霧の道


僕達は瑠奈が持ってきたお父さんの釣竿を持って川に向かい、釣れなきゃご飯抜きのプレッシャーを抱えながら釣りに挑んだ。


「魚は見えてるのに釣れないな」

「林太郎は諦めが早いんだよ」

「チビ瑠奈、塩ぐらい持ってきたよね?」

「当たり前じゃん!」

「待って!引いてるかも!」


僕の釣竿にブルルッという振動があり、慎重に糸を巻いた。


「蓮!頑張って!」

「はい!絶対魚です!」

「ファイトファイト!ほら、林太郎も応援してよ!」

「ファイトー」

「キター‼︎」

「すごーい‼︎」


普通に食べられるサイズの魚を釣り上げたが、騒いでしまったせいか、そのあと一匹も釣れることはなかった。

バケツに一匹だけ魚を入れてテントに戻り、バケツを囲むようにして座った。


「チビ瑠奈、どうすんの?」

「もっと簡単に釣れると思ったんだもん」

「いっそ逃がしちゃいます?」

「蓮に賛成だな。一匹だけ焼いて回し食いしても、余計に腹減るだろうし」

「んじゃ、僕が逃がしてくるよ」

「私も行く」


乃愛先輩と2人で川に戻って魚を流した後、川を眺めながら話をした。


「瑠奈に悪気はないので許してあげてください」

「分かってる。チビ瑠奈落ち込んでたし、お菓子でも買おう」

「売ってるんですか?」

「テント借りた場所で、種類は少ないけど売ってた」

「いいですね!1日ぐらいお菓子でお腹満たしても問題ないですよ!」

「おい」


急に話しかけてきたのは、釣りをしていた、金髪でピアスがじゃらじゃら付いた、イカツめのお兄さんだった。


「は、はい......」

「キャンプに来て飯ないのか」

「はい、ちょっとしたミスで......」

「俺のテントに来い」


不審に思いながらも、乃愛先輩と一緒にお兄さんに着いていくと、そこではイカツめのお兄さんお姉さん達がキャンプをしていた。


「乃愛先輩、なんかやばくないですか?」

「なんかあれば私が守る」

「なんだその学生」

「飯がないんだってよ」

「マジかよ、今日来たのか?」

「はい」

「2人で?」

「4人で来ました」

「肉余ってただろ」

「あー、どんくらい余ってたっけ」


露出多目のお姉さんがクーラーボックスを開けて、中を確認した。


「3パックある」

「俺達は今から帰るだけだから、余った肉持ってけよ」

「いいんですか⁉︎」

「ありがとうございます!」

「タレとか皿はあるのか?」

「私が持ってきました!」

「そうか、次からは飯忘れんなよ」

「はい!」


まさかの展開でお肉とソーセージを貰い、瑠奈と林太郎くんの笑顔を思い浮かべながらテントに向かった。


「いい人達でしたね!」

「うん!やっぱり人は見た目じゃないよねー!」

「はい!お昼は軽くにすれば、夜も食べられるんじゃないですか?」

「そうしよう!」


そしてテントを開けると、今にも泣きそうな瑠奈を林太郎くんが励ましていた。


「どうしたの?」

「瑠奈も責任感じてるんだってよ」

「大丈夫だよ瑠奈」

「大丈夫じゃない。みんなで楽しみたかったのに......」

「大丈夫だって、これ見てよ」

「それどうしたんだ⁉︎」

「貰った!」

「瑠奈も見てみろ!」

「ん?......肉〜‼︎」

「乃愛先輩がバーベキューセットの準備してるから、みんなで食べよ!」

「うん!」


それからみんなに笑顔が戻り、4人で1パックだけは少し物足りなかったけど、お兄さん達のおかげで楽しくお昼を過ごすことができた。


「チビ瑠奈、お菓子買いに行こ!」

「行く行く!」


2人はお菓子を買いに行き、僕と林太郎くんはジュースを飲みながら自然を眺めて休憩することにした。


「なんとか楽しいキャンプになりそうだね」

「そうだな」

「林太郎くんは瑠奈に告白したりしないの?」

「なんだよいきなり」

「ごめん、気になってさ」

「いつかはって考えてるけど、今じゃないな」

「どうして?」

「今告白しても無駄だって分かるからだよ」

「なんで瑠奈が好きなの?」

「そうだなー、最初は可愛い子がいるなーとしか思ってなかったんだけど、蓮に真っ直ぐで、頑張り屋なとこに惚れた」

「違う男を好きな女の子を好きになるって珍しいね」

「そうか?好きな人に好きな人がいるって知らないだけで、同じような恋してる人はいっぱいいるだろ」

「そうかなー」

「蓮は乃愛先輩と、どこまでいったんだ?」

