったんだよね」

「免許はギリギリラインだな」


「それが今測ったら左右共に4.0だって言われちゃったんだけど……」

「え? 4.0? どういう事だそれ聞いた事無いぞ」


「最初は機械を覗いたんだけどあんまりにもはっきり見えすぎて、即答してたら先生が興味持って視力表みたいなのと、お玉みたいなの持って表を見させられてさ、普通の位置で2.0が全然はっきり見えら、どんどん後ろに下がらされたの。壁の所まで下がっても全然普通に見えたから実際はもっといいんだろうけど……これって向こうの世界の影響なの?」

「あーどうだろう? マリアは視力がメチャ悪くって弓が使えないくらいだったのを俺が眼鏡持って行ってやっと使えるようになったからな。単純に向こうの世界に行ったからと言うよりは鳩になったからじゃないか?」


「そう言われてみれば、前に動物番組で鳩は四十キロメートル先まで見えて、一.五キロメートル先の人の顔を識別できるとか言ってたよ」

「良くそんなこと知ってるな」


「偶然、番組視ただけだよ」


 ちょっとびっくりな検査結果だけど、もし俺が体力測定なんか受けたら、結構ヤバい数字出るかもしれないな。

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