王様ゲーム その一

「では王様ゲームを始めます。司会は私、八島が務めさせていただきます。それでは皆さん、盛り上がって参りましょう」


 ぱらぱらと拍手が鳴る。

 って、いやいやちょっと待て。


「なんでこうなった」


「なんでって、東野君の緊張をほぐすための親睦会だろう」


「いきなりだな……」


 というか、何故八島さんは七三分けで黒スーツなのか。スパンコールの蝶ネクタイまでして、司会者が本格的過ぎる。


「では、一ターン目」


 王様は金ケ崎だ。


「ふむ、そうだな。じゃあ、一番と二番が3分クッキング。それをみんなでいただこう」


「げ、マジか」


 ジョーと永田が当ったらしい。

 ちなみに生物準備室には生物部専用冷蔵庫があり、動物の餌だけでなく各自持ち寄ったものがいろいろ入っている。曲がりなりにも理科室なので、ガスバーナーもある。


「野郎二人で料理とか、誰得だよ」


「王様の命令は絶対です。それではスタート」


 ジョーが取ってきたのはキャベツ(コオロギの餌)とコンソメ(ぶちょーのものと思われる)。鍋に火をかけて湯を沸かし、コンソメを入れる。そしてキャベツを手でちぎって入れていく、THE男飯。


「僕、何すればいい……?」


「だ、大丈夫だ。なんか、一人でできそうだし」


「ん、分かった……」


 うめえ棒の一件で、永田の味覚の異常さは証明済みだ。料理に触らせるわけにはいかない。

 やがて、いい匂いがしてくる。


「よし、完成だ」


 無事普通のコンソメスープが出来上がった。


「みんな、皿取ってこようか」


 佐久間先輩の呼びかけにより、みんなぞろぞろと準備室に向かう。

 と、その時ーー


「ちょっと辛そう……」


 そう呟く永田の声を聞いて私は勢いよく振り返った ーーしかし時すでに遅し。

 私は嫌な予感がして訊いた。


「な、ナガタクン、何を入れたの……?」


「ん、ヨーグルト。まろやかにしようと思って……」


「ジーザス」


 その後、生物室が壊滅寸前の駐屯地のようになったのは言うまでもない。ただ二人、永田と寺峰を除いてーー


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