第37話 香織のオンエア
私は転移門で無事にファンダリアの拠点になる家へと戻れた。
目の前にある青い扉を開けて中へ入ると、まっすぐ部屋の中央まで行き。この地下室に明かりが灯った。
目の前に総司お爺ちゃんが現れる。
「おや? 香織だけなのか、俊樹はどうした死んだか?」
「総司爺ちゃん。勝手に俊樹兄ちゃん殺さないでよね。私は明日仕事があるから戻って来たの。俊樹兄ちゃんは王都に向かってる途中だよ」
「なんじゃそうじゃったか。香織は何か欲しい物とか無かったか?」
「そうだね、私向こうで犬なんだよね。それでさ女の子なのにお尻が丸出しだから、それを隠せるようなものが欲しいんだけど、私の能力って身体の大きさが変えられるんだよね。だからこっちで普通の素材の物を買っても、大きくなったら破れちゃうでしょ?」
「ふむ、そうか。ミスリル製の防具でも作って置くかの、在庫は少ないが香織の防具程度なら足りるじゃろう。それじゃと魔力に反応して装備者の身体に常に適正化されたような物が作れるからの。デザインの希望とかあるかの?」
「防具のデザインなんか解んないけど、かっこかわいい系でお願い」
「任せて置け、わしはファッション雑誌はティーンズ系からミセス系まですべてネットで読破しておるからの」
「お爺ちゃん? ファッション雑誌読んで楽しいの?」
「うむ、今時の世界を知る為には大事な情報源じゃからの」
「へぇそうなんだ。じゃぁ頼んどくね明日のこの時間くらいに来るね」
◇◆◇◆
部屋へ戻ると今日の出来事を思い出す。
馬車に乗っての旅や強盗との戦い、奴隷として捕まった女性達の救助や貴族家への訪問。
たった一日でも盛沢山過ぎるよね……
でも異世界かぁ
楽しいな。
俊樹兄ちゃんが一緒だからなのかな?
明日のラジオ番組何喋ろうかな? 異世界ネタでもしてみたらどうなるだろ?
あ、そうだ。
俊樹兄ちゃんの小説利用しちゃおうかな?
事後承諾で構わないよね? きっと……
この小説をネタに書かれていない部分の細かい事とかを取り上げて、さらに膨らみを持たせるとか、読者からの質問とか 公式SNSに送ってもらって、それらしく答えるとかいいかもね?
後はイラストも多いから、そのイラストのシチュエーションとかの話題でもいいし、きっと誰もやった事の無いジャンルだよね?
今公開されてる一番新しい話は……
丁度私が登場した辺りだな。
因みに順位ってどうなってるのかな?
あ……凄い総合で一位になっちゃってるじゃん。
ポイントも凄い高いよ。
累計のブクマも一万二千件とかなっちゃってるね。
これって普通に出版の問い合わせとか来るレベルじゃないかな?
ちょっと反響を考えたらワクワクして来ちゃったな。
◇◆◇◆
翌日、朝の十時からのオンエアに合わせて朝の七時からラジオ局入りした私は、局のプロデューサーの人に、無料投稿サイトの小説にスポットを当てた企画でやってみたいという話をした。
「えーと、著作権の問題とかは発生しないと言い切れるのかい?」
「そうですね、今日試しにやってみる作品に関しては、著者が個人的にも知り合いなので問題無いと言い切れます。話題的にも大手投稿サイトで今日時点で首位の作品ですから、リスナーの反応もあると思います」
「そうか香織ちゃんがそう言い切るならやってみて構わないよ」
「ありがとうございます」
そしてオンエアが始まり、リクエストを求める楽曲に関してもテーマはファンタジーって言う事で呼びかけたよ。
ほとんど『ロストワールド』的なグループ名の楽曲に集中しちゃったけど、それだけそのグループはファンタジーのイメージが強いのかな?
「みなさん、最近は紙媒体の本が売れなくなったっていう話題を、よく耳にしますよね? そんな中でも元気なジャンルも存在するっていう事は知っていますか? そう。ネット小説の投稿サイトから刊行されている
そんな流れで始まった私の番組は過去最高のメッセージも貰い、北九州市と言う狭い範囲でのオンエアにも拘らず随分と盛り上がってくれた。
リスナーからのメッセージを一部抜粋するとこんな感じだったよ!
「香織姐さん、いつも楽しみに聞いております。初めてお便りしますが話題が投稿小説なら筆を取らずにいられませんでした。今日香織姐さんが紹介してた小説『黒猫テネブルの異世界日記、今日もフワフワおっぱいに挟まれて』今人気ですよね!
異世界での世界観の描写とそれにマッチした綺麗なイラストが好きで俺も楽しみにしている作品です。なんか他の作品とテイストが違うって言うか、黒猫な主人公が一人称視点が風景描写にも及んで、最新話で登場した白いパグも俺的にツボでした。もし今後紙媒体で発売されるなら、ぜひ手に入れたい作品NO1です。 八幡東区在住 ススム」
「カオリンがネット小説ネタって結構意外な組み合わせでしたが、オンエアを聞いていて、私も読んでみたくなりました。読んだらまた改めてSNSに感想書きたいと思います 小倉南区在住 優子」
「カオリンこの小説のタイトルって……私的にネットで読むならまだ大丈夫だけど、もし発売されて買いたいと思っても、本を持ってレジに並ぶ勇気が私には足りません、どうしたらよいでしょうか? 戸畑区在住 ひとみ」
勿論ちゃんとオンエア中に返事は返したよ。
「ひとみさん。メッセージありがとう。確かに女子には勇気のいるタイトルですよね! でも大丈夫、今の時代はナマゾンとかで送って貰えますから、それに今時のラノベは発売系列ごとに特典が違ったりしている作品もあって、コアなファンの方だとコンプリートを目指す方なんかもいるそうですよ」
番組終了後にアフターミーティングでプロデューサーからも、かなりの好感触を伝えて貰えた。
これは、バズったかな?
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