「え⁉︎キ、キス止まり」

「ディープ?」

「変なこと聞かないでよ。てか、今日もネックレスしてるけど、林太郎くんてきに嫌じゃないの?」

「そういうとこも可愛いじゃん」

「そんなに心が広いのに、なんで今まで彼女いなかったんだか」

「瑠奈一筋だからかな」

「ふー!カッコいいー!」

「諦めが悪いだけだけどな」


それから2人が買ってきたお菓子を食べながら話をしたり、乃愛先輩が持ってきたバドミントンで遊んだりして夜を迎えた。


「よーし、夜は昼よりも豪快にいこう!」

「おー!」


昼間に残しておいた肉とソーセージを食べ尽くし、後片付けをしている時、林太郎くんが自分のリュックから花火を取り出した。


「みんなでやらない?」

「花火⁉︎夏前でよく売ってたね!」

「通販で買った」

「やろやろ!」

「私一番乗り〜!」

「瑠奈だけずるい!」

「僕もやる!」

「いっぱい入ってるから落ち着け」


4人で花火をしていると、キャンプに来ていた家族の子供達も寄ってきて、みんなで花火を楽しんだ。


「いやー、いいキャンプになりましたね!」

「帰るまでがキャンプだからね!」

「はい!」


まだ夜9時だが、瑠奈ははしゃぎすぎたのか、目を擦って眠そうにしている。


「もう寝る〜」

「私達も寝ようか」

「そうですね」

「んで、寝袋って」

「......借りるの忘れた〜!」

「今から借りに行きましょう」

「あそこ8時に閉まるの!」

「私このままで平気〜」


瑠奈は気にせずにテントの1番奥で寝てしまった。


「今日一日だけですし、僕達も寝ますか」

「そうだね」


奥から瑠奈、林太郎くん、僕、乃愛先輩の並びで寝ることなり、林太郎くんも疲れていたのかすぐに寝てしまった。


「ねぇねぇ、蓮」


乃愛先輩が僕の方に寝返りを打ち、小声で話しかけてきた。


「なんですか?」

「チューは?」

「え」

「たまには蓮からしてほしい」

「それじゃ......」


ドキドキしながら乃愛先輩にキスをすると、乃愛先輩の体温が上がり、次は乃愛先輩からキスをしてきた。


「好き」

「僕も好きです」

「今度は2人でお泊りしよ?」

「いいですよ」

「いひひ♡」


控えめに小さな声で笑う乃愛先輩はとても可愛く、ずっと見ていたくなった。


「それじゃ私達も寝よっか」

「はい」


全員が眠りについてしばらく経つと、急な大雨で瑠奈が体を起こした。


「トイレ......」

「ぐっ!」


瑠奈は寝ぼけながらテントの中を歩き、僕のお腹を踏んで立ち止まった。


「ん?蓮?蓮がいる〜」

「えっ......」


瑠奈は寝ぼけたまま僕と乃愛先輩の間に横になり、乃愛先輩に抱きついた。

すると乃愛先輩も寝ぼけて瑠奈に抱きつき返し、瑠奈にキスをし始めた。


「んっ、蓮?ダメだよ」


瑠奈が喋っても乃愛先輩は気づかず、瑠奈も寝ぼけてダメとか言いながらキスをした。


「んっ」

「んっん」


テントから女の子のダメな声が......いや、雨で聞こえないか?いやでも、これはやばい!起こす?いや、現実を知ったら2人はきっと殴り合う!


僕はこっそり写真を撮った後、瑠奈が寝ていた位置に横になり耳を塞いだ。


「んっ♡ダメ♡」


乃愛先輩⁉︎なにされてるの⁉︎


「蓮〜、そこまでしちゃうの?浮気だ〜。ん〜♡」


事件だ‼︎これは事件だろ‼︎あれ?静かになった......


恐る恐る2人を見てみると、2人ともお腹を出して寝ていた。


よかった......寝よ。


翌朝、瑠奈は1番先に起き、自分が乃愛の横で寝ていたことを不思議に思いながらも外に出た。


「雨降ったのかな?地面がぐちゃぐちゃだ〜」


そして瑠奈は、釣竿とバケツを持って一人で歩き出した。


「霧凄いなー、でも、みんなに迷惑かけちゃったから、みんなの朝ごはん釣るぞ!」


瑠奈は霧のせいで道に迷いながらも、川の音がする方向に向かって歩いた。


「あれ?どこから降りるんだっけ......うわっ!」


川に降りる場所を探している時、雨でぬかるんだ地面で足を滑らせてしまった。


その頃、乃愛の携帯に結愛からメッセージが届いていた。

(雨の影響で土砂崩れ注意報出てるよ。キャンプしてる山は大丈夫?)

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