嵐の前触れ
「涼風くん!上手くいったね!」
「はい!乃愛先輩がちょっと可哀想でしたけど」
僕達は、みんなから離れた場所で合流し、一度カフェに入った。
「睦美先輩って、大学とか行くんですか?」
「すぐ就職かな。あの学校で生徒会に居たって事実があると、かなりいい場所で働けるらしいよ」
「え⁉︎本当ですか⁉︎」
「将来お金持ち間違いなし!」
「僕、生徒会に入ってよかったです!」
「涼風くんは何で生徒会に?」
「入学式の時に衝撃を受けて、このままじゃ僕の高校生活が最悪なものになると思ったからです」
「それで、なにか変わった?」
「変わったというより、慣れたの方が正しいかもしれませんね」
「そっか!でさ、今って......」
「何ですか?」
「好きな人とかいる?」
「居ませんね。今は誰とも付き合う気ないんですよ」
「......そうなんだ」
「睦美先輩?なんか元気ないですね」
「全然!平気だよ!」
「そうですか。この後どこ行きます?」
「んー、ちょっと歩こ?」
「分かりました」
僕達はアイスココアを飲み干し、街をブラブラと歩き始めた。
「涼風くん」
「はい」
「今は彼女いらないって言ってたけど、どうして?」
「正直、恋愛するのが怖くなったんです」
「怖くなった?」
「失恋って怖いじゃないですか」
「......私なら涼風くんを傷つけないよ」
睦美先輩が僕のことを好きなことは知っていた。それを分かってて、振ることを前提にデートするなんて......僕は本当に最低だ。
「ごめんなさい」
「そんな言葉が欲しんじゃない。失恋が怖いって理由で見向きもされないのは悲しいよ......私は傷つけない」
「そんなの分からないですよ」
「分かるよ」
睦美先輩は、とても優しい表情で僕を見つめた。
「だから、よかったら私と......」
「......なんで僕のことが好きなんですか?」
「最初あんなことしちゃったけど、気づいたら意識するようになってて」
振っても睦美先輩を傷つける。付き合ったら......梨央奈先輩はどう思うのかな。瑠奈は......
「考える時間貰えますか?」
「う、うん!正直、すぐ振られると思ってたから嬉しい!」
「一人で考えたいので、今日は帰っていいですか?」
「も、もう帰るの?」
「ごめんなさい......」
「いいのいいの!それじゃ返事待ってるからね!」
「はい。それじゃまた」
「うん!」
睦美は蓮が帰って行くのを見送り、少しの期待で気持ちが落ち着かなくなっていた。
睦美は真っ直ぐ家には帰らず、一人で近くの公園に立ち寄り、ブランコに座った。
(涼風くんと付き合えたら水族館デートとかしてー、いつかお家デートでいい雰囲気になってー......)
「ダメダメ。変なこと考えない!」
「変なことってなに」
「瑠奈ちゃん⁉︎」
瑠奈は睦美の真後ろに立っていた。
「こんなところで何してるの?」
「蓮とアンタが怪しかったから尾行してたの」
「んじゃ......聞いてた?」
「全部聞いてた。次は蓮になにする気?」
「なにもしないよ」
「だったら蓮に近づかないで」
「なんで瑠奈ちゃんに言われなきゃいけないの?」
「迷惑なの。蓮を汚さないでくれる?」
「瑠奈ちゃんは自分勝手だよ」
「それでもいいよ。それにさ、誰も傷つけないやり方とかやっぱり無理。殺さなきゃいいよね」
「なにする気?」
「ちょっとアンタを脅すだけだよ」
瑠奈がポケットに手を入れた時、赤髪の転校生に声をかけられた。
「お二人さん」
「あ、私に宝箱取られた人じゃん」
「嫌なこと思い出させんなよ」
「なんか用?」
「なんか楽しそうなこと話してるなーって」
「別に楽しくないから」
「睦美先輩は元生徒会。アンタは元生徒会と親しい仲。ちょっといろいろ教えてよ」
「教えることなんてなにもないよ」
「知りたくない?涼風蓮の秘密」
「アンタ、蓮のなんなの」
「最近分かったことなんだけどー、ここから先は私の要求を飲んだら教えてあげる」
「いいよ。なにを教えればいい?」
「瑠奈ちゃん!ダメだって!」
「生徒会なんかより、蓮の秘密が大事」
「じゃあ教えて、雫はどうやって学校での絶対的権力を手に入れたの?あ、ちなみに、沢山教えてくれた方にだけ秘密を教えるからね」
すると睦美は、瑠奈より早く答えた。
「罰だよ!」
「睦美先輩!ダメだって言ってたじゃん!」
「わ、私だって秘密知りたいもん!」
「罰?」
「そう、悪いことした生徒にキツイ罰を与えて言うことを聞かせるの」
「それだけ?」
「わ、私も知ってる!」
「瑠奈だっけ?教えてくれるかな?」
「うん!成績の悪い生徒と良い生徒で、学校生活においての特権が違う!」
「恐怖と褒美ね。ちなみに、二人は蓮が好きで揉めてたんだよね」
「ま、まぁ」
「他に蓮を好きな人は?」
睦美が答えた。
「会長以外の元生徒会メンバー」
「んじゃ、元生徒会メンバーの誰かの番号教えて」
「梨央奈のなら!」
「あー、あの人はダメ」
「んじゃ、千華でいいか」
瑠奈は千華の番号を教えた。
「二人の番号も教えてよ」
二人も素直に連絡先を教えると、赤髪の転校生はニコっと笑った。
「二人とも、これからもいろいろ教えてくれる?」
「蓮の秘密は?」
「そうだよ。涼風くんの秘密教えてよ」
「後で電話で教えるよ。二人が私に協力してくれるなら」
そう言って赤髪の転校生はその場を後にした。
「とにかく、蓮に近づかないで。じゃあね」
瑠奈は結局なにもせずに帰宅し、その日の夜、赤髪の転校生から電話がかかってきた。
「もしもし」
「秘密教えてあげる」
「なに?」
「蓮が好きなのは瑠奈」
「は⁉︎え⁉︎」
「蓮が友達と話してるの聞いたの」
「本当?」
「うん。二人が付き合えるように協力してあげるから、勝手な行動はしないで、私に協力してくれる?」
「す、する!なんでもする!」
「このことは誰にも言わないこと」
「言わない!」
「それじゃまた連絡するね」
「うん!」
電話を切り、赤髪の転校生はクスクスと笑った。
「本当、恋する女は扱いやすい」
その後、睦美にも電話をかけ、蓮が好きなのは睦美と伝え、赤髪の転校生は密かに計画を進めていった。
そして最後に千華に電話をかけた。
「もしもし、誰?」
「最近転校してきた赤髪の」
「あー、なに?」
「千華が蓮を好きかは分からないけど、蓮がね、千華を好きみたいなの」
「......ん?」
「だから、私が二人を付き合わせてあげようかなって」
「マジ?」
「マージ。だからね、私とお友達になろうよ」
「なる!」
「詳しい話はまた後日。今話したことは誰にも言わないこと。いい?」
「分かった」
「それじゃまたね」
「うん!」
そして睦美が寝ようと布団に入った時、雫からの着信で飛び起きた。
「もしもし!」
「私の言った通りだったでしょ?」
「うん。本当に近づいてきた」
「そのまま相手に話を合わせてもらえるかしら」
「任せて。私は会長を裏切らないから」
「頼んだわね」
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