side story 袂を分かつ二人-2
「ファイアッ」
「……ッ! 凄い。アル、いつの間に火の魔法も出来るようになったの?」
「練習したんだ。ちょこっとだけど、火を灯して浮かべるくらいには出来るようになったんだ」
「……そうね、昔はからっきしだったもんね。」
「不得手なところは、やっぱり中々上達しないよ。……さあほら、そこでじっとしてないで、もっとこっちにおいでよ」
「う、うん……」
「そんなに怖がることはないよ。こいつは僕の命令には絶対に従うから」
「ええ……わかったわ」
「昼間に3頭殺されちゃったけど、こいつだけは出てこないよう命じたんだ。お気に入りだったからさ」
「そうなんだ。でも、どうしてアルが……?」
「ちょっと前に貰ったんだ。ほら、この前森に入った時に」
「え、アル、森に入ったの? あれほど危ないからやめておけってトモキが……」
「あいつの名前を口に出すな!」
「ご、ごめんなさい。つい……」
「ったく。はいどうどう落ち着いてねーよしよし」
「……ねえ、私も、撫でてみても、いい?」
「ん? ああ、いいよ。ふさふさで気持ちいいよ」
「ありがとう。……ほんとね、ふかふか」
「でしょ?」
「うん。まさか、こうやってモンスターに触れる日が来るなんて思ってなかった。とても動物みたい。名前とかあるの?」
「特に決めてないよ。ユミは何か思いついたりしない? 名前」
「んー、昔に本で読んだ、犬って動物に似てるから、ポチとかじゃダメかな?」
「それだと全然強そうじゃないから、却下で」
「えー……んーやっぱり中々思いつかないわ。飼い主なんだし、アルが決めればいいんじゃないの」
「僕もイマイチこれだってのが無くて。まあ、そのうち決めようかな」
「そうね……ふふっ、柔らかくて、温かい毛並み」
「しかも、こいつは西方にしか生息しないから、東の方だと珍しいんだって。更に、すごい強い!」
「そうなの!? ぁでも、昼間の間に死んじゃってたよね」
「そうなんだよ。何だよあのおっさん。斧でザシュっと串刺しにしてさ。もうちょっとで殺せそうだったのに……あの謎のおっさんとキョウヘイのおっさんのせいで台無しだよ」
「あのー、ケンジ、さん? 凄い魔力だったね。一体どんな人なの?」
「分からない。お昼前に初めて会った時は何も感じなかったけど、ヒデヲのおっさんを助けに来たときは別人かと思ったよ。僕でも判るほどの魔力だった」
「記憶が無いって言ってたよね。本当なのかな?」
「さあ? でも、村の外に倒れてたのをたまたま助けられたのと、今日も、ギリギリでキョウヘイのおっさんが魔法であの子を吹き飛ばした時といい、運良く命拾いしてるよ」
「そっか、そうなんだ。………………ねぇ、本当に、あの、殺す、の? 村から出ていくの?」
「ああ、そのつもりだよ。僕は、あのおっさんを殺して、この村から出ていく」
「それは……何でなの? トモキを探すの?」
「そんなに僕の事を怒らせたいの? ふんっ、あんな奴のことは知らない。関係ない。どうせ無謀が祟って死んださ」
「じゃあ、なんでヒデヲさんを殺そうとするの?」
「んー……僕より強いから、かな」
「嘘よ」
「そんな筈ない。嘘なもんか」
「アルよりもヒデヲさんよりも、キョウヘイさんの方が魔法が達者だわ」
「キョウヘイのおっさんなんてすぐ殺せるさ。僕のほうが絶対に強いね。今はこいつもいるし。それより、ヒデヲのおっさんだ」
「どうして? アルのお父さんより、あの人の方が村の中心だから? もの凄い元気だから?」
「そんなのは関係ない。あいつに勝てないと……僕が勝ったことにならないからだ」
「勝ったことにならないってどういう意味?」
「言葉通りの意味だよ」
