第38話 スクロール

「マリアちょっといいかな?」

「はい。大丈夫ですよサンチェスさん」


「テネブルも一緒に来てもらって構わないかな?」

「いいぜ」って言ったけど当然そこに聞こえる音は「ニャン」だぜ。


 サンチェスさんの部屋に付いて行くと、今日救出した八名の女性達とサンチェスさんの女性従者二人が部屋に居た。


「マリア、テネブル今日はいきなり大事件に巻き込まれて済まんかったな」

「私達は護衛として雇われてますので、お仕事をしただけですから大丈夫です」


「ふむ、二人に来て貰ったのは今日アジトで手に入れたお宝の話と、今後この助け出した女性達の事で相談を聞いて貰おうと思ったんじゃ」

「私達でお力になれる事であれば」


「ほれマリアが言っておったじゃないか? 女性のお化粧を施す店の話を。そのお店で彼女達を使って貰えないかと思ってじゃな。今回の事でみんな身寄りを無くしてしまって、この街では住みにくいようだから、ファンダリアの街でお化粧を学んで、独り立ちが出来るようになれば、国内の他の街へと支店を広げて行くのなら、十分にやって行けると思うんじゃ」

「そうですね、でもファンダリアでは孤児院の子供達にお手伝いと勉強をさせようと思ってるので、お給料が八人分も出せるかは自信が無いです」


「それは心配せぬとも良い。商業ギルドが研修費として負担しよう。その替り他の街での化粧店では商業ギルドも一枚かませて貰えればそれで良い」

「はい。そう言う事であれば是非お願いしたいと思います」


「良かった。彼女たちはわしらが戻るまで、子爵家で預かってもらう。帰りに合流して一緒にファンダリアへと戻る事になる。それではアマンダ、女性達をそれぞれの部屋へ連れて行きゆっくりと寝て頂きなさい」

「畏まりました、旦那様」


 女性達が出て行き、サンチェスさんとマリアと俺だけになった。


「テネブル、今日の回収した物を出して貰えるか? マリアは通訳を頼むぞ」

「はい、解りました」


 俺は、盗賊の元から回収した宝物を、その場に全部出して行った。

「なんと、これ程の量が有ったのか。ざっと見ても十億ゴールドは在りそうじゃな」


 マリアも余りの宝物の量にびっくりしていた。


「鍵の付いた宝箱が四つか、テネブル、この鍵は無かったか?」

「あるそうですよ」


 俺は鍵束を取り出して、サンチェスさんに渡した。

 四つの宝箱を空けると、それぞれにスクロールが収まっていた。


「ほーこれは凄いな。火魔法と水魔法とレア属性の雷魔法と氷魔法のスクロールじゃ」

「どれくらいの価値があるんですか?」


「火魔法と水魔法は五千万ゴールド、雷と氷は二億ゴールドはするであろうな」

「凄いですね」


「どうじゃ? このスクロールはお主らが使わぬか?」

「え……いいんですか?」


「死んでしまった盗賊が使ってしまっておった事にすれば誰にも判らぬからの。その他の宝は全て子爵家に引き渡すのじゃから良かろうて」

「テネブルが、それでいいなら是非お願いしますって言ってます」


「うむ、他の者が話を聞きつける前にさっさと使ってしまいなさい」

「はい、それでは私が雷と水、テネブルが氷と火を使わさせて頂きます」


 その場でスクロールを開くと激しく光って体の中に吸い込まれて行き、それぞれの魔法を身に付ける事が出来た。


「くれぐれも身に付けた方法は内密にの」

「はい、ありがとうございます」


「明日の朝も早い。ゆっくりと眠るが良い」

「おやすみなさいサンチェスさん」


 俺も「おやすみなさい」って言ったけど当然「ニャニャァ」としか聞こえなかったぜ。


 部屋に戻ると俺も少し疲れてたのか、マリアの胸に顔をうずめてゆっくりと眠りについた。

 翌朝、俺は目を覚ますと目の前に立ちはだかるマリアの巨大な二つの膨らみに顔をこすりつけてみた。

 まだ起きない。


 そう言えば、この世界はブラジャーって無かったのかな? 今も俺の目の前のマリアは粗雑な布生地の日本で言うシュミーズの様な物を纏っているだけだった。

 パンツに関してはこちらも生地は粗雑だが、日本の感覚で言うと男性用のトランクスの様な物を履いている。

 これだと……いざって言う時に現代日本に生きている男性だと半数くらいが萎えちゃうんじゃないだろうか?


 そう言えば、昨日助け出した女性達はマリアのシュミーズをもう少し長くしたようなもの一枚だけで、下は付けていなかったような気がする。


 最底辺での待遇だから、みんながそうなのかは解らないが、香織が用意していると言っていた、女性下着は物凄い需要があるんじゃないだろうか?


 そんな事を思いながら、もう一度マリアの胸に頬を擦り付けて感触を楽しんだ。


「んん……あ、おはようテネブル」

「マリアおはよう」


「顔を洗って来るからちょっと待っててね。その後で一緒に食堂に行こうね」

「分かった」


 昨日スクロールで覚えた魔法は、現時点では二人共初期魔法だけを使える状態だったが攻撃魔法なので宿屋では練習も出来ないよな。


 それに対してラーニングで覚える技は、例えば土魔法であっても実際に見たストーンバレットの様に、その中の一つだけと言う違いがあるようだ。

 今後強い敵と戦っていけば、どんどんラーニング出来る技も増えて行くだろう。

 ステータスで表示される内容が、火魔法、氷魔法は表示されてるが、土魔法とは表示されていないので、ほぼ間違いないと思う。


 朝食を食べた後は早速女性達と宝物を子爵家へと運ぶためにこの街で新たに二台の馬車をチャーターして子爵家へと向かった。


「それでは子爵様、女性達は帰りに迎えに参りますのでそれまでよろしくお願いいたします」

「お任せくださいサンチェスさん。本当にこんな莫大な量の宝物をすべて置いて行かれてよろしいのですか?」


「子爵様の差配で被害者家族の元に、遺品が戻る様に出来ればそれに越したことは御座いませんので」

「解りました。民の為に役立てるとお約束しましょう」


 そして俺達は次の街へと向け旅立った。

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