第46話 ジャスト・ビフォー・エンカウント

2人が駆け落ちしたとの噂から数日後・・・・・



「ほんっとに何も無い村ね」

「ああ、そうだなー」

「先代はこの村出身らしいけど、廃村寸前じゃないの」

「……それは違うだろ」


「あら、どの辺が?」

「別に……農業が重点的で、自給自足の村ってだけだろ?」

「門だけが立派にきつ立してたからどんな所なのって気後れしたけど、よっぽどだと思ってたアタシたちの故郷よりも後進的な所じゃない? それとも思い出補正ってヤツかしら。でもほら、ここ、家屋が全部木造だし」

「興味ないがなー」


「まあ、アンタとしては、先代の手がかりがあればそれで満足でしょうけど」

「そりゃーちょっとはテンションが上がるけど、過度に期待してもしゃーないし」

「へえ~」

「こいつが俺の手元にあるんだから、そういうことだと思うけどさ……1度くらいはやり合ってみたいぞ」

「あーはいはいどうせアタシじゃ力不足ですよー。無差別に殺り合うならもっと善戦できるんだけどなー」

「それはナシって言ったろ? うっかり殺しちまうかも」

「ちぇー残念。……あっ、それじゃ、今度アヤノに稽古つけてもらうとかは?」

「それ、俺の勝利条件は?」

「んー、アヤノの無力化?」

「それってどう判定すんだよ……剣付きつければ勝ちでいいのか?」

「それでもいいかもだけど、悩ましいわね……いっそ、トラップハウスでも作ってもらえばいいじゃないの。脱出出来たら勝ちとか」


「負けたら?」

「死にます」

「だよな。まあ死なんが」

「そうね。今それがあんたの手元にあるってことは、実質最強人間て事だものね」

「扱えてるかは知らんがな。それに……」

「それに?」

「人は斬りたくない」

「……あはははははっ、まだそんなこと言ってるの? 懲りないわねぇ。ね、アヤノもそう思わない?」

「…………ぇ、ごめんなさい。聞いてなかった」

「アヤノ、無理しなくていいんだぞ。村の外にいてくれても構わんが」

「あら、珍しく心配してる」

「あん? 何、俺を悪鬼羅刹とか奇々怪々なモンスターだとか思ってんのか?」

「ちっとも理解できないわ。難しい事言わないでくれる?」

「まあどうでもいいが。んで、アヤノ、調子は?」

「ん、平気。上手く調節する。それに……」

「それに、何だって言うのよ? アヤノ?」

「……ハルにおんぶしてもらうの、心地いい。調子は良くないけど、嬉しい」

「すうぅぅぅぅぅ、はあああぁぁぁぁぁ。はいはい分かりました。村にいる間はアヤノの世話を焼きますから」

「うん、ありがとう。それじゃあ、私は眠るね。おやすみぃ……」

「えっ、アヤノ!? ねえ! ……うぅ、背負ってて重たくはないけどさ……ここに置いていこうかしら」

「あ? 知るかよ勝手にしろよ。ただ、万一の事があったって知らないぞ」

「万一が起きたらどうなるっていうのよ?」

「死にます」

「でしょうねー。この周辺に危険は無さそうだし、村の外で待ってていいのに。一緒に来たがるんだから……。それで、ここまでで首尾良く何か見つけたりはしたの?」

「いんや。お前も見たろ? 自然と宿しか見てない」

「あと関所ね」

「そうだったな。ただ……」

「ただ、何よ?」

「ここの宿はしっかりしている」

「そらそうでしょうよ!? 溜める必要性無いところで意味ありげにためらうんじゃないわよ」

「ま、些末なことか」

「不毛とも言うわね、ふふん」

「……うぅー、ふたりともうるさ、ぇ?」

「ああっ!?」

「え? 何々揃ってどうしたのよ?」

「こいつは、面白い気配がしてきたぜ。ハル! わりいけど先に行くからな」

「はあ? ちょ、ちょっと待ってよジュンヤ! もう、いきなりどうしちゃったわけ?」


「ハル、ジュンヤを追って」

「追いかけるわよ。でもその前に事情を言いなさい!」

「……ハル、怒ってる?」

「怒ってはいないわよ。どうせ魔力を感知したんでしょ?」

「……そう。びっくりする位の大きさ。多分、私たちやピースメーカーぐらい」

「あーそうなの、そういう事なの。ただの簡素な農村じゃないって事ね」

「ハル、はやく、はやくっ」

「服を引っ張るんじゃないの、首元が伸びるじゃない。それと噛むのも禁止よ。ツメも立てないこと。大人しくしていないと背負ってあげないからね」

「……ハル、注文多すぎる」

「面倒見てあげてるのはアタシなんだけどね……いきましょうか」

「うん。楽しみ」

「楽しみねぇ。さて……鬼が出るか、蛇が出るか、ね」

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