「全く答えになってないわ。……やっぱり、今でもトモキに対抗してるのよ、それ」
「それは……。もしそうだったら何だっていうんだ!」
「何って、何かあるわけでもないけど。でも、私は反対。ヒデヲさんを殺そうとするのも、アルが村から出ていこうとするのも」
「どうしてだよユミ!?」
「そんなことしても何の意味もないわ。それに私がアルに居なくなってほしくない」
「でもここじゃ、僕の強さは証明しきれないんだ。世界を渡り歩いて知らしめてやる。僕だって強いんだって」
「それが劣等感だってわかってないの?」
「そんなの知らないしだとしてもだよ!ローン村は、僕にも窮屈すぎるんだ」
「ダメよ。私を信じて! 皆を信じてよ!」
「信じられるか! 皆トモキを見て、僕のことはどうだっていいんだ。その辺の石ころ程度だ。許せるか! 納得できるか!?」
「それでもなの……トモキは軽い気持ちで旅立って、そして帰ってこなくなった! あのトモキがよ!?」
「ねえユミ。そんなに僕を怒らせたいの?」
「何でそうなるのよ!?」
「さっきからトモキトモキって、もうあいつは死んだんだよ! いないんだよ!」
「そうなのかも知れない。でも私は、アルにも同じ道を辿って欲しくないの」
「何、僕も同じ末路になるっていうの?」
「そうに決まってるじゃない! だから、ね? お願い。バカな真似はよして」
「真似なんかじゃない!僕はそうしたいと願って僕が決断して出来ると確信してる」
「そうなの? ほんとに?」
「あぁ、僕は本気だよ」
「そう。じゃあ…………このナイフで、私の事、刺せる?」
「……えっ?」
「まず、私を殺してみなさい」
「どうして? どうしてさ!?」
「ほら、明らかに狼狽えてるわ。やっぱり全然、覚悟出来てないのね」
「それは、それとこれとは話が違うわけで」
「いいえ、何も違わない。どちらも同じ、人を殺すって事」
「詭弁だよ」
「そのくらいの覚悟がないとダメ。ほら、出来ないの?」
「僕はユミのことが大切だよ。出来るわけないよ」
「そんなの知ってる。解ってる。ありがとう。でも、それでも示してみせて。さあ」
「僕は……、僕は……」
「…………そう。なら、手助けしてあげるわ。これが、私の覚悟。まずは、腕から。……ああっ!?」
「ッ!? ユミ、何を!?」
「次は、足、ね。太もも辺りで。……んんんんんんっ、いたっ、痛いっ」
「待って! 止めてよユミ!」
「待た、ないよ……次は、お腹で、いっか……んはっ、えほっげほっ」
「止まってよ、本当に死んじゃう。ユミが死んじゃうよ!」
「あはは……っとと。ちょっと、くらっとしちゃった。…次はのどで、いいかな?」
「待ってユミ!」
「かっはっぐぅっ」
「ユミ無事!?」
「はぁ……はぁ……ひゅぅ……ぁはっ、飛びついて、くるから、狙いが逸れた、わ。……あぁ、最後は、アルが、やって頂戴。胸を、思いっきり、ね?」
「なんでさどうして!? どうしてこんな……」
「泣いてる、の? ふふっ……だいじょうぶ。アルは、できる、よ。つよいん、でしょ……? わたしを、ころし、て……進ん、で。ほら、てを、かして。さあ」
「ユミ、ユミイイイィィィィ」
「うっ、ぇはっ、あ゛っ。…………アル、がん、ばって、ね」
「………………………………ユミ。ねえ、ユミ、起きてよ。ユミ。ユミィ。」
……ああ、そっか、これが、人を殺すって事。
「これが、これが……はは、あはは、あははははははっ!」
そっか、そうなのか!
あぁ、ユミ、ありがとう。
ありがとうユミ。
好きだったよ、ユミ。
「……あはははは!殺してやる!」
「皆みんな殺してやる!殺してやるうぅぅぅぅぅぅぅぅ」
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