第61話 王都でのお披露目会
十九時からの宴会に合わせて王都の商業ギルドマスターの屋敷の中では、ギルド職員と大商人と言われる家の娘達をモデルに、マリアとサンチェスさんの女性従者が、リュミエルによる指導の下に化粧をされている。
別の部屋では、マリボさんとマーブルさんが下着姿で人前に出てくれることを了解してくれた女性達に下着を用意し付け方を教えている。
その上からはマントを羽織ってもらって待機する。
そしてもう一つのメイン商品であるシャンプーとリンスは、双子の女性を用意して貰って、片方にだけチュールちゃんがシャンプーとリンスを使って洗髪を行ってあげる。
「あの……痒いところはありませんか?」
とか尋ねながら、一生懸命頭を洗ってあげる姿が、めちゃくちゃ可愛いと思った。
「モデルの女性は十五歳くらいの超絶可愛い双子の女の子で、見事なプラチナブロンドのエルフさんだった」
彼女達の準備をしている間にサンチェスさんは、王都の大商人やギルドマスター、ファンダリアの辺境伯を相手にして鏡と腕時計の紹介をしていた。
招待された人たちは、商業ギルド長からの信用も厚い大商人ばかりではあるが、これ程の商品を目の前に出されて、心が
特に鏡に関しては、ご婦人方の熱い視線が注がれていた。
ファンダリア辺境伯も商品に満足し、早速翌日にファンダリア辺境伯主催でのパーティーを行う指示を慌ただしく出し始めた。
「サンチェス殿、国王に対してはどの様にご案内されるおつもりでしょうか?」
「これ程の品は王宮にも存在しないはずでございます。今後のこの商品の価値を高めるためにも明日の朝に謁見を申し入れて、今回持参した中での最高級の鏡と腕時計を献上品として辺境伯がお渡し下さい」
「その後パーティで今回持参した商品を、王都商業ギルドの主催でオークションにかければさぞかし盛り上がりますぞ。今回は王都の大商人の皆様方も振るってオークションに参加して頂き話題作りにご協力ください。落札して頂けた内容に応じて今後の入荷品に関して取引の元締めとなる契約もご用意いたしましょう」
サンチェスさんの言葉に、その場に招待されていた商人たちの目の色も変わった。
そして女性達の準備も出来、内覧会の第二段階に入ると一斉にご婦人方からの悲鳴のようにも聞こえる称賛の声が上がる。
化粧もさることながら、双子のモデルの髪質の変化の対比や、下着モデルの女性達が身に着けた、この世界には存在しない美しく機能的で、扇情的な下着の数々に盛り上がりは最高潮を迎える。
今日のモデルさん達にはそれぞれ使用した商品を協力代金として進呈したので、凄く喜ばれた。
明日のパーティでも引き続きモデルとしての参加をお願いして、内覧会は終わった。
「テネブル、今後の事を考えると楽しみじゃぞ」
「そうですね!」
当然「ニャァニャ」としか聞こえないけどね!
この席でマリアに通訳を頼んで、サンチェスさんに俺が日本でプリントアウトしてラミネート加工を施した写真を出して渡した。
「おお。なんと素晴らしい正に生き写しじゃ」
「その写真を見た他の商人や辺境伯からも称賛の声が上がる」
「マリアとやら、この絵は私の物も描いて貰ったりできるのか?」
「はい。お渡しするにはお時間は掛かりますが描くだけならすぐにでも出来ます」
「今日は私も嫁を皆連れて来ておる。私達一人ずつの物と、全員の物とを頼んでも良いか?」
マリアが俺に確認して来たからOKを伝えた。
辺境伯の後ろ盾があった方がカメラの存在などで他の貴族たちの横槍を防げると思っての判断だ。
「はい大丈夫です。それでは皆さんの絵をこの魔導具で切り取らせて頂きます」
そうマリアが返事をした時にリュミエルが提案した。
「折角だから撮影されるご婦人たちにお化粧をして差し上げてからにしたらどうかな?」
「それ喜んでもらえそうですね」
マリアが、その言葉を伝えるとご婦人方も大喜びで提案に乗って更に王都の大商人の奥方たちも希望されたので、全員のお化粧と写真撮影も行って、大盛況でお披露目会は終わった。
辺境伯はサービスで撮影したけど、それ以外の人は勿論有料だよ?
アルザス先生もこのカメラや、お化粧品にはびっくりしてた。
総司爺ちゃんの時代にはこんな便利なのはまだ無かったはずだしね。
アルザス先生は俺達と同じテーブルに着いてくれたので、チュールちゃんの潜在能力の話をして薬師として育てる為にはどうしたら良いかを相談した。
翌日の午前中に少し時間が有ったので、アルザス先生の知り合いの薬師の元を訪れてポーション作成の現場を見学させて貰えることになった。
◇◆◇◆
「アルザス殿、その猫は成人の儀を受ける前の子供であっても、潜在能力を見る力を持っていると言われるのですか?」
「ああ、そのようじゃ、ただしテネブルの飼い主がおらんと意思の疎通が出来ぬがな」
「それが事実だとすれば、薬師、錬金師の育成は画期的に楽になりますな。是非意思の疎通のできる飼い主と共に、私の所に来てほしい所です」
「それは中々難しいであろうな。その気があるのならわしの所に来させるぞ」
「そうでしょうねぇ……今日はその子にポーションの作成を見学させるという事で良かったですか」
「はい先生、よろしくお願いします。チュール一生懸命見てお勉強したいです」
「可愛いのう、しかし猫獣人の子に錬金や調合のスキルが現れるなど、聞いた事も無かったです。もしかしたら他の能力を覚えたが為に、元々覚えていた能力が失われるなどと言う事も有るのかも知れませんな」
「ふむ、その意見はもしかしたら本当にそうかもしれんな。わしも暫くの間は王都は弟子たちに任せて、このテネブルと行動を共にしようと思うぞ。長らく若返りは止めておったが、もっと長生きをして失われた古代魔法を身に着けたいと思うようになったしの」
「そうですか、アルザス先生がやる気になられた事を嬉しく思います。ご師匠の賢者オキタ様に並ぶ大賢者に成られる事を期待しております」
その会話を聞きながら、総司爺ちゃんって凄かったんだなあって少し感心しちゃったぜ。
この錬金術師『イルマール』様が俺達の前でポーションの錬成をしてくれる姿を一時間ほど見続けている間に『錬金』と『調合』更に『純化』と言う三つのスキルをラーニングする事に成功した。
これでチュールちゃんと一緒にポーション作りにチャレンジできるな!
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